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【第83回】ディズニー映画「ベイマックス」の色々なシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。

アナウンサー: Next presenter, Hiro Hamada. 「次はヒロハマダ」
フレッド: Oh, yeah. This is it.「お呼びだぞ」
ヒロ: I guess I'm up.「出番だ」

「ベイマックス」

発表会の順番を待ってるヒロがアナウンスされた場面です。

こんな短い会話でしかも簡単な語句ばかりなのに、意味がとりにくいのではないでしょうか。

This is it.  
いろんな意味がありますが、フレッドが言ったThis is it. は「ついにきたな」と“重要な瞬間や待ち望んでいたことが今まさに起こる場面” で使えます。

他にもこの This is it. は「これだよ」「これでおしまい」「その通り」などいろんな意味があるので、状況に合わせてその意味を考える必要があります

そういった意味では、英語を学び始めてすぐに習う単語ばかりなのに、とても難しい表現ではないでしょうか。

I’m up.
これは Are you awake?「起きてるの?」ー Yes, I’m up. 「起きてるよ」という具合に、まさしく身体をup している意味で使われます。

しかし、このヒロのセリフのように「僕の出番だよ」という、「身体を起こす」とは全く違った意味でも使われます。

「出番」と言えば It’s my turn. がよく使われますが、I’m up. の方がカジュアルでインフォーマルです。

ですから軽く、サラッという場合は I’m up. がいいですね。



ハニー: We love you, Hiro. Good luck!
ゴーゴー: Don't mess it up. 「頑張れよ」
ワサビ: Break a leg, little man. 「頑張って」

「ベイマックス」

こんな短い会話の中にヒロを励ます言葉が3つも出てきます。平たく言うと全部「頑張って」です。その3つとは、 Good luck!Don’t mess it up.Break a leg. です。

ただ、この中で一つだけ仲間はずれがありますが、それは Don’t mess it up. です。 その理由は次のとおりです。

mess up… は「…をめちゃめちゃにする」と言う意味で、「めちゃめちゃにするな」 = 「失敗しないように」と相手を励ますというより、少しプレッシャーをかけながら頑張るように言う表現だからです。

A: I have an important presentation today. 「今日、大事なプレゼンなんだ。」
B: Don’t mess it up. 「ミスるなよ」

ミスるなよ」は「失敗するな」のスラング(みたいなもの?)で日常会話でもよく使う言い回しですね。英語だけでなく、日本語もいろいろ考えていくと面白いです。

話は逸れるのですが、日本語について考える時、「この言い回しはスラング(俗語)だ」とはあまり考えないのではないでしょうか?「日本語のスラングをあげて下さい」と言われても「なんだろう??」と戸惑ってしまうかもしれません。

英語はスラングという言葉が頻繁に使われますが、日本語にはその概念がないのはどうしてなのだろうと考えてしまいます…。例えば、Don’t mess it up. の意味として「ミスるなよ」というのを挙げましたが、これはたぶん日本人特有の言い回しだと考えたので、スラングではないかと思いました。

でもこの「ミスる」のように、日本語を学んでいる外国の方には使いづらいけれど、我々日本人は頻繁に使っている日本語の表現を考えることは、頭の体操になり、また勉強にもなります。

話が逸れてしまいましたが、「頑張って」の話題に戻します。Good luck. はニュートラルな表現で「頑張れ」のごく一般的な表現なので、しょっちゅう日常会話の中で耳にします。

でも、この Good luck. の直訳は「よい幸運を」で軽い感じがしますが、日本語の「がんばれ」はどちらかというと肩に力が入りそうな表現で、この2つは対照的な感じがするのは私だけでしょうか。

Break a leg. は、「足を折りなさい」と逆に不幸なことを言っていますが、直接的に「幸運を祈ると言うと不運を招く」という迷信から、「足を折れ」と逆の表現を使うようになったとされています。

私は break a leg. という英語は聞いたことがないです…でもだからといって古い英語でもなさそうです。

「頑張って」を表す英語表現は他にもいろいろありますが、そのニュアンスの違いを考えるのも面白いです。


タダシ: All right, bro. This is it. Come on. Don't leave me hanging. What's going on? 「景気づけだ。シカトするなよ。どうした?」

「ベイマックス」

Don't leave me hanging.
“leave 〜 …ing” で「〜を…のままにしておく」という意味で使われます。Don’t leave the water running.「水を流しっぱなしにしないでね」 

Don’t leave me hanging. の hang は 「ぶら下がる」という意味です。hang のイメージは、ハンガーを思い浮かべるとわかるのですが、ダラーっとその辺にぶら下がっているところから「放置されている」をイメージしてください。

そこから Don’t leave me hanging. は「私を放置した状態にしないで」 = 「(私を)無視せんといて」という意味合いで使います。

このタダシとヒロのやりとりを見ると、この英語がよくわかります。発表会の前に緊張しているヒロに、タダシは“グータッチ”を要求しますが、ヒロは緊張のためにそれを無視してしまうのです。

その時にタダシが言った言葉が Don’t leave me hanging. です。タダシは本当に怒ってるのではなく、「グータッチぐらいしようぜ」という気持ちで言ったのですが、空中にあげたタダシの拳が hanging (ぶら下がった)しているのは想像できると思います。

ですから、無視というより「オレを待たせた状態にしないで」ぐらいのニュアンスです。タダシはグータッチのために上にあげた拳をどうしたらいいのか分からず気まずくなったのでしょう。

次のようなメールのやり取りの中でも使えます。

“Why haven’t you texted me? Don’t leave me hanging.” 「なぜ連絡してくれないの? 無視しないでよ

場面によっては「シカトするなよ」という日本語も使えるかもしれません。「シカトする」はあまり好ましい表現ではないですが、日本語のスラングと呼べるのではないでしょうか。

「無視するな」は Don’t ignore me. が直訳ですが、この表現は Don’t leave me hanging. より強くてストレートな表現なので使用には注意が必要です。

私もそうなんですが、日本語をそのまま直訳してしまう傾向が、英語の学習者には多いように思うので、やはりニュアンスの違いって大切だと思う毎日です。


最後にちょっとした言い回しを紹介します。

ヒロ: I really want to go here.「どしても受かりたい」
タダシ: Hey. You got this.「大丈夫さ」

「ベイマックス」

You got this.
大丈夫だよ」と相手を励ます表現ですが、あまり知られていないのではないでしょうか。類似表現は、You can do it. /  No problem.  /  You’ve got everything under control. 等々たくさんありますが、この You got this. も覚えておくと便利かもしれません。

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