【第87回】ディズニー映画「ベイマックス」の色々なシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
ヒロが大学に行くことを決めたことに大喜びするキャスおばさんです。
① whip up
whip up の類義語は cook ですが、whip up は同じ「料理する」でも「(時間をかけずに)サッと作る」といったニュアンスがある表現です。
whip はカタカナでは「ホイップ」です。ホイップクリームは泡立て器で混ぜて泡立てたクリームですが、この“素早く混ぜる“という動作から whip up の「さっと作る」というニュアンスが生まれてくるのは理解しやすいのではないでしょうか。
日本語でも「晩御飯はサッと作ろうかな」などと言いたい時、I’ll cook supper quickly tonight. でもいいですが、I’ll whip up supper tonight. という表現を覚えていれば、英語の表現力が上がるでしょう。
「サッと」というのは日本語特有の擬態語ですが、この英語の“深掘り”作業をやって行く中で、日本語の擬態語の豊かさと汎用性の広さをひしひしと感じてしまいます。
もっともっといろんな擬態語を使って、よりしっくりくる日本語を考えていけたら素晴らしいですね。
② numb
「無感覚の」や「麻痺した」という意味です。(ちなみに発音は ˈnʌm [ ナム ] で最後の “b” は読みません)
ですから、セリフのwith the hot sauce that makes our faces numb は「顔を麻痺させる(=しびれさせる)辛いホットソースをかけた(手羽先)」という意味になります。
with the hot sauce that ... の that は関係詞で、後ろの makes our faces numb が the hot sauce にかかっていきます。
ただ、文法としてはそうなのですが、後ろから訳していくのではなく、前から意味をとっていく方が言葉としては自然だと思います。
前から少し意訳すると、「その辛いソースで、顔は痺れちゃうわよ」です。
英語のネイティブは前から当然意味をとっているので、それに合わせることも大切だと考えるからです。
激辛を競って食べるテレビ番組で、辛すぎて唇が震えているシーンがありますが、まさに The hot sauce was so spicy that it made my mouth numb. です。
いいかえると、The hot sauce was so spicy that it made my mouth lose sensation. です。 lose sensation で「感覚を失う」です。
足が痺れた時には、My legs went numb. です。 My legs fell asleep. 「足は眠りに落ちた」というユニークな表現も「足が痺れた」です。
無感覚は numb を覚えておきましょう。
let out some air
let out ... で 「…を外に出す」です。ですから、let out some air は、空気を外に出すので「空気を抜く」になります。
let out ... は、外に出す(出てくる)ものに関して、たくさん応用が効く表現です。
She let out a scream when he saw a spider.「蜘蛛を見た時、彼女は叫んだ」
She screamed … でもいいですが、let out … は「内から外に叫び声が出てきた」というのを強調するため「思わず叫んでしまった」というニュアンスがあります。
Don’t let out your anger so easily.「すぐに怒っちゃダメ」
He let out a secret.「秘密をバラした」
Due to heavy rain, the teachers let out the students early.「大雨のため生徒を早めに帰宅させた」
全て「内から外」への動きがあります。let out のような表現を使えるようになると、会話の幅が広がること間違いありません。
Keep it down.
「音は抑えてよ」と相手に静かにしてもらう時に使います。
Can you keep it down? I’m trying to sleep.”「静かにしてもらえる?寝るんだから」
これの類似表現に Be quiet. がありますが、これは完全に音を出さないようにして欲しい時に使います。
それに対して keep it down は音を小さくしてほしい時に使います。down があるので推測しやすいですね。
「音を下に (down) した状態に保つ (keep)」が直訳です。ですから keep it down は be quiet よりもソフトな表現です。
でも be quiet よりもさらに静けさを求める表現が Be silent. です。物音ひとつない状況を作り出す言い回しです。
どちらかといえば Be quiet. が一番よく使われると思いますが、状況によっては他の2つも頭に置いておくと英語の表現力が上がっていくと思います。