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『はにわ』東京国立博物館(2)
前回の続きです。
両面人物埴輪(重要文化財)
2つの顔がある、国内唯一の埴輪です。
形象埴輪は、現実に存在しないものは作られないため、珍しい。
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2つの顔にはどんな意味があるんでしょう。
向かって右は怒っていて、左は笑っている、とか。
右は剛、左は柔、とか。
右は善、左は悪、とか。
何らかのファクターだといろいろ想像されていますが、定説はありません。
もうひとつ、顔の傷が気になります。
右は矢印、左は葉っぱでしょうか。
左は鏃で、右は矢羽根と解釈されているそうです。
鼻を貫通しているってこと?
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筆者加工
埴輪は、たいてい職業がわかるようになっています。
体が発見されれば、服装などから職業を推察できるのですが、この埴輪は顔しか出土していません。なので正体は謎のまま。
一説として、中国の鬼神の一種である「方相氏」が挙げられています。
方相氏は節分のときに鬼をやっつけにきてくれる神様です。
方相氏の俑(人形のこと・兵馬俑の俑です)には、片面に不気味な顔、反対面に無表情の顔をつけたものが多いんですって。
もう1つ、『日本書紀』に登場する飛騨国の両面宿儺がモチーフじゃないか?という説もあります。
六十五年、飛騨国にひとりの人がいた。宿儺という。一つの胴体に二つの顔があり、それぞれ反対側を向いていた。頭頂は合してうなじがなく、胴体のそれぞれに手足があり、膝はあるがひかがみと踵がなかった。力強く軽捷で、左右に剣を帯び、四つの手で二張りの弓矢を用いた。そこで皇命に従わず、人民から略奪することを楽しんでいた。
悪いやつなの?
ひかがみと踵がなかったんですって。
ひかがみって何?
コトバンクによると、ひかがみは膝の裏側のくぼんだところだそうです。
へー、こんなところに名前が。
漢字で書くと膕。
でもないってどういうこと? 膝が曲がらないの?
さて、この両面人物埴輪が発掘された「大日山35号墳」は和歌山県最大級の前方後円墳(全長105m)です。
2006年の発掘で、かなり良好な状態で多数の埴輪が出土しました。
もう1つ、珍しい埴輪が発見されています。
それも今回の展覧会に展示されていました。
翼を広げた鳥形埴輪
鳥の埴輪はたくさんありますが、羽を広げているのはこれしかないんですって。
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「和歌山県立紀伊風土記の丘」公式Xの写真をお借りました。
「翼を広げた鳥形埴輪」が東京国立博物館にお出かけするところです。
大事に包まれていますね。なんだか可愛い。
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そして出張の間、和歌山県立紀伊風土記の展示室では、控え選手が登板している模様です。
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東京国立博物館に話をもどして、他の鳥さんをご紹介します。
今日の話は鳥形埴輪だよ
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鳥さんは、「動物埴輪」の中で最も早く登場します。
最初は、「円筒埴輪」だけでした。そこから「形象埴輪」が出現しますが、家、動物、人、の順番です。
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鶏形埴輪 栃木県鶏塚古墳 東京国立博物館蔵
鶏は鳥の中で一番たくさん出土しているそうです。
鶏は朝を告げる鳥として、『日本書紀』にも出てくるのだとか。
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水鳥形埴輪 埼玉県行田市出土 東京国立博物館蔵
細い首がS字に曲がって、写実的です。
足がありますが、一説には、埴輪で足があるのとないのとでは、あるほうが作り手の敬意が払われているそうです。
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鵜形埴輪 群馬県保渡田古墳出土 かみつけの里博物館蔵
捕まえた魚を口にくわえています。
首に鈴がついているのは、人間に飼われていた証拠です。
他の鳥さんは野生なのに、この鵜だけは飼われていたことが鈴によってわかります。
古墳時代から、鵜飼ってあったんですね。
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水鳥形埴輪 兵庫県池田古墳出土
この古墳からは全国最多の水鳥形埴輪が出土しています。
古墳時代、水鳥は王の魂を天へ運ぶ、あるいは導くと考えられていました。
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埴輪の鳥の種類は、鶏、水鳥、鵜、鷹に別けられます。
鶏が一番多く、つぎは水鳥。あとはわずかです。
あれ? 水鳥だけ、分類が大雑把じゃない?
水鳥は、雁、鴨、鷺、鶴などを総括しているそうです。
たぶん、ですけど、鳥の種類ではなくて、役目で分類しているのかもしれません。
・鶏ー朝を告げる
・鵜ー魚を捕まえる
・鷹ー権威の象徴
・水鳥ー魂を運ぶ
つまり鳥さんも職業別?
ご存知の方がいたら教えて下さい。
埴輪鷹匠 群馬県オクマン山古墳出土 新田荘歴史資料館保管
帽子をかぶって、ネックレスもして、正装しています。
鷹匠は身分が高かったようです。鷹狩りは支配者層のイベントでした。
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そしてこの鷹も、鈴をつけています(尾の近く)。
人間に飼われていた証拠です。
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犬形埴輪 群馬県剛志天神山古墳出土 東京国立博物館蔵
この犬にも鈴がついています。
猪とセットで出土されているため、猟犬だったと考えられています。
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このように、何と何がセットだったか、出土状態が考古学では大事なんですね。刑事事件の現場検証みたい。
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馬形埴輪 三重県石薬師東古墳群出土 三重県埋蔵文化センター保管
これはまた、鈴だらけ。
馬は朝鮮半島から古墳時代中期にやってきたと考えられています。
つまり来たばっかり。
鈴で豪華に飾られているのは、馬を持っていることがステータスであり財産だったから。
鈴の音をしゃんしゃんとさせて歩くと、周囲の人たちは、目を見張ったのでしょうね。
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埴輪馬子 千葉県姫塚古墳出土 芝山古墳・はにわ博物館蔵
馬を引っ張って、軍事パレードに参加していただろうと想像されています。
足が作られていないので、鷹匠より身分が低いということになります。
この形、どこかで見たことがあります。
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埴輪踊る人々 埼玉県野原古墳出土 東京国立博物館蔵
ずっと「踊る埴輪」と言われ続けてきましたが、近年では、踊っているのではなくて、馬を引いているのだ、という説が有力になってきたのは、こういうことなのですね。
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牛形埴輪 大阪府今城塚古墳出土 高槻市立今城塚古墳資料館蔵
あれ?! 鈴がない。
牛さんも荷物の運搬とかしていたのに?
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このように、例外なのかなんなのかよくわからないところが、古代ロマンですね(^_^;)
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\\最後までお読み頂きありがとうございました。//
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また来週、単位修得試験があります。
科目は江戸文学論です。
更新はしない予定で、巡回はゆっくりめになります。
よろしくお願いします。
<参考資料>
いつきさん、いつもありがとうございます
おたくま経済新聞 2018/3/1