ディズニー映画「インサイドヘッド」のワンシーンから使える表現をいくつか掘り下げてみました。【パート69】
① I’d tell you, but you’re too dumb to understand.「言っても理解できないわ」
ムカムカがイカリを馬鹿扱いする場面です。
I’d tell you, but ....「言いたいんだけど…(やっぱり)無理だ」という表現です。
相手に伝えたいけど、何かの理由で言えないときに使います。
I’d = I would の仮定法の一種で、「もし他の条件なら言うのですが、…」とI’ll = I will よりも柔らかい表現です。「言いたいのは山々なんですが…」みたいな感じです。
この I’d ... 少しわかりにくいかもしれませんので例を挙げます。
I’d tell you, but it’s a secret. = I’d tell you【 if it were not a secret, 】but it is a secret, so I won’t tell you.「もしそれが秘密でなければ言うんだけど、それ秘密だし、言わない」
上の【 】が省略されていると考えてください。
セリフの “I’d tell you, but you’re too dumb to understand.” も「言いたいんだけど、あなたは馬鹿すぎて( 私の言うことを )理解できないから言えない」です。dumb は stupid (バカな)と同義語です。
I’d tell you, but that might hurt you...「教えたいけど、あなたを傷つけちゃうかも。だからやめとく」
こんなこと言われたら夜寝れないかもしれません。
② I’ll just have to dumb it down to your level.「話のレベル下げたげる」
ここでの dumb は動詞として使われており、dumb ... down で「...をもっと簡単にする」という意味があります。これは、simplify「単純化する」と同義語です。
でもsimplify と dumb ... down は、ニュアンスが全然違うので、使用には気をつけなければなりません。
simplify は単純に「簡単にする」とニュートラルな語ですが、dumb ... down は「元々の意味が失われる程、簡潔にする」というニュアンスがあります。
すなわち、相手が理解力に乏しいので、もっと簡単にするというニュアンスはがあるため、相手を馬鹿にしたように受け取られることがあります。
「バカでもわかるようにする」ですね。ここでは、ムカムカはイカリをわざと怒らせるためにこの dumb it down を使ったのです。
現実には、使える場面はかなり制限されますが、リスニング強化には知っておかなければならないと思います。
“He had to dumb down the explanation so that everyone could understand it.”「彼はみんなが理解できるように、説明をより簡単にしなければならなかった」
③ it’s up to you.「カナシミ、出番よ」
It’s up to you. は「君次第だよ」と It depends on you. の意味で使われる場合が多いと思います。
でももう一つ、「君に任せるよ」と I’ll leave it to you. と同じ意味で使われることもあります。
「君次第」と「君に任せる」は、近いものもあるので分かりやすいのではと思います。字幕の「出番よ」もいいですね。
I’m liking this new view.
like が進行形で使われている稀な英語表現です。
ここでは、新しい眺めを目にしたビビリが言った一言です。
学校では、状態を表す動詞( like, love, belong など)は基本的に、進行形にはならないと学習したと思います。
それはその通りで、I like this bag. のように like を使った表現は基本的に進行形では用いません。
でも言葉なので例外があります。それは「一時的な感情や気持ちの変化を強調する時」です。
例えば、このセリフ I’m liking this new view. は、ビビリが外の変わった新たな景色を見て”心に変化が起こり、好きという感情が急に表れてきた“ のです。
この文のイメージは「この新しい景色が好きになり出している」ですね。
それに対して、I like this view. は、一時的ではなく「(ずっと)この景色が好き」です。
別の例は、I’m liking playing the guitar. です。”今ギターを弾き始めてそれを楽しんでいる“ という感情の変化を表しています。
それに対して、 I like playing the guitar. は「ギターを弾くのが好き」という一般的な好みや習慣を表しています。
I’m living in Kyoto. 「( 一時的に ) 私は京都に住んでいる」のような表現は見かけますが、 “I’m liking …” はほとんど見かけないので少し変な感じがしてしまうのではないでしょうか。
それと同時に、live については、例外としての進行形が説明されている参考書等はありますが、like は進行形としての例はほとんど載っていないと思います。
そのため、「like の進行形はない」と結論づける学習者が多いのでは、と懸念してしまいます。
同時に、 I’m liking this new view.と学校で書くと間違いとして扱われてしまうかもしれません。
ですから、このセリフのような進行形のlike とその意味をきちんと理解して行く必要があるのではないかと思います。