人生が変わるかもしれない 映画を超えた至福の体験 『アメリカン・ユートピア』
1991年に解散したアメリカのロックバンド「トーキング・ヘッズ」のデイヴィッド・バーンが、2018年に発表したアルバム『アメリカン・ユートピア』を原案に、演奏者11名とチームを組み全米を巡ったコンサートが話題となった。その後ブロードウェイに登場したら大ヒット!
その公演を映画化しようということになり、バーンの指名でスパイク・リー監督が映像化した。(2020年製作)
一言でいえば、「とんでもないものを観てしまった!」
デイヴィッド・バーンが次々に歌う楽曲も素晴らしいし、エレキギター(2名)やパーカッション(6名)のプレイヤー達も、2名のヴォーカリスト・ダンサーと共に踊りながらの見事なパフォーマンスを見せる。
その音楽はロックとかヒップホップとかいうジャンルをはるかに超えたデイヴィッド・バーンの唯一無二の世界。
スコットランド出身のバーンを始め、様々な国籍を持ったミュージシャンがお揃いのグレーのスーツに裸足で、一糸乱れぬチームワークを見せる。
脳のレプリカを手にして歌う "Here" に始まり、ジョージ・ハリスン風の曲 "Don't Worry About the Government" 、そして、私の大好きな "Lazy" と続く。「ただ僕は息がしたいだけ」と歌う "Born Under Punches" も好きだ。
曲の合間に、「有権者登録活動」をした話が入る。地方選挙で投票する人は僅か20%、その平均年齢は57歳だそうだ。「20%に甘んじてはいけない。地方からでも改革は起こせる」と、バーンは語る。
理不尽に奪われた生命を弔う "Hell You Talmbout" は全員で歌う。
バーンは語る。「変革の可能性がある。他者と繋がろう」と。
"One Fine Day" は全員によってアカペラで歌われる。お客はスタンディングオベーション。2階席も3階席もみんな立って歌っている。
ラストソングは "Road to Nowhere"(あてどない旅の途中)。客席に下りてきて、演奏しながら歌い行進する。お客さんは全員手拍子。
ああ、もう終わってしまうんだ。いつまでも、いつまでもこの世界に浸っていたいと思った。
この映画の魅力の筆頭はデイヴィッド・バーンのカッコ良さ! 製作当時68歳だが、全21曲を休憩なしで歌い上げる。あふれる知性がオーラとなって輝いている。70歳近くになって20代の頃よりカッコイイなんて、啞然。
次に、ミュージシャン達の心意気。最高のパフォーマンスを客席に届けようと全力を尽くす。そして、みんなが家族のように温かい。
特筆すべきはパーカッションの魅力。打楽器ってこんなに素晴らしかったんだ。体も心も震わせる。感情が溢れるばかりにいっぱいになる。
エンドロールで "Everybody's Coming to My House" が流れると、涙が出てしまった。
私は今日の「体験」を決して忘れない! デイヴィッド・バーンが言うように他者と、世界と繋がり、希望は常に持っていよう。
「ユートピアはあなたから始まる」のだから。
附記:この記事が100回目になります。
この映画を観たのは今年の1月30日、福岡中洲大洋劇場です。
愛する映画の記事がちょうど100回目の記念になって嬉しいです。
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