【第113回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
前回の最後に mention を取り上げましたが、別のセリフで再び mention が出てきましたので取り上げます。
Do not mention Dug to me at this time.
mention は「サラッと触れる」程度なので、「今はDugについて私に触れるな」です。
「ダグは放っておけ」 という字幕もいいですね。mention … to (人)で「(人)に…のことについて(サラッと)触れる」ですが、あまり見聞きしない英語ではないでしょうか。
Do not talk about Dug to me at this time. と talk を使った方がよく目にしますが、talk about… は、サラッと触れるのではなく、もっと突っ込んで議論をするというニュアンスがあります。
Thank you. と言われて Don’t mention it.「どういたしまして」と言い返すことがありますが、これも「それ(Thank you) には触れなくてもいいですよ」というのが直訳で、そこから「どういたしまして」という意味になります。
the master will not be pleased.
これを取り上げたのは日本語字幕が素晴らしかったからです。
直訳は「ご主人様はお喜びにならないだろう」ですが、字幕は「ご主人様に叱られる」と、「喜ぶ」とは反対の意味で訳しています。
「喜ばない」の反対が「叱られる」に必ずなるとは限りませんが、状況次第で「叱られる」という意味で使っていけると思いました。
「〜に叱られる」は これまで be scolded やbe reprimanded などと直訳すること以外は考えつかなかったですね。
でも発想を変えて この be not pleased を使うこともできるんだと、ちょっと感動してしまいました。と言うよりそういった発想が思いつかなかったです。日本語の発想にも関係しますが、英語の学習には、頭を常に柔らかくしておくことの大切さを感じました。
Yeah, right.
「うん、その通りだ」が、その意味するところですが、文脈と話者の声のトーンによっては「そんなわけないでしょ」と正反対の否定の意味になってしまいます。
少し呆れて否定する場合に「はいはい(わかりました)」と言いますよね。それと同じです。
この場面を見たらわかりますが、犬はYeah を大きめの声で少し伸ばすように言っています。「そんなわけない」というのが伝わってきます。
Yeah, right. ー 言い方によって全く反対の意味にもなりえるなんて面白いですね。最高です!
I’m stuck with you.
stuck は行き詰まって動きが取れない状況を表しています。
I am stuck in traffic. 「交通渋滞に巻き込まれて動きが取れない」ー このように渋滞などで動きが取れない stuck は理解しやすいと思います。
でもカールが言った I’m stuck with you. のように後ろに you のような人が来たら「私はあなたと動きが取れない」となり意味がとりにくくなります。
でも次のように考えるとわかりやすくなるのではないでしょうか。
「動きが取れない」というのは「好むと好まざるに関わらず、ずっとこれからも一緒にいるしかない」
です。
ですから I’m stuck with you. には「君とは一緒にいるしかない」と困惑や諦めのトーンが含まれている場合が多いです。
カールがこのセリフを言ったのは、ラッセルに対してです。犬やら鳥やらを無理に連れて行こうとするラッセルに堪忍袋の尾が切れたのです。
部活動などで、彼とは毎日一緒にいなければならないだけで、親友でも何でもないという時には、
A: Is he your good friend? 「彼って親友?」
B: No, I’m just stuck with him. 「いや、一緒にいるだけ」
です。
「動きが取れない」 stuck は次のような文でも使われます。
I got stuck on the difficult math problem.「難しい数学の問題で行き詰まってしまった」
The zipper is stuck. 「ファスナーが(引っかかって)動かない」
That song is stuck in my head. 「その歌が頭から離れない」
➡︎ 「…が頭にこびりついている」と日本語でも言いますね。
stuck ー 思ってる以上に使える語です。