【第105回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
幼少時代のカールとエリーが冒険について話しています。
rip は「破る」「剥ぎ取る」ですが、同義語に tear があります。ただ注意すべきなのは、発音です。「破る」は[ tέər ] と発音しますが、同じ綴りで「涙」は [ tíər ] と発音します。
rip と tear の違いは、 rip は力強く引き裂く感じですが、tear にはそんな力強さはなく、単に破る感じです。
ですからセリフのI ripped this right out of a library book! は「図書館の本(から必要な箇所)をビリビリ〜と破いた」です。
“ビリビリ“ という 擬態語いいと思いませんか?凄い勢いで破いている様が目に浮かんできます。擬態語のなせる技ですね。
普段何気なく使ってるいろんな擬態語も、この英語の“深掘り”作業を始めてからはとても意識するようになりました…日本語のユニークさはもちろん、その豊かさも感じています。
この rip を目にすると、昔の忘れられない海外での体験がフラッシュバックします。
学生時代に、私が尊敬する同時通訳者の松本道弘氏という方の著書の中に “I got ripped off …” という表現が出てきました。
その意味が法外な値段を請求される「ぼったくられた」という意味だということを知った時、使う機会がないだろうとわかっていたのに、なぜか「面白い表現だ!」と頭にこびりついてしまいました。それからずっと頭から離れない表現です。
でもしばらくして使う機会が訪れたのです。それは友人と一緒に卒業旅行で海外に行ったときのことです。
夜、空港からホテルまでタクシーに乗ったのですが、ホテル到着後にタクシードライバーからありえないお金を請求されたのです。初めての海外旅行で、夜。しかもタクシーの運転手が強面の人だったので仕方なく払ってしまいました。
友人とホテルに戻ってカウンターの人に思わず “We got ripped off by a taxi driver.” と言ってしまいました。
今でもその“ぼったくられた”時のことをはっきりと覚えています。「いやー、本当に怖かった〜」ですね。
でも同時に嬉しかったのが、We got ripped off …” という英語がホテルのカウンターの人に通じたことでした。その方から、”I’m sorry to hear that.” と言われた時は、「わあ、通じた!」と怖さと嬉しさが混じり合って不思議な気持ちでしたね。
この「わーっ通じた!」というのが、次の英語学習へのモチベーションになっていきました。この繰り返しが英語学習を続ける上でとても大切だと感じています。
当時は get ripped off がなぜ「ぼったくられる」という意味になるのかは考えませんでした。ただ面白いと思った英語をいっぱいインプットしては使い、またインプットしては使い、の繰り返しでした。
今は「何故そんな意味になるのか?」ばかり(!?)考えています。
rip off の off は“分離”を表すので、ripの「強く剥ぎ取る」というイメージと合わさって、「お金を剥ぎ取られて( お金が体から ) 離れていく」⇨ 「ぼったくられる」になるのだと理解しています。
面白いのが、上にあげた同じ「剥ぎ取る」でも rip と違って強制的にという意味を持たない tear を使って 「ぼったくられる」を I got torn off. で表すことはできないということです。
「ぼったくられるは get torn off ではなくて get ripped off です。この違いも面白いですね!
( It’s ) quite a sight.
意味は「いい眺めだ」ですが、カールは家の前の工事現場を見て言ったので、皮肉っているのです。なぜなら、いい眺めどころか粉塵が舞う見たくない眺めだったからです。
“quite a 〇〇” で「すごい〇〇だ」という意味で使われます。quite は「まったくの」なので、「まったく〇〇だ」でもいいです。
ともかく普通じゃない状況などに使いますが、良い場面でも悪い場面でも両方で使える便利な表現です。
sight の代わりに view を使って Quite a view. としてもいいですが、view は景色の美しさを表す語です。
それに対して sight は、目を引いて見応えがあるものを意味します。ですから、このシーンではどちらも使うことができます。
Quite a day! 「なんて日だ!」 ( 波乱に満ちた日 )
→ どこかで聞いたことありませんか?ー そうです。某コメディアンが昔ネタでよく使っていました。最近ではあまり聞かれなくなりましたが…
Quite a story! 「すげ〜話!」 ( えげつない話 )
Quite a mess! 「めっちゃ散らかってるね!」 ( グチャグチャな部屋など)
Quite a meal! 「めっちゃすごい食事!」 ( 超ご馳走 )
Quite a game! 「なんちゅうすごい試合!」
→ 昨年のアメリカ大リーグのワールドシリーズで、初戦にドジャースのフリーマンが打った満塁サヨナラホームランのような試合がまさしく Quite a game! です。
スポーツをよく見る方は “Quite a game!” と叫びながら試合を見ると、すぐにこの英語が定着すると思います。
Quite の代わりに What を使って What a day! ということもできますが、What a…! の方がより驚きを伴い、感情がこもっています。
What a dog! He’s so well-trained.「すっごい犬!よく躾されてるね」