【第115回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
前回このセリフの bug「悩ます」を取り上げましたが、今回は同じ箇所の別の語を取り上げます。
その語は、人名の Phyllis ( フィリス ) です。そして、カールおじいさんがその Phyllis に続けて言った You call your own mother by her first name?「ママを名前で呼んでるのか?」です。
皆さんはこのラッセルとカールの会話に何か感じることはありませんか?
私は Phyllis という名前を聞いた時、男の名前なのか女の名前なのかピンときませんでした。でもカールはすぐに Phyllisがラッセルの母親の名前( ファーストネーム )だとわかったのです。ネイティブなので当たり前のことなのですが…。
この辺りが英語がネイティブでない私にとって大きな壁だと感じてしまいました。日本語だと人の名前を聞いたら男女の区別はピンときますよね。(最近の名前は性別がどちらか分からないことも多いですが …)
名前に限らず場所や建物の名前など、英語の”固有名詞“を理解するのは本当に難しいです。固有名詞が出てきた途端に英語のリスニング力が落ちるという経験を何度もしています。
固有名詞の英語ー リスニングが難しいです…
What have I got myself into, Ellie? 「エリー、一体なぜこんなことに?」
エリーとの約束を果たすために旅に出たカールだが、ケヴィンやラッセルと一緒に行動することになってしまった時に言った言葉。
get oneself into …「自分自身を…に入れる」が直訳で、I got myself into trouble. 「私はトラブルに巻き込まれた」などのように一般的にネガティブな意味合いで使われます。
カールが言った What have I got myself into, Ellie? の直訳は「エリー、私は(いったい)何に巻き込まれたの?」です。
そこから、「なぜこんなことになったんだ」と、思い通りにいかなかった気持ちが表れています。
get や give を使ったこんなフレーズを目にするたびにワクワクしてしまいます。
He wandered off!
意味は「どこかに行ってしまった」、「迷子になった」です。なぜ「迷子」なのかは、wander と off を別々に考えれば理解しやすくなります。
wander は「うろつく」で、そこに「分離(離れる)」の off がつくので「うろついて離れてしまう」となり、そこから「どこかに行ってしまう」という意味が生まれます。
そこには「心配」も含まれるのです。off の代わりに around 「…のまわり」を付けると、「まわりをうろつく」 で「あちこち歩き回る」となります。
He likes to wander around the city on weekends.
「彼は週末に街をぶらつく(=あちこち歩き回る)のが好きだ」
これは wander off と違って「迷子になる」というイメージは含まれていません。
ラッセルのセリフの “He” はケヴィン(巨大な鳥)のことで、朝起きるといなくなっていたため、 He’s wandered off. と言ったのでしょう。
The bird is calling to her babies.
日本語字幕は「( 鳥が ) 赤ん坊を呼んでるんだ」ですが、「…を呼ぶ」は call ... なので The bird is calling her babies. と to がない方がしっくりしないでしょうか。でも、 to がなければ「電話をする」という意味になってしまいます。
call to ... で「…を呼ぶ」という意味になるのは、to が「方向と到達」を表す前置詞だからです。前から意味をとっていくと、「その鳥は呼びかけている( The bird is calling ) 鳥の赤ちゃんに向かって( to her babies. ) となります。
「その鳥は赤ちゃんに( 向かって ) 呼びかけている」でも意味は通じるので、この日本語訳で覚えておくと call to ... が使えるようになるのではないでしょうか。
You're not after my bird, are you?
after がポイントになる語です。 after ... は「…の後に」なので直訳は「あなたは私の鳥の後ろにいないだろうね?」です。
「…の後ろにいる」状態をイメージすればわかると思うのですが、「…の後を追いかける」に結びつけることができます。
何かを追いかける目的は普通「捕まえる」ためです。ですから、You're not after my bird, are you? は「あなたは私の鳥を捕まえようとはしていないだろうな」となります。
この箇所の日本語字幕が「鳥の捕獲…」となっているのはそのためです。
故に、I’m after him. には2通りの解釈ができます。一つ目が、鬼ごっこなどなどで“目に見える誰かを走って追いかけている”です。もう一つが、“彼を探し出して捕まえようとしている”です。
このマンツのセリフは後者で、カールたちが鳥(ケヴィン)の行方を追っていないかどうか確認しています。
この be after ... は「…を探している」ともとらえることができますが、look for ... と違って、“追い求めてつかまえる”という強い意味を含んでいます。
それに対して、look for... は単に誰かを見つけようとしているだけで、 be after ... のような「追い求めてつかまえる」といった強いメッセージはありません。
基本単語の after ですが、深掘りすると奥が深い単語だなあと思ってしまいます。
The Charles Muntz?
これは日本語字幕そのものです。人の名前に the をつけると「あの(有名な) 〇〇さん」と特定の人を指す表現になります。
カールが最初にAre you Charles Muntz? と聞いた時には、まだ本当にあの“有名な探検家”の Charles Muntz かどうか確かではなかったのです。
マンツが Yes というのを聞いても、まだ信じられなかったので The Charles Muntz? 「あの(有名な探検家の)マンツ?」と再確認したのです。
基本、a や the は人の名前や都市名などの固有名詞にはつけないのですが、この The Charles Muntz のように“特定の有名な人”と言いたい場合は the を人名の前につけます。