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「ぽっぺのひとりごと」(11)4年ぶりの再会 門司港レトロ散策

北九州市の、福岡県の、そして九州の最北の駅。
鹿児島の友人との4年ぶりの再会の場所は、JR門司港駅だった。
私は何度か訪れたことがあるけれど、Tは初めてだった。
「レトロな建物をいっぱい見たい!」と、はしゃいでいた。
Tは本業の薬剤師の他に占い師の顔を持ち、習い事は朗読と「英語で落語」という個性的な人。読書と旅行が大好き。

湖月堂の松花堂弁当
鹿児島本線の終点

門司港駅は1914(大正3)年に開業し、1988(昭和63)年には、国の重要文化財に指定された。これは駅舎としては初めての事だ。
2019(平成31)年には大改修を終え、109年前と変わらぬ姿に復元された。美しいネオルネッサンス様式の建物は見飽きることがなく、じっと佇んで眺めていたくなる。

駅の一角には「帰り水」が遺されている。中国からの引揚者や復員兵が喉を潤し安堵したと言われている。

帰り水

駅の前には「和布刈り神事」の像。松本清張(小倉出身)の小説にも描かれている和布刈神社の神事。陰暦の大晦日から元旦にかけて、3人の神官が真冬の海に入り、ワカメを刈り取り神前に供える行事だ。

めかり神事

次に向かったのは「三井俱楽部」。1921(大正10)年に、三井物産の社交クラブとして造られた。ハーフティンバー様式で、木造の骨組みがアクセントになった西洋館。


2階には「アインシュタイン・メモリアル・ルーム」。1922(大正11
)年にアインシュタイン博士が宿泊された、当時の日本では珍しい西洋式の部屋。


廊下の向こうには『放浪記』で有名な林芙美子(門司出身)のミニ博物館がある。門司港のカフェで女給をしていた彼女に因んで、ハッシュドビーフはこの辺りでは「林ライス」と書かれている。

アインシュタイン博士ご使用の机と椅子

「三井俱楽部」の傍には1917(大正6)年に建築された「旧大阪商船」。八角形の塔がシンボル。


1階は門司出身のイラストレーター、わたせせいぞう氏の常設ギャラリー。
2階は貸ギャラリーで、その日は『風少女』と題した創作人形展が開催中だった。
人形には並々ならぬ興味を持っているTは、この偶然に大喜び。私が、まるで生きているような人形達を撮影している間、人形作家さんと熱心に立ち話をしていた。写真集が欲しかったTだが、サイズが大きすぎたので、家に帰ってから注文しようと決めたらしい。

球体関節人形

この日、2023年4月22日、門司港レトロ地区全域で大規模な「グランド・マーケット」が開催されていたが、Tは一切無視。白いテントの間をぐんぐん進んで行く。
私は彼女の、好き嫌いのハッキリした性格が好きだ。一緒にいて気が楽だから。疲れを知らぬ脚力で、ずんずん歩いて行くT。写真を撮りたい私は少し遅れる。

関門橋 手前が門司港 対岸は下関市

やって来たのは「旧門司税関」。1912(明治45)年に建築された、おしゃれなレンガ造り。今では休憩所として使われている。映画のロケ地として人気の高い北九州市らしく、壁にはロケ地マップが貼られている。
奥には税関の仕事の一部が再現されている。

次なる場所は、Tが一番行きたかった「出光美術館門司」。
「魅惑の唐三彩 シルクロードの恵み」展。主に唐の時代の器や人物像40点を貸し切り状態で見て回った。
美術館の綺麗なソファーに並んで腰かけた。やっと。

大連友好記念館

建築界の巨匠アルド・ロッシがデザインした素敵な色合いの「門司港ホテル」、高さ103メートルの「レトロ展望台」、まるでメルヘンのお家のような「大連友好記念館」、日本で唯一の歩行者専用の跳ね橋「ブルーウイングもじ」。これらをさっと通り過ぎ、遅くなったので晩御飯を食べに行く。

門司港は焼きカレーが名物で数十軒あるけれど、一番美味しいと噂の「ベアフルーツ」へ。女優の上戸彩がテレビ番組で、「もし明日、地球が滅びるなら、最後に食べたいのは門司港の『ベアフルーツ』さんの焼きカレー」と言ったらしく、東京からまで食べに来るとか。確かに美味しいけど・・・・。

3年分を埋めるかのように、今日は二人共よく歩き、よくしゃべった。仕事の事、趣味の話、大事にしているもの、新しく始めたい事など、など。

Tはホテルへ、私は駅へ。
「元気でね!」「また会おうね!」

最北の駅というイメージが旅情をそそる


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