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【第147回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
EDNA MODE: I started with the baby. 「まずはベビーから」
HELEN: Started? 「“まず”って?」
EDNA MODE: Shh! Darling! Shh! I cut it a little roomy for the free movement. The fabric is comfortable for sensitive skin, and can also withstand a temperature of over 1000 degrees. 「ゆったりと動きやすく、デリケートな肌に優しい素材。そして500℃の高熱にも耐えられるのよ」
エドナが作った赤ちゃんの服をヘレンに説明しています。
I cut it a little roomy for the free movement.
日本語字幕は「ゆったりと動きやすく」です。it は赤ん坊 Jackの新しい服です。
ポイントになる語は roomy です。roomy は「広々とした」という意味がありますが、それはroom には「空間、余裕」という意味があるので roomy は「空間のある」という意味になります。
空間があるというのは、 I cut it a little roomy … でいうと、「私はそれ(赤ちゃんの服)を少し“空間があるように”切った」となります。
そして、“空間があるように切る”というのは、“身体と服の間に余裕を持たせて切る”、ということにつながります。
バッグの中が“広々として”、物がたっぷり入る時にも roomy が使えます。
I like this bag because it’s so roomy—I can fit my laptop, charger, and even a change of clothes in it.「このバッグ気に入ってます。中が広々としていて、ノートパソコンや充電器、それに着替えまで入れられるので」
HELEN: What on Earth do you think the baby will be doing?! 「なぜ赤ん坊に必要なの?」
EDNA MODE: Well, I’m sure I don’t know, darling. Luck favors the prepared. I didn’t know the baby’s powers, so I covered the basics. 「わからないわ。”備えあれば憂いなし“よ。赤ん坊のパワーは未知だわ」
① I’m sure I don’t know, darling.
字幕は「わからなわ」 で、I don’t know. と一緒ですが、I’m sure I don’t know. はあまり聞いたことがないのではないでしょうか。
直訳は「私は自分が知らないことを確信している」で、I don’t know. を強調した表現です。
「さっぱりわからない」や「見当もつかない」といった日本語でしょうか。
A: Why did he tell a lie? 「どうして彼嘘ついたの?」
B: I’m sure I don’t know. 「さっぱりわからへんわ」
I’m sure I don’t know. ー 案外使えそうですね!
② Luck favors the prepared.「備えあれば憂いなし」
favor は動詞で「…に味方する」「…を好む」という意味があります。ですから Luck favors the prepared. は「準備してる人に運は味方する」という意味になります。
より意訳した口語表現を使うと「運も実力のうち」ですね。字幕の「備えあれば憂いなし」もいいですが、この「運も実力のうち」っていう言い回し、ストンと胸におさまる日本語ではないでしょうか。個人的にお気に入りですね。
EDNA MODE: Your boy’s suit I designed to withstand enormous friction without heating up or wearing out. A useful feature. Your daughter’s suit was tricky. But I finally created a sturdy material that will disappear completely as she does. Your suit can stretch as far as you can, without injuring yourself, and still retain its shape. Virtually indestructible...yet it breathes like Egyptian cotton. As an extra feature, each suit contains a homing device,giving you the precise global location of the wearer at the touch of a button. 「坊やのはどんなに速く走っても…摩擦熱もないし、擦り切れないわ。娘さんのは苦労したわ。本人と一緒に消える丈夫な素材を開発したの。あなたのスーツはいくらでも伸びるし…すぐ元の形に戻るわ。すごく丈夫だけど…エジプト綿のような通気性。どのスーパースーツにも…発信機をつけたからボタン1つで現在地が分かる」
エドナがボブ一家の新たな服について話しています。
① Your daughter’s suit was tricky.
tricky はtricky movement 「トリッキーな動き」のように“予想だにしない”という意味でよく使われます。
でもここでは服(スーツ)がトリッキーだと言っているのです。日本語ではあまり言わないと思うのですが、これは“娘さんのスーツを作るのが難しかった”と言う意味です。
言い換えると challenging や difficult と同義語です。ただ tricky には“ひねりがある”難しさがあり、厄介さが付きまといます。
ここでもエドナは、ヘレンの娘のために本人と一緒に消えるという丈夫なスーツを作りました。でも、本人と一緒に消えてしまうスーツの作成なんて、いかに厄介であったか推測できます。
まさしく tricky ですね。この意味での tricky もいろいろと使えそうです。
② Virtually indestructible...yet it breathes like Egyptian cotton.
(1) Virtually indestructible
indestructible = in (打ち消し)+ destruct (自爆する)+ ible (可能な) = 「自爆できない」です。“自爆できないスーツ”とは“壊れなくて丈夫な”スーツのことです。
また virtually は virtual の副詞で「事実上」や「ほとんど」という意味があります。
“バーチャルリアリティ”( virtual reality ) というのは、「コンピューターで創られた仮想的な空間をあたかも現実であるかのように疑似体験できる仕組み」のことです。すなわち、“ほとんど現実と同じ“ですね。
ですから virtually indestructible で「ほとんど壊れない」という意味になります。ここではスーツのことを言っているので、「ほぼ破れない」や「とても頑丈な」とも訳せます。
(2) yet it breathes like Egyptian cotton
breathe は「呼吸をする」なので、「でもそれ(頑丈なスーツ)はエジプト綿のように呼吸をする」が直訳です。
“呼吸をする”というのは、息が伝わってくるような綿、すなわち「通気性の良い綿」のことです。
“呼吸する”が“通気性の良い”に結びつくのは案外簡単ですが、意外性もあって面白いです。
③ each suit contains a homing device, giving you the precise global location of the wearer at the touch of a button.
“homing device” とは、何かを追跡するための機器や装置(=追尾装置)のことですが、この homing device の説明(定義)が直後の giving you … a button (ボタン1つで現在地が分かる) です。
日本語でもそうですが、英語でも少し分かりにくい語句や人名などの固有名詞の次に、その説明や定義がくる場合もよくあります。
ですから、難しそうな語句に出会ったら次を一度見てください。もしその語句の説明があればラッキーかもしれません。