【第121回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
「カールじいさんの空飛ぶ家」の“深掘り”作業も今回が最終回になりました。
この映画を見ながら思ったのが、セリフのない無音のシーンの動画がとても分かりやすくできており、頭に残りやすかったということです。( 映画の内容についていくのが苦手な私にとっては助かりました…)
あとは、ともかくジワーッと襲ってくる感動が何とも言えなかったですね。「カールじいさん、長生きしてくださいね」って心から思いました。ぜひ見ていただきたい洋画の一つです。
このセリフのunleash を取り上げたいと思います。英語に慣れた方でしたらすぐに unleash = un (打ち消し) + leash (動物を紐でつなぐ) と分解できることがわかるかもしれません。
ですから unleash は「動物を紐から放つ」という意味になります。そこから「リードを外して動物を自由にする」に繋がります。そこから転じて、エネルギーや感情、能力など、抑えられていたものを解き放つことを指します。例えば、
You should unleash your potential. 「能力を最大限に引き出すべきだ」
などです。
「動物を自由にさせる」から「感情や能力などを解き放つ」へは割と簡単に推測できるのではないでしょうか。
あと、 leash は名詞では「(動物につける) リード」になります。でも、leash が「(犬の) リード」?となると、lead (リード)は和製英語?と少し頭が混乱するかもしれません。
整理すると、犬のリードは、主にアメリカでは leash で、イギリスでは lead が用いられます。ですから、犬のリードは leash でも lead でもどちらでもOKです。
もし犬を飼っておられる方が散歩をする時には、リード (lead) からリーシュ(leash) に呼び名を変えるのも面白いかもしれません…
そしてそこから unleash へと頭の中で意味を広げていく…日常でも英語を学べる場面は沢山あるのではないでしょうか。
I'm not finished with you!
ラッセルがマンツに言い放った言葉です。字幕の通り、「まだ用は済んでないぞ!」という意味です。
話が済んでないのにさっさと帰ろうとしている人などに言う「ちょっと待ってよ!」ですね。今思ったのですが、関西では「ちょちょっ、待ちいな!」ってよく言うんですが、これって関西弁ですよね…
① I want you safe.
意味は「私はあなたに無事でいて欲しい」ですが、この英語少しおかしいと思いませんか?
「(人) に… して欲しい」は、want (人) to … と “to” が必要ですよね。I want you to eat it.「あなたにそれを食べて欲しい」が正解で to がなくeat だけだと文法的に間違いです。
この文法にならうと I want you to be safe. と表現しなければならなくなりますが、後ろが動詞ではなく形容詞(ここでは safe ) の場合はどちらでもよいのです。
これはあまり知られていない文法ではないでしょうか。言わんとしてることは同じですが、I want you safe. と I want you to be safe. ではニュアンスが少し違います。
前者は「今無事であって欲しい」と緊急性があります。カールがラッセルに言った I want you safe.も今まさにマンツとの戦いに巻き込まれようとしていたのです。緊急性が大ありです。
それに対して、相手の人が、海外の危険な場所にこれから出向こうとしている場合などには今すぐの緊急性はないので、 I want you to be safe. が適切でしょう。
もっと言えば、I want you safe. は話者の感情がこもっているのです。
② How do we get pass these dogs?
私の大好きな get を使った言い回しです。past は「…を通りすぎて」なので get past … で「…を通り過ぎる」です。
このシーンでは「たくさんの犬で塞がれた通りをどうやって通り抜けることができるか」という意味になります。
この get past は物理的なものを“通り抜ける”だけでなく、精神的なものも含めていろいろと使えます。
・The donations got past 100 million yen.「寄付金は1億円を突破した」
・I can’t get past level C in the game.「ゲームのレベルC を超えるこよができない」
⇨ だんだんレベルが上がっていくゲームでレベルC が限界だという場合。
・She still can’t get past her father’s death. 「彼女はまだ父親の死を乗り越えることができない」
・A: Did you get past it? 「もう大丈夫?」
B: Yes, I’m ok. 「うん、大丈夫」
⇨ 直訳は「それを通り越した?」でそこから「それを乗り越えた?」となります。それをさらにくだいて「もう大丈夫?」です。it は直面した困難のことです。
get past ー 思った以上に使える表現だと思います。
We are on our way.
