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【第138回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
タブレット: This Message Will Self-Destruct. 「自動消滅します」
ミラージュの説明が終了後、タブレットに現れた文章です。
destruct は「破壊する」なので、「自身の」を表す self- が付いて self-destruct となり「(他の力を借りずに)自動的に破壊する」という意味になります。
この self-destruct を見た時に疑問に思ったのは、destruct の同義語は destroy 「破壊する」なので、This Message WIll Self-Destroy. と書き換えることができるかどうかということです。
私的には self-destroy には違和感がありました。理由は destroy は後ろに目的語がくる他動詞「…を破壊する」という意味で普通は用いられるからです。そこで ChatGPT で調べてみました。
This Message Will Self-Destroy”
Grammatically awkward and unnatural.
“Self-destroy” is rarely, if ever, used in English. Instead, “self-destruct” is the standard phrase.
やはり文法的に不自然で、self-destroy はめったに使われず self-destruct が標準のフレーズであるとのことです。
また、ネイティブスピーカーが質問に答えてくれる Q&Aサイトの HiNative で、アメリカ人の方が次のように答えていました。
Destroy is usually used when a subject breaks another subject (object) whereas destruct is often the subject breaking itself.
「destroy は通常、主語が他の主語(目的語)を壊すときに使われるのに対し、destruct は主語が自分自身を壊すときに使われることが多い」とのことです。
すなわち、「destroy は通常他動詞、destruct は自動詞で使われる」ということです。
ですから、destroy を使って書くと、This Message Will Destroy Itself. と目的語の itself を入れて書くと self-destruct と同じ意味になります。
Helen: You..are one distracted guy. 「心ここにあらずね」
Bob: Hmm? Am I? I don’t mean to be. 「僕が?まさか」
Helen: I know you miss being a hero and your job is frustrating. I just want you to know how much it means to me that you stay at it anyway. 「ヒーローへの未練とストレスの溜まる職場…でも仕事を続けてくれてうれしいわ」
① You..are one distracted guy. 「心ここにあらずね」
ここでのポイントは “one” です。one は「一つの」や「ある」という意味で使われますが、ここではそのどちらでもなく、「強調」として用いられています。
何の強調かというと、a ( an ) の強調です。強調しない文で書くと You are a distracted guy. 「あなたは気が散りやすい人だ」です。
それが You are one distracted guy. となると「あなたは本当に気が散りやすい人だ」となります。でも字幕の「心ここにあらずね」はよく考えられた日本語ですね…
one に強調の意味があるのはご存知でなかった方もおられるのではないかと思います。
He’s one tall guy! 「なんて背が高いの!」
This is one big problem! 「これは本当に大きな問題だよ!」
強調の “one” ー ぜひ覚えておきたいですね。
② Am I? I don’t mean to be. 「僕が?まさか」
ヘレンの You..are one distracted guy. を受けてボブが言った英語です。
省略せずに書くと、I don’t mean to be [ one distracted guy ]. です。I don’t mean to … で「…すりつもりはない」という意味があります。
ですから、直訳は「気が散りやすい人であるつもりはない」、すなわち「自分では気が散ってるつもりなんてないよ」とわざと自分から進んでやっていないというのを強調しています。
I don’t mean to offend you, but… 「あなたを怒らせるつもりはないんだけど」= 「気を悪くしないでほしいんだけど…」 = 「悪く取らないでほしいんだけど…」 = 「こんなこと言うのもなんだけど…」
日本語の訳をいろいろ考えていくのは面白いです。特に最後の「こんなこと言うのもなんだけど…」は日本語の口語表現でよく用いられるのではないでしょうか。
I don’t mean to brag, but…「自慢するつもりはないんだけど…」ー brag は「自慢する」で、ちょっとだけ自分のことを自慢したい時にこう前置きすると嫌味が軽減するかもしれません。
③ I just want you to know how much it means to me that you stay at it anyway.
(1) how much it means to me
直訳は「私にとってどれだけのことを意味するか」です。そして「たくさんのことを意味する」というのは「とても大切だ」ということを言いたいわけです。
すなわち、how much it means to me = It is very important to me です。別の言い方では it means a lot to me. です。
「大切な」も important だけでなく、mean を使っても表せることができ、日常会話でもよく使われる表現です。
(2) you stay at it anyway
stay at … は stay at the hotel など通常「…に滞在する」で用いられます。でも it は your job を指すので「あなたの仕事に滞在する」は意味が通じません。
やはりポイントは stay の意味ですね。stay のコアは「ずっと…のままでいる」です。ですから、stay at the hotel も「ずっとホテルにいた状態でいる」から「滞在する」になります。
Let’s stay healthy. 「健康なままでいましょう」=「健康を維持しましょう」
ですから stay at it (= your job ) は「仕事のままでずっといる」が直訳です。そこから「仕事を(ずっと)続ける」という意味になるのです。「…にずっととどまる」というイメージですね。
それを踏まえて、
I just want you to know / how much it means to me / that you stay at it anyway.
の意味を前から取っていくと、「私はあなたに知って欲しいだけなの。 / 私にとってどれだけ大切かということを。 / あなたがともかく“今の仕事を続ける”ということが。
( how much it means ... の it は you stay at it anyway を指します)
区切りごとに前からどんどん意味を考えていくことも英文読解の大切な要素だと思います。
この”続ける”という意味の stay at の単語自体は簡単なのですが、「…に滞在する」というイメージが頭にこびりついてると、その意味を誤解してしまう可能性があります。
英語の奥深さを表している stay at ではないでしょうか。