【第117回】ディズニー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
“the cone of shame”
「恥ずかしさのコーン(円錐形のもの)」が直訳ですが、何のことかわからないですね。これは一般的に「エリザベスカラー」と呼ばれる犬がつけるものです。( 下の画像参照 )
犬が怪我などした時に傷口を舐めないように首に装着する襟巻ですね。一度はこの cone of shame 見たことがあるのではないでしょうか。
shame は「恥辱・恥ずかしさ」なので、
アルファ: Put him in "the cone of shame".「その犬に恥辱のコーンをつけろ」
ダグ: I do not like "the cone of shame”. 「コーンを装着するのが恥ずかしい」
という意味になります。(アルファもダグも犬です)
この表現は、特に動物が不快に感じたり、少し恥ずかしそうに見える様子を指します。でも、よく考えると犬は多分恥ずかしいとは思っていないのに、犬を擬人化しているところがユニークです。
日本ではそんな発想はあまりしないのではないでしょうか。
“擬人化”をして、次のようにユーモラスに人間にも使うことができます。
A: I spilled coffee all over myself. 「コーヒー全部こぼしちゃった」
B: Time to put on the cone of shame!「それは“恥ずかしいコーン”をつける時だね!」
うまく日本語にできませんが、 “恥ずかしの刑“のようなイメージです。cone of shame の意味がわかっていれば「なるほど!」と理解できると思います。
探検家マンツがカールたちに剥製らしきものを紹介しています。
① The Arseloterium「アルソナルテリウム」
これは架空の生き物のようですが、これを取り上げたのは対話型AI の素晴らしさを実感したからです。
このThe Arseloteriumを英語、日本語の両方でGoogle 検索してもヒットしませんでした。( 辞書にも載っていません )なぜならこの「カールじいさんの空飛ぶ家」の中にだけ出てくる架空の生き物だからです。
でも ChatGPT で調べると
「アルソナルテリウム」についての情報は正確には見つかりませんでしたが、
と、“もしかすると”という条件付きですが、架空の生き物だと教えてくれました。しかも “Up ( 「カールじいさんの空飛ぶ家」の英語名 )に登場する”とまで説明がありました。
世の中に存在する無数の映画の中から “The Arseloterium” という「カールじいさんの空飛ぶ家」にだけ使われている語を一瞬にして拾い上げ、解説してくれる対話型 AI にはホント恐れ入ってしまいます…
② I used my shaving kit to bring it down.
bring … down には「…を倒す、打ちのめす」という意味があります。
その意味になる理由は 、bring … down = 「…を下へ持ってくる」 = 「下げる」 = 「意気消沈させる」 = 「…を倒す」 です。
「…を下にする」から“ 相手を自分より下げて、倒すというイメージ“ は湧きやすいのではないかと思います。
The team worked hard to bring down their rivals. 「チームはライバルを倒すために頑張った。」
単に「下に持ってくる」というイメージで使う場合は、Can you bring the vase down from the shelf? 「棚から(高いところにある) 花瓶を取ってくれませんか?」などと表します。
「気持ちを下げる(落ち込ませる)」という意味でも使えます。
His words really brought her down.「彼の言葉は彼女をとても落ち込ませた」
「落ち込ませる」は depress がよく使われると思うのですが、depress は bring ... down よりも強い意味を持つ言葉なので、ちょっとしたことでしたら bring ... down の方がより自然に聞こえます。
「下へもたらす」というイメージの bring … down がいろんな“下” に応用できるのは面白いですね。
① Oh, you recognize it?
recognize は「認識する」ですが、「以前見たもの(人)が今わかる」というイメージがあります。
この英語に出会うと、昔久しぶりに(25年ぶり!)出会ったアメリカ人の方を思い出します。向こうから私の方に近づき Hi, are you 〇〇? と聞いた後に Do you recognize me? と聞いてきました。
私も100%確かではなかったのですが、25年前の面影はあったので Yes, of course, I recognize you. と答えました。
Do you recognize me? は「私のことわかる?」で、以前知り合いだったので、私にそう聞いてきたのです。recognize に“出会う”とそのアメリカ人のことを思い出します…
ちなみに know も「知っている」ですがrecognize と違って以前知り合いだったかどうかは関係なく知識として「知っている」です。
② He and I fell into a habit of playing Gin Rummy in the evenings.
fall into a habit of …ing で「…という習慣が身につく」という意味になります。
この表現を取り上げたのは、同種類の develop ( make ) a habit of … という表現の方が馴染みがあったからです。
fall into … を使った表現もdevelop や make と同じような意味であるのは分かるのですが、やはりそのニュアンスの違いに興味が湧きました。
fall into… は「…に落ちる」なのでより能動的な意味の develop や make と違って“自然と習慣が身についていく”という意味があるのではという推測はできました。そこでChatGPT に聞いてみました。
ChatGPTが違いをまとめてくれた部分です。やはり、「fall into a habit of… は自然と ( naturally ) 起こり、make a habit of … はより意図的に ( intentionally ) 起こる」ということでした。
ですから、このマンツが言った He and I fell into a habit of playing Gin Rummy in the evenings. も夕方になるとルーズベルト (He)と2人でカードゲームに自然とふけるようになったのでしょう。
ギャンブルは時に麻薬性があるので fall into … がより適切な場合もあると思います。