It’s about time! の“名訳”に感心してしまいました。
かなり前の映画ですが、『摩天楼はバラ色に( The Secret of Success )』というバックトゥーザフューチャーの主人公役を演じたマイケルフォックスが主演の映画の中で「これぞ名訳!」という日本語字幕がありましたので取り上げたいと思います。
場面は、マイケルフォックスが勤める会社の社長の Prescott が部下に対して言い放った言葉 ”It’s about time.“ です。
Prescott: I have got to get that report by the end of the day, Art. Or you’re in the doghouse. (アート、夕方までに報告書を出さないとクビだぞ)
Art: I don’t know. (それが、社長)
部下: Mr. Prescott? I’m sorry it came in so late. But it just arrived. (今やっと入手しました)
Prescott: It’s about time! ( )
*be in the doghouse 困ったことになった(ここでは“クビ”と表現されている)
Prescott が使った It’s about time は普通、次のように仮定法として使われます。
It’s about time you went to bed.
(もう寝る時間だよ)
皆さんも小さい頃、この言葉を親から言われたことがあると思いますが、学校でも仮定法を学んだ時に
It’s ( about ) time 主語 + 過去形 〜
というふうに、過去形になることを強調して教えてもらったのではないでしょうか。
でも文法以外に大切な事柄がこの表現にはあるのです。それは、この表現には
「もう寝る時間よ。何してるの?」とイライラした気持ち
が含まれているということです。
この「イライラ」感が実はとても大切なのです。なぜなら、It’s about time. はこれ単体で意味をなすからです。
後ろに you went to bed などがくれば、「もう〜する時間よ」とすぐに意味がわかるのですが、It’s about time. だけでは意味がとりにくいと思います。
そこで、この It’s about time ... がイライラ感を含んだ表現だと知っていれば、
「やっと〜したの?遅いね」
という意味になることがお分かりいただけると思います。
この映画のセリフですと、必要な書類が会社に届いていないことにイライラしていた社長が、届いた連絡を受けて、It’s about time. と言ったので「遅いな!」がピッタリの訳だと思います。
でも字幕は違っていました。ワンランク上の日本語訳だったのです。それは、
「しっかりしろ!」
です。一瞬「えっ!?」と思いましたが、この社長は今でいう超パワハラ社長で、部下にいつも怒鳴り散らしていたのです。
ですから、書類が遅れて届いたのも部下のせいにしてしまい、「しっかりしろ!」と言ったのでしょう。
もちろん「遅いな!」でもいいのですが、社長のパワハラ気質から「しっかりしろ」という訳が出てきたのはすごいの一言です。さすがプロの字幕翻訳家だなあと感心してしまいました。
映画の英語をそのまま真似したり、何度も聞いたりして学べることはたくさんありますが、この It’s about time. のように「英語と日本語字幕」から学べることもたくさんあります。
今後も映画やドラマを題材にしていろんな表現を深掘りしたり、名訳を取り上げていきたいと思います。
Thanks for your interest in my article.