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【第114回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。

ラッセル: Hey, we're pretty far now. Kevin's gonna miss. 「遠くまで来たよ。ケヴィンがはぐれちゃう」
カール: I think that did the trick. 「ここまで来れば」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

.① Kevin's gonna miss.
犬のダグと鳥のケヴィンをまくために、カールは急ぎ足で滝へと向かおうとした時に、ラッセルが言った言葉です。

ここでは「はぐれる」「迷子になる」という意味で使われていますが、miss にはいろんな意味があるので、「ケヴィンがはぐれてしまう」という文脈がしっかり把握できてる状態で使える miss です。

一般的には、「迷子になる」は、get lost を使って、Kevin's gonna get lost. と言うことができます。

また miss をこの意味で使う場合、Kevin is gonna miss his way. 「はぐれる」と、miss one’s way を使って表現すると誤解なく伝えることができます。

英語にもこの miss のように文脈で意味を判断する語句はありますが、そのような語句や表現は、日本語の方が圧倒的に多いのではないかと思います。

状況で意味を探ることが多ければ多いほど、その言語を母国語としない学習者にとっては、その言語を学習することが、より難しく感じるのではないでしょうか。

②  I think that did the trick. 「ここまで来れば」
do the trick は「目標を達成する」や「何かがうまくいく」という意味で使われます。

このシーンでは、カールがダグとケヴィンをまくためにともかく歩き続けて、ここまで来ればもうついて来れないだろう、と思った時に言った I think that did the trick.「これで目標は達成した( = ダグとケヴィンをまいた )」です。

直訳は「それはトリック(手品)を行った」です。すなわち、「手品をうまく演じた」と考えると「目的を達成する」に結びつきます。

でもこの do the trick は一般的に、「シンプルで効率的な解決方法」の場合に使われます。

これは手品のトリックが、簡単な仕掛けで大きな効果を出すことが多いことからきているのですが、「簡単で効果的」な do the trick を使った例文は次の通りです。

It improved the flavor. A bit of salt did the trick.「風味が増したね。ほんの少しの塩が効いたね

I was wide awake.  A cup of coffee did the trick.「目がパッチリ開いたね。一杯のコーヒーが効いたね

このシーンでも、カールはただ歩き続けるという簡単で効果的な方法で問題を解決できた(= ダグとケヴィンをまくことができた)と思ったので 、did the trick を使ったのだと思います。

同じような意味を持つ言い回しに It worked. (上手く行った)というのがあります。

私は「上手くいく」は work 一択と言ってもいいくらいに work ばかりを使っていましたが、ちょっとした簡単な方法でうまく行ったことは do the trick をもっと使っていきたいですね。



ラッセル: I don't think he wants to talk about this stuff.「パパは探検なんて興味ないよ」
カール: Try him sometime, maybe he'll surprise you.「分からんぞ。案外詳しいかも」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

Try him sometime
カールが、テントの貼り方をお父さんに聞いてみたらとラッセルに言う場面です。

Try のユニークな使い方です。try は try to ... で「…をしようとする」の意味で使われることが多いと思います。

I tried to work hard. 「私は一生懸命働こうとした」

でも、try の次に(人)がくる表現はあまりお目にかからないのではないでしょうか。

Try it. でしたら、「それをやってみて」とか「食べてみて」とすぐに理解できるのですが、Try him. は、「???」になってしまうかもしれません。

try を「…を試す」という意味でとらえると、この Try him sometime. は「またいつか、お父さんを試してみなさい」と訳せるのが分かります。

ここで「試す」ことは「テントの張り方を(お父さんに)聞く」ことです。ラッセルは誰にもテントの張り方を聞いたことがないので、カールが「じゃあお父さんに一度聞いて、知ってるかどうか試してみたら ( = try ) 」という意味合いが込められているのです。

すなわち、try は「一度チャンスをその人に与える」という意味でも使われます。

野球などで「一度あいつをピッチャーで試してみよう」とチャンスを与えるという意味で使ったりしますよね。それと同じ意味の try だと考えて下さい。

字幕の「分からんぞ」もいいですね。「分からんぞ。(お父さんに一度聞いてみたら知ってるかも)」と(   )の日本語を後ろに付け加えると分かりやすくなると思います。でも「分からんぞ」だけでもきちんと通じます。この字幕も素晴らしい日本語ですね。

Try her, and you'll see great results. 「彼女に任せてみれば。そうすればきっといい結果が出るよ。」


カール: He's gotta be home sometime. 「時々は帰るだろ」
ラッセル: I call, but Phyllis told me I bug him too much.「電話はするけどフィリスが「パパの邪魔よ」って」

「カールじいさんの空飛ぶ家」

I bug him too much. と bug が動詞で使われています。

日本語でも「バグ」というカタカナがありますが、パソコンなどが急に落ちたり、固まったりした時に「バグる」という表現を使います。ですから bug は良くない意味で使うのがわかると思います。

さらに bug は「虫」をを表す言葉ですが、虫(特にハエや蚊)が人をしつこく人を邪魔する様子から、「イライラさせる」「邪魔する」という意味のスラングとして使われるようになりました。

ですからセリフの I bug him too much. は「僕はお父さんをとてもイライラさせる」という意味で、 I annoy him too much. と置き換えることができます。

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