【第81回】ディズニー映画「ベイマックス」の色々なシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
ヒロが発明品を完成させて発表会の会場にいるシーンです。
この字幕「この程度で動じるもんか」は見事に要点をついているのですが、ヒロの2つのセリフを見ていきましょう。
① You're talking to an ex-bot fighter. の ex-... は「前の…」、「元の…」を表すので「君は元ロボットファイターに話しかけているんだよ」です。
ちなみに「元カレ(カノ)」は、ex-boyfried ( ex-girlfriend ) でもいいですが、 “my ex” と省略していうことが多いです。
ex- が「元…」を表すことはご存知の方も多いかもしれませんが、ex... がどうして「元…」を表すのかはあまり考えたことがないのではないでしょうか。
ex- というのは exit (出口)、export (輸出)などに見られるように「外へ」を表す接頭語です。
「外へ」というのは、その反対の「内へ」というものも意識します。そして「外」と「内」の間には境界線があります。
その境界線の内側にいるのが現在の彼氏(彼女)、外側にいるのが別れた彼氏(彼女)と考えると元カレ(カノ)が one’s ex と呼ばれる理由がわかってくるのではないでしょうか。
この ex の説明はあくまで私が個人的に考えたものですが、内と外を意識すると私自身 ex の持つイメージがわかりやすくなりました。
② Takes a lot more than this to rattle me.「この程度で動じるもんか」
少し意味がとりにくい英語です。まず、主語 It が省略されており、It takes … to 〜で「〜するために… が必要だ」という言い回しです。
rattle は「ガタガタ揺らす」が元の意味で、そこから「心を揺らす」=「動揺させる」という意味があります。disturb の同義語ですね。
ですから、It takes a lot more than this to rattle me.は、「僕を動揺させるにはこれ以上のことが必要だよ」となります。
「これ」と言うのは、発表会にはたくさんの面白い発明品があるということです。「これぐらいで僕は動揺しないよ」と言っているのです。もっと平たく言えば「これぐらいへっちゃらだ」です。
このIt takes ... to 〜 の表現は rattle 以外も応用がいろいろ考えられます。
It takes a lot more than this to make her happy.「こんなことであの子は喜ばへんし」
It takes a lot more than this to make me dislike you.「こんなことで僕はキミのことが嫌いになんかならないよ」
It takes a lot more than this to surprise me.「こんなことで僕は驚かないよ」
これらの日本語もよく耳にするので、ドンドン使っていきたいですね。
発表会の前に緊張気味のヒロに、ゴーゴーがかけた言葉です。
① Stop whining.
whine は英英辞典に次のように定義されています。
annoying は「うっとおしい」なので、文句は文句でも何度も繰り返してうっとおしい文句です。
ChatGPT は whine のことを
「しつこくて(persistent)、high-pitched (甲高い声で)、childish (子供じみた)不満」のことと回答しました。
子供って、時にはしつこく何度も同じ文句を言いますね。それが whine です。
「不満を言う」はcomplain が一般的ですが、complain は”ニュートラル” な語なので、しつこい不平には whine がピッタリです。
② Woman up.
これは辞書を引いても出てこないと思います。なぜなら造語だからです。
何の造語かと言うと Man up. です。これもあまり聞かないかもしれませんが、「男らしくしろ」「しっかりしろ」「勇気を出せ」など人(特に男性)に”はっぱをかける”表現です。
でもこの Man up. は明らかにジェンダーレスが叫ばれる今の時代には、受け入れがたい人も多いのではと思わせる表現です。
ですから女性のゴーゴーは Man up. だけじゃなく Woman up. もあるよという意思を示したのではないでしょうか。意味は「しっかりしろ」で Man up. と同じです。
でも Woman up. も Man up. 同様、それ自体、女性にのみ焦点を当ててるという点でニュートラルな表現ではないです。
ではどう言えばいいのでしょうか?思い浮かぶのは Person up. です。person は男女の関係がない“人”だからです。
そんな時に役立つのが ChatGPT などの対話型AI です。”Person up.” が通じるかどうか聞いてみましら。
「”Person up” は一般的に使われていない表現なので、多くの人にとって不自然で無理やりな感じがするかもしれない。Person up が広く浸透するには時間がかかるだろう」とのことです。
対話型AI Claude にも同じ質問をしてみました。
.「Person up はジェンダーの中立的な表現を目指した試みだが、不自然に聞こえ、意図する意味をクリアに伝えないかもしれない」との回答でした。
私も Person up. を考えついた時、ちょっと無理があるかもと思いましたが、やはり無理があるみたいです。
でもいろいろ考えるのは知的好奇心を刺激しますし、何かワクワクするものがありますね。