ミステリーはお好き?(3)仕事中毒の鬼上司
『ヴェラ 信念の女警部』は英国では2011年から放送され、現在も続いている大人気番組。『シェトランド』と同じ、アン・クリーヴス原作。
舞台はイングランド北東部、ノーサンバーランド。スコットランドとの国境に位置する海辺の街。
名女優ブレンダ・ブレシン演じる主人公は強烈な個性を持つ D.C.I.(ディテクティヴ・チーフ・インスペクター)ヴェラ・スタンホープ。
人付き合いが苦手で、家事もしない、食事もいい加減なヴエラは田舎のおばちゃんといった風貌だが、眼光は鋭い。でっぷり太った体に、よれよれのレインコートと帽子。「廃車するんですか。」と、よく言われる、古くてゴツイ愛車も似合っている。
意地っ張りで、ひねくれ者で、毒舌家。人の好意に素直になれず、ありがとうも言えない。部下にも辛辣な言葉を投げつける。子供は苦手。趣味もなく友人もいない、カンペキな仕事中毒人間。
警部としては優秀だ。直観力と推理力、共に抜群だし、部下にはテキパキと的確な指示を飛ばす。人の心の奥の奥まで見通す能力を持ち、複雑な人間関係にメスを入れ、必ず真相を突き止める。家族の歪みや崩壊に起因した事件が多い。
彼女の能力を知っているから、部下の刑事達はキツイことを言われてもキビキビと働く。それに、不愛想なのは照れ隠しで、部下に対する思いやりの心は持っている。
幼い頃に母を亡くし、父と二人で暮らしていた。その父も亡くなり、海辺の古い小さな家に一人暮らしだが、父への複雑な思いはずっと持ち続けている。
シーズン5の頃から、彼女はソフトになってきている。シーズン6以降は笑顔を見せることも増え、部下にねぎらいの言葉をかけたりしている。鬼警部から人情警部へと成長しつつあるヴェラさんだ。
でも、一人でいる方が気楽なのは相変わらずで、事件解決後の打ち上げに誘われても、「上司と飲みたい人がいる?」と言って断る。
或る時は、「私はあなた達と違って自由気ままな独り身なの。好きな時にやりたいことをする。」と言ってさっさと帰り、殺風景な家で、マグカップで酒を飲む。そんな時、ヴェラさんを応援したくなる。
最後に、私のお気に入りのヴェラ語録。
巡査部長:ひとつ言っても?
ヴェラ:聞く耳はないけどね。