松嶋

眠たい会社員

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月のかたちを物語るひと

もし、月が夜空に浮かぶただの球体だったら、この世にあるどれだけの物語が生まれていなかっただろう。 新月から満月へ。満ちた光がまた欠け始めて、次の新月へ。満ちては欠ける、その繰り返しに人は自らの状況や心情を重ね合わせてしまう。そして、ささやかな光に秘密や願いを囁いて託す。わたしがこれから語るsleepyheadもまさにそのひとりだ。 眠たがり屋。転じて、醒めない夢。 哲学>倫理 上質な闇と、逆説的希望。 2018年1月31日22時27分、皆既月食の夜。 赤い月の光

    • 幼子は色彩のブルースを口ずさむ

      「すごいもの聴かせてやるよ」 小さい頃、父は決まってそう言ってカーステレオから曲を流した。はじめて聴く音たちは車内を非日常へと彩り、走るたびにガタンガタンと揺れる古いミニクーパーを異世界へと吹き飛ばす。 『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』で大滝詠一の1969年のドラッグ・レースが流れ出して、まる子を乗せたロールスロイスがライムグリーンの煙をあげながら道も河も走り抜けて空を飛んでいってしまったのと同じ。どこまでも行けそうと夢を見る。 あのときの目から星が零れ落ちたような感

      • わたしの頭の中を泳いでいるやつら

        出来事は、頭の中へとなみなみ注がれていく液体。何の変哲のない水のときもあれば、ケミカルまみれの甘ったるいジュースのときもある。 感情は、そこで泳いでいるへんてこな形をした魚。生まれて育って、いずれ死んでいく。 そいつらを捕まえて綺麗に捌いて美味しく料理すること、わたしにとって文章を書くという行為はそうゆうものだ。 口に出すのは得意じゃない。 会話はよくひとりごとのぶつけ合いだと言われる。だけど、わたしにとってはマグロの解体ショーのようなものと言ったほうが近い。 頭の中で泳