サントリー美術館『名品ときたま迷品』
カメラのマークがついている展示品は、撮影可です。
まずはリーフレットになっている、この地球儀のようなものは、何でしょう。
『鞠・鞠挟(まりばさみ)』江戸時代 18〜19世紀
「鞠挟」は鞠が転がらないように挟んで吊るしておく器具なんですね。
クッションの上に乗せておくだけでも良さそうですが、それでも転がることが懸念されたのでしょうか。
ということは、それだけ大事で高価なものだったのかもしれません。
まさにこれ!
材質は鹿の皮で、ゴムを入れたようなしわしわは、縫った合わせ目です。
蹴鞠の様子
7,8人で輪になって遊んでいました。
『浮線綾螺鈿蒔絵手箱』国宝 鎌倉時代 13世紀
今回の展示品の中で唯一の国宝です。
『椿彫木彩漆笈』 室町時代 16世紀
タンス?
じゃなくて、笈(おい)。
笈ってなんでしょう?
修験者が、布教や旅のために、仏像や経典・仏具・生活用具をいれて背負ったものだそうです。今で言えばバックパックのようなものでしょうか。
いわゆる鎌倉彫りですね。
拡大します。
このぶつぶつはなんだろう。
こんなに大きくて角張ったものを背負うのは大変そうです。
後ろがどうなっているのかなと見てみたら。
ベルトとかついていないんです、取れちゃったのかしら。
そこで文化遺産オンラインを見てみると、
彫刻のあるほうに紐がついていたのですね。
『泰西王侯騎馬図屏風』桃山時代 重要文化財 縦167.9 横237.0
日本にキリスト教が伝来したのは16世紀半ばでした。
幕府によるキリシタン弾圧までのおよそ半世紀、宣教師の指導を受けながら、洋画が描かれました。
それを「初期洋風画」と呼びます。
その代表作の1つです。
描かれているのは、右側からペルシア王、エチオピア王、フランス王アンリ4世。一番左はイギリス王ほか諸説あります。
こちらは四曲一双になっていますが、もともとは八曲一双だった屏風の片側なのだそうです。
対を成すもう半分は、神戸市立博物館に所蔵されており、左側から神聖ローマ皇帝ルドルフ2世、トルコ皇帝、モスクワ大公、タタール王が描かれています。
すなわち、ヨーロッパの帝王と、アジア王が、対峙する構図。
なんとなく、ヨーロッパ勢のほうが躍動感がある気がするのは、気のせいでしょうか。
もともとは会津の鶴ヶ城(若松城)に伝来していたものですが、戊辰戦争で落城した際、離れ離れになったそうです。
陰影法や遠近法が強調されており、一見すると西洋画のようですが、油彩ではなく、墨や岩絵具が使われています。
誰が何のために描いたのかはわかっていません。
『乳白色ツイスト脚付杯』 江戸時代
見様見真似で作ろうとした、江戸職人の心意気を感じます。
傾いたフォームも、愛しさしかない。
さて。
『この展覧会のタイトルは『名品ときたま迷品』です。
自分なりの『迷品』を見つけてくださいと学芸員さんがおっしゃっていました。
私にとっての『迷品』はこちらです。
『おようのあま絵巻』上巻 室町時代 16世紀
室町時代、頭の上に大きな袋をのせて「御用(およう)やさぶらふ」とアナウンスしながら日用品を売っている女性を「おようの尼」と呼んでいました。
ひとり暮らしをしている老僧を気の毒に思ったおようの尼は、身の回りのお世話をする若い女性を紹介しましょうか、と持ちかけます。
今か今かと老僧が待っているところへ、おようの尼自身がやって来ます。部屋が暗く、おようの尼は顔を隠しているので、老僧はそれと気づかず、上機嫌で一夜を過ごすのでした。
「色欲にまよった僧侶が、醜女をつかまされる失敗譚」だそうですが、失敗譚とも言えないような。
おようの尼は、気が利いて親切で、可愛らしいように思いますし、老僧にとっては意外とハッピーエンドだったのでは?
絵はいびつです。
どこから俯瞰したのか、視点が定まっていません。
でもそんな稚拙さが、ストーリーにも素朴感をあたえているように思いました。
本日の着物はこちら。
絵本の虫さんが、藍の紬がお好きとコメントしてくださったので、琉球紬にしました。
<参考資料>
宮内庁公式webサイト
https://www.kunaicho.go.jp/
神戸立博物館HP
https://www.kobecitymuseum.jp/collection/detail?heritage=365024
『サントリー美術館ニュース』vol.277 2020年
https://www.suntory.co.jp/sma/collection/tobira/21/