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分かりづらい live out を掘り下げていくと色々なことが分かり、ますます英語の面白さに気づきました。

簡単な英語だけれども意味がわかりにくい表現ってありますが、今回取り上げる live out ... もその一つではないでしょうか。

その理由は live は I live in Kyoto. のように「〜に住む」のように使う場合が多く、out と live との組み合わせに違和感を感じるためではないでしょうか。

この live out ... ですが、映画「リメンバーミー」で、一刻も早く生者の世界へ帰りたいヘクターがミゲルに怒りを表すシーンで使われていたので紹介します。

ヘクター: Look at me. I'm being forgotten, Miguel.  I don't even know if I'm gonna last the night.  I'm not gonna miss my one chance to cross that bridge because... you want to live out some stupid musical fantasy.
( 俺は消えかけてる。明日をも知れぬ身だ。今夜のワンチャンスをお前のバカな夢でつぶせと? )

ミゲル: It's not stupid! (バカじゃない)

映画「リメンバーミー」

you want to live out some stupid musical fantasy. の箇所ですが、字幕では live out が訳されていません。

live out ... の意味を掴むには、live と out をそれぞれ分けて考えることが必要になります。

まず live ですが、他動詞で「...を実行する、経験する」と言う意味があります。

次に out ですが、「内から外」へと動くことから動作が「最後まで」「完全に」というイメージを生み出します。(例) I am tired out. は「最後まで(完全に) 疲れている」=「疲れ切っている」という意味になります。

すなわち live out は「完全に実行した」となり、そこから「成し遂げる」「実現させる」という意味が出てきます。

ですから、live out を含んだヘクターのセリフの部分は、「お前は馬鹿げた音楽の夢を実現させたい」となります。

別の表現で言い換えると、

You want to realize some stupid musical fantasy.

realize は「実現させる」で、live out と同義語です。ただ少しニュアンスの違いがあります。

realize: 夢などの達成や成就した瞬間に焦点をあてる。

live out: 実現した夢などをそれ以降、継続的に生かしていくことに焦点を当てる。

live out に「継続性」があるのは、live に「経験する、実行する」という意味があることから推測できると思います。

さらに live  の名詞は life (生活)なので、「生活する中で...する」からも「継続性」が読み取れます。

He realized his dream. は He made his dream come true. とも言えますが、ほとんどの場合、live out ではなく、realize か make one’s dream come true を使うと思います。

その理由を考えたのですが、夢は実現するものととらえて、それ以降の「継続」はあまり考えないからではないでしょうか。

「(夢などを)実現させる」はrealize one’s dream、make one’s dream come true に live out one’s dream も加えると、語彙の幅が広がります。



live out とは関係ないのですが、セリフの最初の “Look at me. I'm being forgotten, Miguel” ( 俺は消えかけてる ) の表現にも少し触れたいと思います。

これは I’m forgotten. の受け身の応用です。being が入ると「今〜されている」で一時的に行われており、そのうち終わるといったニュアンスを含みます。

ですから「オレは(一時的に)忘れられているのであってこれからもずっと(忘れられるん)じゃない」というヘクターの叫びのような気がしてなりません。「誰からも忘れ去られる = 第二の死 = 永遠の死」になってしまうからです。

英語の授業で受動態を勉強する時、この「一時的な受け身」が出てきて思わず「難しい!」と唸ってしまった経験はないでしょうか?

教科書の例文は無味乾燥のものが多いですが、洋画のセリフならもっと興味を持って覚えられるのではないでしょうか。

I hope to see you soon.  Thanks..

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