“thing” を使ったいろんな表現を集めて深掘りしました。特に “have a thing about …” の口語表現からはいろんな発見がありました。
今回は、”thing” を使った表現を深掘りしていきたいと思います。
“thing” は「こと」「もの」を表す基本的な語彙で、It’s a thing in the past.「それは過去のことだ」と、その意味の通りに使うこともあれば、
The thing is ... 「要は...です」、「言いたいのは…です」
のように意外な用法もあります。
またもう一つ、使えそうで使いにくい表現として、
It’s not my thing.「それは私の好みではない」
と、thing が「好きなもの」という意味で使われることもあります。
この It’s not my thing. はあまり見ないかもしれませんが、ネイティブの人は口語表現としてよく使います。
It’s not the thing I like.「それは私が好きなものではない」と同表現ですが、It’s not the thing I like. は、”Rock-climbing is not the thing I like. I prefer running.” のように、別のものと比較してよく使われます。
それに対して、Rock-climbing is not my thing. は他との比較は関係なく、ともかく「〇〇が好きじゃない」という場合によく用いられる表現です。
もう一つ “thing” を使った表現が次の「アナと雪の女王」の中で使われている “have a thing about ...” です。
主人公のアナが初対面の男性のプロポーズを受け入れたことに対して、クリストフが驚きを見せるシーンです。
アナはクリストフの質問に Yes. と答えただけで、姉のエルサが手袋をずっとつけたままにしていることについてその理由を述べようとします。
その理由が、”she has a thing about dirt.” です。
dirt は「ほこり、泥」です。この “thing” が少し厄介な “thing” です。
なぜなら、It’s not my thing. の「好きなもの」の “thing”とはちょっと違って、has a thing about ... の thing は、「こだわりのあるもの」という意味の “thing” だからです。
もし、この thing が「好きなもの」という意味であれば、”she has a thing about dirt.” は、「彼女はほこり(泥)が好きである」という意味になってしまいます。ほこりが好きな人はあまりお目にかけません。
ですから、「ほこりというものにこだわりがある」=「ほこりに強い感情を抱いている」
という意味になり、そこから「ほこりを毛嫌いしている」「ほこりが大嫌いだ」という意味になるのです。
もっと言えば、”has ( have ) a thing about” の about の次の語句によって(もしくは文脈やイントネーションによって)、好きにもなれば嫌いにもなるというとてもユニークな言い回しなのです。
ですから、dirt (ほこりや泥)は普通嫌われるものなので、”she has a thing about dirt.” は「彼女はほこりが嫌いだ」となり、字幕はもう一歩進んで「彼女は潔癖症だ」と意訳しています。
彼女(エルサ)がずっと手袋をつけたままにしているのを見て「潔癖症」と思ってしまうのは納得できます。ですから、「潔癖症」の字幕は素晴らしいと思います。
ただ、She has a thing about chocolate. は普通、「彼女はチョコレートに目がない」と肯定的な意味で訳されます。
もう一つ has ( have ) a thing for ... という言い方がありますが、これは「…が好きだ」という意味になります。(例) My brother has a thing for jeans.「兄はジーンズに目がない」
ではどうして about は「好き、嫌い」がどちらでも使えて、for は「好き」の意味だけなのでしょうか。
私の私見ですが、これは、about ...は「…について」という意味なので、どちらでもいいですが、for ... は「…に賛成だ」というポジティブな意味があるので「好きだ」という意味になるのだと思います。
「…が好きだ」は like が代表格ですが、この has ( have ) a thing about ( for )... も知っておくと表現の幅が広がると思います。
I have a thing for English. I hope youdo, too. See you later.
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