こどもの日特別企画★ 大人だって「知りたい」が止まらない! 写真絵本特集
今日、5月5日はこどもの日。そしてGW真っ最中でもありますね。
今年のGWは、写真絵本で知らなかった世界の扉を開いてみるのはいかがでしょうか?
美しい写真と分かりやすい言葉で、自然や環境、社会を切り取る写真絵本。大人のあなたの知的好奇心も刺激すること間違いなしの絵本を、担当編集者達が厳選しました。
連休のおともにおすすめの絵本3冊です!
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「未踏の地」へのあくなき好奇心。その先にあるものとは?
『オレはどうくつ探検家』
今、あなたは地面の中にいます。真っ暗闇。うつ伏せの状態。胴体が岩と岩のすき間にはさまっています。力を入れても前にもうしろにも動けない。この状態で何時間が経過したのか、今何時なのかもわからない……。
この状況、目を閉じて想像してみてください。
――悪夢ですね。ふつうなら、このあたりでぱっと目がさめて、激しい動悸とともに布団の上にいる自分を確認して安堵するということになるのでしょう。でもこうした状況を、実際に、しかも自らすすんで何度も経験している人がいます。
𠮷田勝次さん。洞窟探検家です。
探検には、「未知なるもの」への好奇心が欠かせません。𠮷田さんは、その好奇心が人一倍強く、つねに「人類未踏の地」を求めています。そして𠮷田さんいわく、人類未踏の地は、地球上にはいまや洞窟しかないといいます。
そんな𠮷田さんの洞窟探検の一部始終を紹介する写真絵本が『オレはどうくつ探検家』です。山中の小さな穴から入って地中の細い通路を潜り、いくつもの岩場や水場、泥の道などを数日間かけてたどります。途中、ご飯を食べたり睡眠をとったりする様子もあり、まるで𠮷田さんといっしょに洞窟を探検しているような気分になれる本です。
そして、なんといっても見どころは、地底世界とは思えぬダイナミックな地形美。地球が何億年もかけてつくった芸術作品ともいえるでしょう。
私たちの足元には想像をこえる世界が広がっています。洞窟探検を疑似体験しながら、知らない世界に出会うワクワクを感じてみてはいかがでしょうか。
素人はぜったいにマネしてはいけない(というかぜったいにできない……)洞窟探検ですが、洞窟探検だけがいわゆる「探検」ではありません。いろんなことに好奇心をもってチャレンジすることも「探検」だとすれば、私たちの日常もじつは「探検」の連続なのかもしれません。そして「探検」の先にはきっと新たな「発見」があります。そう思うと、毎日が少しわくわくしてきませんか。
(文・原田哲郎)
小さな虫の壮絶な子育て
『ハサミムシのおやこ』
ひと月ほど前、自宅の前でハサミムシが歩いているのを見つけました。
この時期、ハサミムシを見かけると、季節の変わり目を感じます。
小さなからだと、お尻からのびるするどいハサミ。
この好戦的なビジュアルが、子どものころのぼくにはとても魅力的で、大好きな虫のひとつでした。
そんなあこがれの虫との再会が、ポプラ社で働くようになってから訪れました。
そこは、『ミミズのふしぎ』や『ダンゴムシ みつけたよ』など、それまでにもたくさんの素敵な写真絵本を刊行されていた、土壌動物写真家の皆越ようせいさんのお部屋。
小さな虫たちに、つねにやさしいまなざしで向きあう皆越さんから聞くハサミムシの子育ての話は、それまでのかっこいい虫の印象を一瞬でふきとばすほどのインパクトを秘めたものでした。
ハサミムシ(コブハサミムシ)は虫としてはめずらしく、お母さんがたまごの世話をします。
まだ寒い冬の終わりころ、たまごを産んだお母さんは、カビが生えないようにたまごをこまめに動かして空気にあてたり、敵がきたら威嚇したりして、飲まず食わずでたまごを守ります。
そうして無事に育ったたまごから子どもたちが生まれると、お母さんには最後の役目が待っています。
その役目とは、自分のからだを子どもたちにあたえて、栄養にすること。
まだ寒い時期に子育てをするのは、天敵が少ないためです。
ただ、その分、食べものも少ないということ。
小さな生きものが生きのこる知恵が、この子育てにはあらわれています。
本能と言ってしまうのはかんたんですが、皆越さんは「母虫みずから、からだを子虫たちに食わせながらも、必死で子虫たちを守ろうとしているとしか思えない」と言います。
こどもの日のあとには、母の日がやってきます。
そんなこの時期、親と子の命の物語を読んでみるのもいいのではないでしょうか。
(文・堀創志郎)
地球のための最初の一歩
『ゾウの森とポテトチップス』
最後にご紹介するのは、『ゾウの森とポテトチップス』(横塚眞己人・しゃしんとぶん、そうえん社刊)です。
この絵本の舞台は、東京から南へおよそ4000キロ。世界で3番目に大きな島・ボルネオ島(カリマンタン島)。赤道直下に位置し、インドネシア、マレーシア、ブルネイの3国がまたがっています。
熱帯雨林のこの島は、さまざまな生き物たちが暮らす大自然の宝庫。
大きな鼻が特徴のテングザル、マレー語で「森のひと」という意味のオランウータン、頭の赤いつのをつけたようなツノサイチョウなど、めずらしい生物もたくさん生息しています。
絵本に登場するボルネオ島のゾウは、アジアゾウの一種ですが、大陸に生息するゾウよりも小型。丸っこい体つきのとてもかわいらしいゾウです。
さて、緑あふれるこの島を上空から見たのがこのページ。果てしなく広がる森と蛇行して流れる川。でも、森のありようが場所によって違っていることがわかりませんか?
川のまわりは自然の森。細い道が走る濃い緑の森はすべて、アブラヤシのプランテーション(大規模農園)です。
野生生物たちはプランテーションでは暮らせません。わずかに残る自然の森で暮らすしかないのです。
アブラヤシの果実からしぼられたパーム油は、この島から世界中に輸出され、洗剤や化粧品、マーガリンやポテトチップスの揚げ油の原料となります。最近は日本でもこの事実が知られるようになってきました。テレビやラジオ、インターネットの記事などで知っている方もいらっしゃるかもしれません。
人間の暮らしを豊かにするために、多様な生物たちの生活の場をうばっていいのか? 人間と生物が地球上でともに暮らすことって?
この絵本では、ボルネオ保全活動にも尽力する写真家の横塚眞己人さんが、わたしたちに語りかけます。
「手だて」を打つための最初の一歩は、「知る」ことからはじまります。
みなさんも5月の長いお休みに、その最初の一歩を踏み出しませんか?
(文・小桜浩子)
★この記事で紹介した本はこちら!