見出し画像

法隆寺金堂壁画模写(1)

卒論のため、みなさまにアンケートのご協力をお願いしたいです。

真面目な話ですって

奈良にある某大学に入学したのは今年の春。
え?! もう卒論?
と驚いちゃう。
しかし3年編入なので、当然ですよね、4年生になる前に「卒論計画表」を提出しなくてはなりません。

私が専攻しているのは「文化財歴史学科」です。
地域の文化財ボランティアにうかうかと入ってしまい、他のメンバーの知識量にぜんぜんついていけなかった私は、もっと勉強せねばと一念発起。
文化財の勉強ができる大学を探し、ヒットしたわけですが。

ちょっと間違えた。

奈良は古代の地。ほぼ考古学に特化されていました。

文化財=古代遺物だったのです。

私が志望する研究対象は、東大和市文化財ボランティアの活動域である「戦災遺跡・旧日立航空機変電所」と、日本画家である「吉岡堅二のアトリエ」。
どちらも近現代です。

でも古代も面白い。
奈良の地は宝の山。
卒論は何をテーマにしても自由なのですが、せっかく奈良とご縁ができたのですから、奈良にちなんだ研究テーマを選びたい。

なんとか地域の文化財と、奈良と、結び付けられないかなーと考えた結果。

あった!


吉岡堅二
さんは、法隆寺金堂壁画の修復にかかわっているのです。
現在、法隆寺金堂に奉安されている復元模写の、1、5、7号壁は、吉岡班の作品です。

出典:東大和市郷土博物館


対象は決まりました。
「法隆寺金堂壁画」です。

切り口は?

これはもう文化財ボランティアの一員としては「保存・継承」です。

文化財をどう保存・継承すればいいかを、法隆寺金堂壁画再現における「模写」を対象に考える。

あれ?
なんか今、まとまった。
さっきまで迷走していたのに。

なんというnote効果。

えーと。模写による復元事業はみなさまご存知だと思いますが、1949年(昭和24年)の火災によって焼損した壁画を、文化庁と朝日新聞を中心に、模写によって再現した事業のことです。
1967年(昭和42年)に始まり、1968年(昭和43年)に完成しました。
たった1年で仕上げたのですね。

焼損壁画に合掌する法隆寺の佐伯定胤貫主
1949年1月26日撮影、翌日朝日新聞に掲載。
火に飛び込もうとしたのを、数人で抑えられたそうです。
法隆寺にあれほどの想いを抱いていた貫主の嘆きが、どれほどだったか。



ところで、クローン文化財はご存知でしょうか?
東京藝術大学が開発し、クローン文化財と名付けましたが、ありていに言うとコンピュータで作った複製です。
ただし、細かい部分には人の手も加えています。

【A】クローン文化財

再現した法隆寺金堂壁画と釈迦三尊像。
出典:ほとんど0円大学

<メリット>
文化財は、「共有」と「保存」の矛盾を抱えています。
多くの人に見て欲しい、多くの人が見たい、でも公開すると劣化してしまう、しまっておきたい。
なので、ホンモノはしまっておき、複製を見学すればいいのではないか。
ヨーロッパの貴族も、本当の宝石は金庫にしまっておいて、パーティではイミテーションをしていた、と聞きますもの。
さらに、触ってもいいし、劣化したら同じデータで作り直すことができます。
文化財はいつかは必ずなくなります。
未来へつなげることが確実にできるのは、複製かもしれません。

金堂壁画で一番人気の6号壁、クローン文化財。
数ヶ月で完成できるそうです。


【B】画家による模写

こちらは現在、法隆寺金堂に安置されている6号模写。
再現事業のとき、画家(安田靫彦班)によって描かれた肉筆です。
岩壁ではなく、和紙に描かれ、パネルにして奉安されています。

出典:金井金倪

<メリット>
当代一流の画家によって描かれた直筆画です。
オリジナルの筆致、色具合、技術だけでなく、画家の精神や古代人の信仰までも写し取ることができます(できるそうです)。
法隆寺金堂壁画に関しては、線描がことに美しく、これは人間の手でないとできないと言われています。(今の画家には描けないとの説もあるほど)
もしかしたら、焼損した現物よりも、オリジナルのよさを伝えているかもしれません。


【C】現存する本物

境内に専用の収納庫を建設して保存されている、焼損した金堂と壁画です。
焼失、ではなく、焼損、だったのですね。
柱と壁画はアクリル樹脂によって剥落を止め、いったん解体したあと、組み直しています。
クラウドファンディングで寄付をしてくれた人を対象に、年1回、公開しています。
今でもまだ焼けた炭の匂いがかすかにするそうです。

出典:朝日新聞デジタル
写りのいい写真が見つからず、すみません。

<メリット>
なんといっても本物。
文化財の保存には、「現状保存」と「復元保存」の大きく2種類があります。
読んで字のごとく、現状のまま保存するか、元の姿に戻して保存するか、です。
たとえば、国宝第一号である「広隆寺」の「弥勒菩薩」は、シンプルで美しいと称賛されています。本来は、金箔が貼られて、きらびやかなお姿でした。しかし、金箔が剥がれたお姿のほうが現代日本人の美意識に沿うため、そのまま保存されているのですね。
という考え方に則るなら、焼けた現状を保存することに意味があるように思えます。

出典:小川晴暘撮影


<お願いしたいアンケート>

文化財保存の視点から、意義があると思われるのは、

【A】クローン文化財
【B】画家による模写
【C】現物

のうち、どれだと思われますか?
複数回答、順位づけも可です。

このアンケートは、前回のスクーリングで、同期の学生・教授にも協力して頂きました。
併せて卒論の考察の参考にさせて頂きたいと思います。
アンケート結果を具体的な資料として添付することはおそらくなく、考察の参考にさせていただきますので、お気軽に、どうぞよろしくお願いします。

※コメント欄で回答・理由を書いていだだけると、大変助かります。
強要すると「コメハラ」になるそうなので、いたしません。

※もちろん、アンケート以外の、普通のコメントも、いつもどおり頂けますと喜びます。

※法隆寺金堂壁画復元事業に対するアドバイス、ご指摘、大喜びです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


<参考資料>

『法隆寺再現壁画』監修法隆寺 朝日新聞社 1995年

『再現・法隆寺壁画』監修坂田俊文 日本放送出版協会 1992年

『「法隆寺日記」をひらくー廃仏毀釈から100年』高田良信 NHKブックス 1986年

『東京藝大・クローン文化財』宮廻正明監修 東京美術 2022年

コニシ木の子さん、いつもありがとうございます。

いつきさん、いつもありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!