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【第145回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
Helen: Beg? Uh, no. I’m calling about suit. Ab-about Bob’s suit! I’m calling about Bob’s suit! 「そうじゃなくて、電話したのは…彼のスーパースーツの件よ」
Edna Mode: You come in one hour, darling. I insist, okay? Okay. Goodbye. 「1時間で来てね。絶対よ。じゃあね」
I insist, okay?
これは以前に紹介したかも知れませんが、「絶対だよ、わかった?」と“絶対譲れない”という意味の英語です。
直訳は「私は主張するけどいい?」です。なんとなくそれでも言いたいことは伝わってきますね…
「私の言うとおりにしてね?」
「お願いだから、いい?」
「いいから、いいから。わかった?」
などいろんな日本語が考えられます。
A: “Let me pay for this.”「ここは私に払わせて」
B: “No, you don’t have to.” 「ダメだよ」
A: “I insist, okay?” 「いいから、いいから。わかった?」
反対に I don’t insist. と否定形にすると「無理にとはいわないけど」と相手を思いやる英語になります。
A: “Do you want me to come to the party?”
「僕もパーティに来て欲しいのかい?」
B: “If you want to, but it’s up to you — I don’t insist.” 「来たければね。でも無理にとは言わないよ」
A: “Alright, thanks.” 「そうかい。ありがとう」
Syndrome: Too much for Mr. lncredible!! Whoa, Whoa! Whoa! It’s finally ready! 「Mr.インクレディブルも太刀打ちできない!やった、ついに完成だ!」
最強とも言えるロボットを完成させたシンドロームが言い放った一言。
Too much for Mr. lncredible!!
直訳は「…にとってあまりにも多すぎる」です。そこから 「…には手に負えない」や「…には耐えられない」という意味になります。
日本語字幕の「…に太刀打ちできない」もいいですね。
このシーンでは、Mr.インクレディブルが最強ロボットに歯が立たないという文脈がはっきりしてるので、Too much for Mr. lncredible!! と表現していますが、通常は次のように主語を入れる場合が多いです。
All this homework is too much for the students. 「この宿題は生徒たちには多すぎる」
The pressure of the exam was too much for her. 「試験のプレッシャーは彼女には重すぎた」
The breakup was too much for him. 「その別れは彼には辛すぎた」
いくらでも応用が効く素晴らしい表現 “too much for …” です。大いに活用したいですね。
SYNDROME: You know, I went through quite a few supers to get it worthy to fight you, but man, it wasn’t good enough!! After you trashed the last one, I had to make some major modifications. Sure it was difficult, but you are worth it. I mean, after all... i am your biggest fan. 「お前と戦うために大勢のヒーローで試したが、それでもまだパワー不足だった。この前のよりかなり改良したんだ。苦労した甲斐があるよ。何たってあんたの…世界一のファンだ」
MR. INCREDIBLE: Buddy? 「バディー?」
SYNDROME: My name is not......BUDDY!! And it’s not lncrediBoy either! That ship has sailed. All I wanted was to help you. I only wanted to help! And what did you say to me!? 「インクレディボーイもとっくにやめたよ。手を貸そうとしたらあんたは何て言った?」
MR. INCREDIBLE: Fly home, Buddy. I work alone. 「飛んで帰れ。〇〇〇」
SYNDROME: It tore me apart. But I learned an important lesson. You can’t count on anyone. Especially your heroes. 「俺の心は深く傷ついて…誰も信用できなくなった。特にヒーローをな」
MR. INCREDIBLE: I was wrong to treat you that way....I’m sorry! 「悪いことをした。すまない」
① Sure it was difficult, but you are worth it.
直訳は「確かに大変だったけど、君はその価値がある」です。
もう少しわかりやすい日本語で言うと「確かに大変だったけど、君のためならそれだけの価値がある」です。
「〇〇のためならそれだけの価値がある」を “〇〇 is (are) worth it”. とスッと出てくるためには何度も口に出しておく必要があると思います。
Sure it took a lot of time, but it was worth it. 「確かに時間がかかったけど、それだけの価値があったよ。」
Sure that smart watch is very expensive, but it’s worth it. 「確かにそのスマートウォッチは高価だけれど、それだけの価値がある」
これもいろいろ応用が効く表現ですね。
② That ship has sailed.
この表現はユニークです。直訳は「その船は出航した」です。
船が出航したというのは、もうそこに船がいないということなので、「もう終わってしまったこと」や「時すでに遅し」と言った比喩的な意味で使います。
このシンドロームが言ったAnd it’s not lncrediBoy either! That ship has sailed. も、Mr.インクレディブルの相棒になろうと必死だったインクレディボーイはもうここにはいない(=もう終わってしまった)という意味に取れます。
相棒関係を築こうとしたそのチャンスがすでに過ぎ去り、もう戻れないことを表現しています。それがシンドローム(元インクレディボーイ)の怒りに火をつけたのです。
A: I was thinking about asking Sarah out. 「サラをデートに誘おうと思っているんだ」
B: Uh… you know she just got engaged, right? 「ええと...彼女、婚約したばかりでしょ?」
A: Wait, Seriously? 「ちょっと待って、マジで?」
B: Yeah, seriously. 「ええ、マジよ」
A: Wow… I guess that ship has sailed. 「時すでに遅しか…」
③ I work alone.
一緒に戦いたいと志願してきたバディーをMr.インクレディブルがあしらいます。
「俺は1人でやる」とバディとは組まないことを宣言しました。こんな簡単な表現を取り上げたのは、その日本語字幕です。「〇〇だ」で、漢字2語ですが何だと思われますか?それは、
「邪魔だ」
です。
「1人でやる」 = 「邪魔だ」 は状況によっては使えないかもしれませんが、素晴らしい日本語の変換だと思います。
逆に「邪魔だ」を I work alone. に英訳するのも難しいのではないでしょうか。
④ You can’t count on anyone.
count on … で「…を頼る」という意味があるので、「(あなたは)誰も頼ることができない」という表現です。
count は動詞で「数える、計算する」ですが、日本語でも「あいつは計算できる人だ」などと“当てにする”という意味で使うことがありますが、count on … がまさしくそれにあたります。
You can count on him. 「彼は当てにできるよ」
日本語”計算する” と英語 “count”の見事なマッチング ー こういう語彙に出会うとなぜか嬉しくなってしまいます。
⑤ I was wrong to treat you that way.
I was wrong. だけでも「僕が悪かった」という意味でよく使いますが、ポイントは I was wrong to … と“to” を伴って、「…したのは間違いだった」という意味になることです。
ですから、 I was wrong to treat you that way. は、「君をあんな風に扱ったのは悪かった」や「あんな態度をとって悪かった」という意味になります。
“to” を入れるだけなので簡単なのですが、案外馴染みのない表現ではないでしょうか。
I was wrong to lie to you. 「嘘をついて悪かった」
I was wrong to ignore your feelings.「君の気持ちを無視したのは間違いだった」
⑥ I’m sorry.!
この I’m sorry! を取り上げたのは英語そのものではなく、内容に関して“納得した”からです。
Mr.インクレディブルが最後に “l’m sorry.” と謝った事に少しホッとしました。
シンドロームはMr.インクレディブルを亡きものにしようとする悪役に間違いありません。
でも、2人が出会った時のMr.インクレディブルのシンドロームに対する態度があまりにも酷かったので、それが引き金になってシンドロームはMr.インクレディブルを憎むようになったのです。
ですからMr.インクレディブルにも非はあったと思ったので、彼が謝った時は少し胸に支えていたものがとれました…