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【第141回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
Mirage: Volcanic soil is among the most fertile on Earth. Everything at the table was grown right here. How does it compare? 「火山の土は肥沃なの。食材はすべて島のものよ。お味はどう?」
Mr. Incredible: Everything’s delicious. 「何もかも最高だ」
火山地帯に住んでいるミラージュが肥沃な土地で育った食べ物の味をMr.インクレディブルに聞くシーンです。
How does it compare? 「お味はどう?」
it は“food grown in volcanic soil”( 火山の土地で育った食べ物 ) を指します。直訳は「どのように火山の土地で育った食べは比較するの?」ですが、“何と比較するのか“を明確にする必要があります。
すなわち、How does it compare ( with … ) の ( ) に入るものが本来必要です。火山という肥沃な土地で育った食べ物との比較は、Mr.インクレディブルが“普段口にしている食べ物”です。
it をfood grown in volcanic に置き換えると、How does food grown in volcanic soil compare with the food that you eat every day? 「火山の土で育った食べ物は、あなたが毎日食べている食べ物と比べてどうですか?」という問いかけになるのです。
このように考えると、How does it compare? ってなかなか難しい言い回しではないでしょうか?
字幕は「お味はどう?」となっていますが、ここで注意が必要です。compare ( 比較する ) が使われているので、他の食べ物と比較して“味はどうか”?と聞いてるのです。
ですから単純に、How do you like it? や Is it delicious? 「どう、おいしい?」とは区別して考えた方がいいです。“比較するもの”があっての compare なのです。
新しいレシピを用いてハンバーグを作った時、
I tried new recipes for hamburgers. How does it compare ( with the one I usually make )? 「ハンバーグの新しいレシピを試してみたんだけど、いつも作っているハンバーグと比べてみてどう?」
と、これまで作っていたものとの比較を聞いてるのです。
また、引越しをして新たな家に住んだ時も、How does it compare ( with the house we lived in )? 「これまで住んでいた家と比べてどう?」
と”今まで住んでいた家“との比較で、相手の意見を聞くことができます。
何かと“比較“して聞きたい時は How does it compare?” はいろいろと応用が効いて“使える” 表現ですが”、“比較する対象“をはっきりさせたい場合はHow does it compare woth 〇〇? と全文言った方が誤解を生まずにコミュニケーションができると思います。
HELEN: Hurry, honey! Or you’ll be late for work! Have a great day, honey. 「急いで。仕事に遅れるわよ。今日も頑張ってね」
Bob: Thanks.
HELEN: Help customers, climb ladders... 「働いて出世してね」
Bob: Bring bacon? 「”うんと稼げ?“」
HELEN: All that jazz.
ボブが出勤前にヘレンと会話しています。
① Help customers, climb ladders…
climb laddersは「はしごを上る」ですが、そこから「昇進する」という意味で使われます。「昇進する」は「昇って進む」なので、この climb ladders はイメージしやすいのではないでしょうか。
「昇進する」はこのMr.インクレディブルの以前のシーンにも出てきました。 それは”move up” です。またそこで、He advanced in rank. という表現も紹介しました。
move up と advance in rank に続けてこの climb ladders も”類似表現“としてひと塊りにして覚えておくと定着率がグッと上がると思います。
「昇進する」は他にも get promoted があります。これが一番頻繁に用いられるかもしれません。
今後「昇進する」の別の英語表現が出てきた時は、この4つの表現に続けて覚えていくようにすると語彙増強に大いに役立つこと間違いありません。
さらに「昇進する」の反意語である「降格する」のmove down や get demoted なども付け加えていくと、とさらに語彙力増強に効果を発揮すると思います。
このようにして次々と類義語や反意語を思い出していく英語学習を私は「”英語の旅“にでる」と呼んでいます。旅に出て帰ってくる時までにいろんな語彙や熟語が身についているでしょう。長い旅であればあるほどいいですね。お金もかかりませんし…
② Bring bacon?
日本語では「家族をやしなう」や「稼ぐ」を意味する表現です。略さずに書くと “Bring home the bacon?” です。
「家にベーコンを持って帰る」が「稼ぐ」という意味になるのは、「bacon(ベーコン)」が中世ヨーロッパでは高価な食材であり、裕福さや成功の象徴だったためです。
ベーコンは家族を養うための収入や生活の糧を表していたのですね。ただ、現在、日常会話ではそんなに使われておらず、面白おかしく使われることが多いみたいです。
make a living や earn money が「稼ぐ」と言う意味では bring bacon より広く使われています。ですからボブは妻ヘレンにちょっとしたユーモア感覚で Bring bacon? と言ったのでしょう。
でも面白そうな英語なので、英語を母語としている方にこの表現について「どんな場面で使われるか」などいろいろ聞いてみようと思います…
③ All that jazz.
ボブが「“うんと稼げ”?」と言ったことに対するヘレンの返答 All that jazz. です。all that jazz は「…などなど」や「そんな感じ」と言った意味があります。
なぜ jazz かというと、ジャズ音楽の自由さ、即興性、多様性 から「その他いろいろ」と言った意味が出てきたそうです。(ジャズに興味のない私にはついて行くのが難しいトピックです…)
このヘレンのセリフでは、「まあそんな感じかな」と言うぐらいの意味です。(字幕には出ていません)
ただ、この all that jazz も少しユーモア感覚のある英語で、ボブが同じくユーモア溢れる Bring bacon? を使ったので、ユーモアにはユーモアで返したのでしょう。
英語の”ユーモア表現“やジョークをその場で理解するのって難しい場合が多いです。聞き取れても何が面白いのかがさっぱりわからないこともあります… “語感”って大事だなあと痛感します。