【第99回】ディズニー映画「ベイマックス」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
My healthcare protocol has been violated.
直訳は「私の医療に関する手順が守られなかった」です。
protocol は「手順」「基準」のことで、類義語は rule, procedure や guideline などいろいろあります。
“通信プロトコル”とか言いますが、イマイチ意味が掴みにくいのではと思います。要は、通信する際の「お約束ごと」や「決まりごと」のことです。「ルール」ですね。
We need to follow the safety protocol during the fire drill.「火災訓練では安全手順に従う必要がある。」 ー 「手順」すなわち「約束事」のことです。
警報が鳴ったら、どこを通ってどこに避難するのかが細かく約束事として文章化されていますが、それが protocol です。時事英語などでよく出てくるので protocol = 約束事 と頭にインプットしておくと理解が進むと思います。
この I had him. はとても興味がわく表現です。なぜなら字幕の「逃げたぞ」と I had him. (「私は彼を持った」が直訳」)は正反対のように見えるからです。 I had him. は「彼を持った」 = 「彼を捕まえた」というふうに取ってしまわないでしょうか。
このヒロが言った I had him. は「その男をほとんど捕まえていたのに(逃げられたじゃないか)」という意味になります。
すなわち、この had はなんと「もう少しで捕まえた」という意味があるのです。
でも違和感があります。それは、「ほとんど…した」なので I almost had him. と「ほとんど…する」の almost を入れるのが自然ではないかということです。
でも実際は had そのものに almost が含まれているので I had him. でいいのです。
では、「彼を(完全に)捕まえた」はどういうのでしょうか?
それは I got him. です。 have と get で意味が変わるなんて面白いですね。こういうのがあるので英語はやめられません。
ではどうして I had him. と I got him. ではそんな意味の違いが出てくるのでしょうか?
これはやはり、状況を表す動詞 had と動作を表す get の意味の差ではないかと思います。
I had him. は「彼を以前持っていた(支配していた)けど今はそうでない」と読み取ることができます。
それに対して、 I got him. は、「私は彼を支配した(捕まえた)」と動作を表すので“捕まえるのに成功した”となるのでは、という考えです。
少しややこしいですね。でもでも英語の“面白さ” と“深さ”がこういうところにもありますので、英語の深掘りがやめられません。
What you just did, we never signed up for.
本来は、We never signed up for what you just did. と、What you just did が後ろに置かれます。
What you just just did「お前がたった今やったこと」が前に来ているのは、強調するためです。
sign up for… は「…に申し込む」「…に参加する」なので、「我々はお前がたった今言ったことに決して申し込んでいない」ですが、「やったことに申し込んでいない」というのはイマイチわかりにくいです。
「申し込む」というのは“同意”があってのことです。ですから、sign up for... は“同意する”ととらえることができます。
つまり「あなたがたった今やったことに、我々は同意してなかった」ということが言いたいわけです。
What you just did というのは、“ヒロがマスクの男を殺そうとした”ことです。日本語字幕が「人殺しは同意していない」となっているのはそのためです。
agree on … と同じですね。「そんなの聞いてねーよ」も I never signed up for that. と訳すこともできます。
That's it.
That’s it にはいろいろな意味がありますが、ここでの That’s it. は「もうそれでおしまい」と、“それ以上のことを言う必要がない”時に用いられる That’s it. です。
すなわち、We said we’d catch the guy.「その男を捕まえると私たちは言った。それだけで、それ以上のことはない」です。
この場合、「それ以上」と言うのはマスクの男を捕まえて危害を加えたり、命を奪うことです。ですから、ヒロの仲間たちは、ヒロが“それ以上” ( = マクスの男を殺そうとしたこと)のことを、ヒロがやろうとしたことに納得がいっていないわけです。
この That’s it. を聞いた時、同じような意味を持つ “Period.” という表現もあるというのを思いつきました。
We said we'd catch the guy. Period. です。
“ピリオド” はご存知の通り、文の最後につける小さな点で、“文の終わり” を表す語です。
ですから、ある文の最後に “Period.” と言うと、That’s it. と同じように「以上!」「それだけ!」と言う意味になります。
ただ、この Period. は That’s it. よりも強く、「以上、これで終わり!」とガーンっという感じがあります。
I’m not going. Period. 「僕は行かないって。以上、おしまい」
相手にこれ以上ゴチャゴチャと言わせない “Period.” はここぞという時に使えます。