カールが、捕獲されたケヴィンを見つけた時に言ったセリフです。
on one’s way は「今向かってる」という決まり文句です。「今向かっている」というと目的地までまだ距離があるように思えますが、カールはケヴィンの目と鼻の先にいます。
ですから「今そっちに行くし」や字幕の「今助ける」がこのシーンでは適切ですね。
A: When will you get here? 「いつ来るの?」
B: I’m on my way. 「今向かってるし」
ケヴィンの赤ちゃんたちを抱き上げながらラッセルが言った言葉です。
ラッセルはケヴィンの赤ちゃんを飼うことができないので I wish I could ... 「…できたらいいのになあ」と仮定法が使われています。
「一匹飼いたい」というのは、I want to keep one. とも言えますし、実際日本では want to ... がよく使われるのではないでしょうか。
でもこの “I want to ...” は “I wish I could ...” と違って、不可能の有無は関係なく、ともかく「…したい」という強い意志を表しています。
ですから、このシーンで I want to keep one. を使うと、持って帰れないのに駄々をこねているというふうに受け取られるかもしれません。
そういう意味では、よく使われる I want to ... も状況によっては使い方に気をつける必要があるのです。
もう一つ、 wish を使った表現に I wish I could. というのがあります。直訳は「できればいいんあだけど(実際はできない)」と、何かを頼まれたりした時に断る表現です。
この表現は、「できればやりたいのですが」という前向きの姿勢、すなわち、「Yes. と言いたいんだけれど…ごめん」という気持ちが込められています。「できなくてごめんなさい」です。
「やりたいけれど、できなくてごめんなさい」を表すもう一つの英語表現が、 I’m sorry, but I can’t. です。 I wish I could. よりもこちらの方が、馴染みがあるのではないでしょうか。
でも I’m sorry, but I can’t. は、 I wish I could. と違って、謝ってはいるものの yes の要素がありません。ですから、かなりストレートな物言いな表現です。
もし、本当にやりたいけどできないという気持ちを相手に伝えたいなら、 I wish I could. の方がよりその気持ちを伝えられると思います。
I just had it here.
it は cane ( 杖 ) で、直訳は「私は杖をちょうど今ここに持っていた」です。
そこから「杖、さっきまでここにあったのに」という意味になります。「えっ、さっきまでここにあったのに(何故ないの?)」という日本語ってよく使いませんか?
私もつい先日、帰宅してテーブルの上に置いたキーがなくなっていたので「えーっ、ここにあったのに(どこいったの?)」と思わずイライラしてしまいました。 “I just had a key here.” ですね。
英語自体は難しくはありませんが、そのまま頭にインプットしてぜひ使っていきたいですね。
Where’s my smartphone? I just had it here.
などもありがちですね。
Russell, for assisting the elderly and for performing above and beyond the call of duty
少し固めの表現です。call of dutyの直訳は「義務の呼び声」ですが、職務 ( duty ) から呼び起こされる ( call ) 責任感のことを指す表現です。
また above and beyond は両方とも「…の上」ですが違いがあります。
above は「基準よりも上」ですが、beyond は「限界を超えて」という above よりもさらに上といったニュアンスがあります。
ですから、performing above and beyond the call of duty, は、「職務を超えて期待以上の働きをする」です。
この above and beyond the call of duty には“多大な努力”が感じられます。カールはラッセルの努力を最大限に褒め称えているのです。
このシーンは目頭が熱くなります。亡き奥さんの名前を取って「エリーバッジ」を与えるのも感動的です。
I think that covers everybody.
司会進行役が受賞者全員を呼び終わって言った言葉です。
cover は「覆う」ですが、そこから「含む」というイメージが出てきます。「何かを覆う」というのは「その何かを含む」ことにつながります。
ですから that covers everybody は「それがみんなを含む」という意味になり、そこから「抜けてる人は誰もいない」、「全員をカバーしている」という意味がでてきます。
もっと口語表現で言うと「それで全員ですね(誰も言い忘れてないですね)」となります。このシーンでは、進行役が受賞者を全員呼びましたね、という意味で使っています。
everybody を everything に変えて Does that cover everything? と聞くと「これで全部かな?」のように、説明などに抜けてる箇所がなかったかどうか確認するのに使えます。
I hope that covers everything. 「これで抜けてることないよね」、「これで大丈夫だよね」