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【映画レビュー】人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界

・限界を超えた挑戦者 山野井泰史さん

山野井泰史さんをご存知でしょうか?
彼は、アジア人として初めてピオレドール賞を受賞した著名なクライマーです。
この作品は、登攀映像やインタビューを通して彼が見ている世界に迫るドキュメンタリーです。

私は出産する前に頻繁に登山に出かけていたので、山野井泰史さんの名前は知っていました。
山野井泰史さんを描いた作品、沢木耕太郎の『凍』を読んだことがあり、登場人物が山で亡くなる山岳小説が多い中、山野井さんが生還する姿に感銘を受けた記憶があります。
ちなみに、『凍』はノンフィクションです。

「人生クライマー」は、ヒマラヤの7,000メートル級の山ギャチュン・カン登攀により手足の指10本を切断するという苦難を乗り越えた彼の姿、妻の妙子さんを映像で初めて見ることができました。

・ピオレドール賞は登山家のオスカー賞

創設: 1991年にフランスで設立され、世界中の登山家たちにとって「オスカー賞」と同等の名誉を持つとされています。

基準: 技術的な難易度や創造性、リスクを冒して挑戦したアルパイン・スタイル(装備を軽量化し、迅速に登るスタイル)の登山が評価されます。

目的: 商業的な要素ではなく、冒険と挑戦精神、環境への配慮に基づいた登山を称えるものです。

・作中で印象深かった母親の言葉

私が特に印象に残ったのは、泰史さんのお母さんである孝子さんの言葉です。
泰史さんが高校卒業時、担任の先生から「就職も進学もしない生徒はこの学校では初めて」と言われた際、孝子さんは「私はあの子の山に登りたい気持ちを尊重する」と答えたのです。
子どもの進路が決まっていない状態で、母親がその子のやりたいことを応援するというのは非常に難しいことだと思います。

また、泰史さんがギャチュン・カンで凍傷を負った際、妻の妙子さんに「泰史から山を奪ったら何も残らない。また登るわよね?」と話したことも心に残ります。
お母さんが泰史さんの山への情熱を深く理解していることが伝わってきます。

・山野井泰史さんが現在まで生き延びられてきた理由

この作品では、一緒に登攀したパートナーがどこで何歳で亡くなったかというテロップが何度も表示されます。
それだけ、多くのクライマーが命を落としている現実に改めて驚かされました。
山野井泰史さんがこれまで危険なクライミングをしても生き延びてこられた理由は、二つあると考えています。

一つ目は、山野井さんが慎重に物事を進める性格であることです。
現在住んでいる伊豆の崖を登攀する際に、事前に脆い岩盤を打ち落とす準備をしていました。
徹底的に準備するのです。
妻の妙子さんも泰史さんのその性格を認めており、泰史さん自身も慎重な性格を自認しています。

二つ目は、妻の妙子さんの存在です。
夫婦で登攀していて雪崩に遭遇し埋まってしまった時、妙子さんが彼を掘り起こしてくれたエピソードもありますが、彼が家に帰る際に感じるホッとする気持ち、つまり精神的な支えも大きいと思います。
この「帰りたい」という気持ちが、生き延びるための強い意志を支えているのではないでしょうか。

・純粋にめっちゃ羨ましい人生

山野井泰史さんの人生は、とても羨ましいです。
自分のやりたいことを全力で追い求め、実現してきた人生は素晴らしいです。
山野井さんが感じた「とてつもない達成感」を私も一度味わってみたい。
「他には代えがたい達成感」というのは、それを感じた時、どのような気持ちになるのでしょうか。
泰史さんも「やりたいことを命をかけて全力でやっていく」と語っており、その姿は非常に輝いて見えます。

山に登る方も、登らない方もぜひこのドキュメンタリーをご覧ください!
山の景色の美しさや、こうした人間がいることを知ることができるはずです。
Amazon プライムで視聴できますので、ぜひご覧ください。
感想をコメントいただけると嬉しいです。

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