ディズニー映画「インサイドヘッド」のワンシーンから使える表現をいくつか掘り下げてみました。【パート44】
ジョイがライリーの中にある”性格の島“を一つずつ説明しているシーンです。
The point is, the Islands of Personality are what make Riley… Riley!「つまり性格の島がライリーを作ってるの」ですが、ここでは ”what make Riley Riley” の言い方がポイントです。
少し変な感じがする英語ですが、とてもシンプルな表現で応用もいろいろ効きます。
make A B は「AをBにさせる」なので、make Riley Riley で「ライリーをライリーにさせる」が直訳です。
どういうことかと言うと、「(ライリーの頭の中にある) いろいろな“性格の島” が、ライリーをライリーたるものにさせている」、つまり「いろいろな性格の島がライリーを作っている」となるのです。
この表現を見た時に思い出したのが、”He made me who I am.”「彼が私を今の私にしてくれた」です。英語の参考書には必ずのっていそうな英語ですね。
そこでふと思ったのが、この “He made me who I am.” を“make Riley Riley” と同じように、次のように書けないかと言うことです。
“He made me me.”
なんか変ですが、対話型AI Copilot に、このように言えるかどうか聞いてみました。
“He made me me” も言えるようです。しかもより簡潔でインフォーマルな表現のようです。
それに対して、”He made me who I am” はフォーマルな表現のようです。でも口に出してみれば、確かに後者は固い英語だとなんとなくわかります。
もし、試験で He made me me. と生徒が書いたら正解になるだろうか、と言う疑問が湧き上がってきました。見た目が変な感じの英語なのでバツになる可能性もありそうです…。(見た目で決めてはいけませんが)
“Modesty is what makes Japanese, Japanese.”「謙遜することが、日本人を日本人たらしめている」
Many temples and shrines are what make Kyoto, Kyoto.「数多くの神社仏閣が京都を京都たらしめている (= 京都らしさを作っている)」
などと言うこともできます。
「京都らしさを作っている」もいい日本語だと思いませんか?
この make A A「A を A たらしめる」は応用が効くユニークな言い回しなので機会があればどんどん使っていきたいですね。
ライリーが冷たい飲み物を飲んで悲鳴をあげるシーンです。
Brain freeze!「キーン」ー これだけですが、メチャクチャ気に入った表現です!
なぜなら、字幕の「キーン」が最高だからです。冷たいものを飲んだ時に脳に走るあの痛みです。多分誰でも一度は経験したことがあると思います。
“brain freeze” は、直訳は「脳の凍結」( freeze は普通動詞で使われることが多いですが、ここでは名詞です)ですが、誰でもピンとくる表現は「キーン」でしょう。
もし字幕で「脳が凍結した!」と書くと、もうそのシーンが台無しになってしまうのではと思ってしまいます。
字幕翻訳者って、場面に合わせた語彙がものすごく豊富なんだろなあ、と思ってしまいます。
A: What’s up?「どうしたんだ?」
B: I got a brain freeze...「頭がキーンとなってる」
冷たいものを食べて頭がキーンとなったら I got a brain freeze. を使いましょう。
① We’re out!「出番終了」
We’re out! は何かを終えて出て行く時に使える表現です。
”We’ll go out.” と直訳でもいいですが、We’re out. の方が簡潔でより口語的です。この文の短さが魅力です。
またこの表現は、次のように試合などで負けた時にも使えます。
“We lost the match. We’re out.”「試合に負けたので、これで終わりだ(=もう試合ができない)」
② That’s what I’m talking about!
直訳は「それが私が話していることだ」で、「それ」に賛成している時に使います。
ここでは、That は we’re out.「出番終了」です。自分で言って自分で納得しているのです(笑)
意味はいろいろ考えられますが、ここでは「そういうこと!」(=出番終了ということ)がピッタリでしょう。
でも普通は相手の言ったことに対して、少し興奮気味に賛成する場合に使われます。
A: Let’s go to that new sushi place.「あの新しくできた寿司屋に行こうか」
B: Yes! That’s what I’m talking about!「よっしゃあ、それそれ!」
「それそれ」も興奮気味に言いますよね。
unqualified success. は字幕の通り「文句なしの大成功」です。でも、unqualified success ってあまり聞かないのではないでしょうか。
“unqualified” は、un (打ち消し) + qualified (限定された) =「限定されていない」
と考えられます。「限定がない」と言うのは「完全な」「無条件の」という意味につながります。
ですから unqualified success は「申し分のない大成功」とという意味で、何かを強める形容詞なのです。
great success でもいいですが、これ以上ない大成功を言い表したい時は unqualified success がピッタリです。
この unqulified success の字幕「文句なしの大成功」も“文句なし”にいいですね。確かに日本語としてもよく使います。
なお、qualified は「資格のある」と言う意味が一般的ですが、資格を持っている人が“その資格を生かした限定的な”仕事に従事できるので、qualified には「限定的な」という意味も出てくるのです。
少し難しめの語彙も接頭語などを見つけて分解すると、案外その意味がわかってくることがあります。これも英語の面白いところですね。