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【第142回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
Bob: E, I just need a patch job. 「穴を縫ってくれ」
E: Hmm. This is megamesh. Outmoded, but very sturdy. And you’ve torn right through it! What have you been doing, Robert? Moonlighting hero work? 「メガメッシュはかなり丈夫な布なのに…破っちゃったの?一体何をしてるの?夜勤のヒーロー活動?」
Bob: Must have happened a long time ago. 「昔のことだよ」
E: I see. This is a hobo suit, darling, you can’t be seen in this! I won’t allow it! Fifteen years ago, maybe, but now? 「そう?こんな姿じゃみっともないわ。15年前ならともかく」
Bob: What do you mean? You designed it. 「君のデザインだ」
E: I never look back, darling. It distracts from the now. You need a new suit. That much is certain. 「過去は振り返らないの。新調すればいいのに」
① I just need a patch job.
patchwork (パッチワーク)と言う言葉がありますが、異なる布や素材を縫い合わせて作る技法のことです。
そこから patch job というのは、破れた部分を覆うために布などを当てて一時的に修復する仕事を指します。
簡潔にいうと「応急処置」です。セリフの I just need a patch job. も「(破れた服の)応急処置だけ必要なんだ」です。
この patch job は比喩的に「一時的な解決策」と言う意味でも使えます。
His solution was just a patch job; it didn’t really fix the problem. 「彼の解決策は一時的なものであり、問題を本当に解決したわけではなかった」
② Moonlighting hero work?
moonlight は名詞で「月光」ですが、動詞で「副業をする」と言う意味があります。「月光」と「副業」を結びつけるものが何か推測できるでしょうか?
それは、「昼間の主な仕事がある人が夜間、つまり「月の光の下」で別の仕事(= 副業)をしている様子」です。
“夜”が関わっているので、日本語字幕の「夜勤のヒーロー活動?」は「なるほど!」ですね。
ただ「副業」と言えば side job が思い浮かぶのではないでしょうか。カタカナでも“サイドジョブ”と言いますね。
moonlighting と side job ー どう違うのか、調べる前からワクワクです…
ChatGPT で調べると、
Moonlighting: Working a second job, often at night, and sometimes secretly.
Side job: Any additional job besides your main one, done openly or casually.
と、moonlight は「夜こっそりとやる副業」に対して、side job は「オープンにやる普通の副業」であるとのことです。
moonlight ー 夜にこっそりとやる“副業”という雰囲気があるのはなんとなく伝わってきますね。
He’s a teacher during the day and moonlights as a bartender at night. 「彼は昼間は教師をしていて、夜はバーテンダーとして副業をしています」
この”副業“、日本では公務員の教師は副業が禁止されていますが、アメリカなどでは副業も認められているため、 教師であっても moonlight してる人も少なくないようです。
③ you can’t be seen in this!
「あなたはこれで見られることができない」と直訳しても意味がわかりません。
よく思うのは、こう言った簡単な語句ばかりが使われている英文は、ハッキリとした意味が掴みにくいことがよくある、ということです。( That’s it. などもそうです)
この you can’t be seen in this! は、相手の服装がTPOにあっていない時に使う表現です。
this の次に outfit (服装)が省略されていると考えて下さい。
能動態の文に直すと People can’t see you in this ( outfit )!で、「人々はあなたをこんな服装で見ることはできない」、すなわち「こんな格好じゃあ、みっともないよ」です。「こんな格好じゃあ、人前に出られないよ」でもいいですね。
この表現もそうですが、受け身で意味が取りにくい場合は能動態にするとわかりやすくなる場合もあります。
④ It distracts from the now.
distract は「目を逸らす」で、It は 手前のlooking back (過去を振り返ること)を指すので、
「それ(過去を振り返ること)は“今” (という瞬間)から目を逸らしてしまう」
という意味になります。
“過去に執着すると今が疎かになる”という戒めです。でもこの英文、ちょっと違和感がないでしょうか。
それは the now と now に “the” がついていることです。now は普通、副詞で使うので the をつけないで使います。
英英辞典で now を参照すると、
noun: the present time or moment
と、名詞 (noun)として「現在の時点、瞬間」と定義されていました。
ですから the now もOKで、the をつけることによって“今“を強調しているのでしょう。
⑤ That much is certain.
この英文も難しい語句はないのですが、意味が取りにくい英語ではないでしょうか。
much がなければ That is certain. で「それは確かです」と意味がクリアです。となると、ポイントは “much" です。
much が入り that much になると「そこまでは」という意味になり、That much is certain. 「そこまでは確か(なこと)です」という意味になります。
エレーナのセリフでいうとYou need a new suit.「あなたは新しいスーツが必要なのよ」というところまでは確かなことだ、と言っているのです。
すなわち、「新しいスーツが必要」というところまで確かなことなので、エレーナはボブにスーツを新調するように迫っているのです。
He went to the nearby park, where he was exercising alone. That much is certain. The point is where he went afterward. 「彼は近くの公園に行き、そこで一人で運動していました。そこまでは(それだけは) 確かです。重要なのはその後、どこに行ったかです」
大変きつい練習などをしている時に「まだ(これくらい)大丈夫だよ」と言いたい時は、This much is bearable. 「これくらいなら我慢できるよ」です。 ( bearable 「耐えることができる」)