22年ぶりの新作刊行! 作者・あまんきみこさんが語る「新装版 車のいろは空のいろ」~装画・黒井健さんのアトリエも公開~
今年の11月、ロングセラー童話集「車のいろは空のいろ」シリーズに、22年ぶりの新作が誕生しました。第4巻『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』です。
児童文学作家・あまんきみこさんのデビュー作でもある「車のいろは空のいろ」シリーズは、心優しいタクシーの運転手、松井さんと不思議なお客さんとの出会いを温かく描いた連作短編集。これまで長らく、全3巻のシリーズとして親しまれてきました。
そして、この第4巻の刊行を機に、既刊の第1・2・3巻も新しい装いでリニューアル。黒井健さん装画・挿絵の「新装版 あまんきみこの車のいろは空のいろ」シリーズ(全4巻)となりました。
そこで今回は、22年ぶりに新作が誕生した経緯や、新装版の制作過程について、作者・あまんきみこさんのお話とともにご紹介します。新装版の装画・挿絵をお描きいただいた黒井健さんのアトリエも公開!
ぜひ、最後までお読みください。
ロングセラー「車のいろは空のいろ」シリーズ年表
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「新装版 車のいろは空のいろ」を手にして
(あまんさん)
「ゆめでもいい」じゃなくて、もう夢のような思いです。
新装版ができることは、もちろんわかっていたけれど、できあがってくるまでは実感ができなくて……。こんなことが、あるんですね。長生きして、よかった!
新作『ゆめでもいい』が生まれた経緯
(あまんさん)
わたしは、新しい本が作れるとは、思ってなかったのよ。でも、まだシリーズに収録されていない松井さんのお話が3つあって、「あと4つ新しいお話を加えて1冊にしましょう」と声をかけてくださったから、やってみようと思ったの。みんなのおかげ。
(あまんさん)
松井さんは、いつもわたしの中にいるのね。わたしは車の運転はできないけど、タクシーも自分が運転しているような気持ち。お客さんが「ここへ行って」と言うたびに、ひとつの街がだんだん広がっていったの。
松井さんも同じ。性格や年齢や家族のことをあらかじめ決めたりは、していないの。
こんな本は他にないのよ。だいたい最初に、ここにこういう女の子がいて、パパがいて、ママがいて……って、決めるんだけどね。このシリーズは、ほかとは少し違うのかもしれないわね。
黒井健さんの装画・挿絵について
(あまんさん)
シリーズの中で、ゆるやかに時は流れているけれど、わたしの中で松井さんはあまり年をとらないのね。いつも、いちど会ったら忘れちゃいそうな顔。この黒井さんの描いてくださった松井さんは、わたしのイメージにぴったり。
(あまんさん)
北田さん(※既刊の装画を担当されている北田卓史さん)の描かれた松井さんは、わたしにとってかけがえのないものだけど、新装版では新しい松井さんに会えたようで、びっくり。すごくうれしいわ。
最後に
(あまんさん)
新しい本ができると、親しい人たちにさしあげるのだけど、今回は新作の4巻だけをお送りしよう……と思っていたのね。でも、できあがった新装版4巻を手に取ってみると、全部そろっていたほうが、松井さんが喜ぶんじゃないかな、って感じたの。それで、4巻セットで送ることにしちゃった。
読者のみなさんにもぜひ、1巻から4巻までそろった姿を、見てもらえたらうれしいなと思います。
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1965年に同人誌「びわの実学校」で「くましんし」を発表なさって以来50年以上、あまんさんはタクシー運転手・松井さんの物語を大切に紡いでこられました。
このたび発表された新作、第4巻の物語の中で、松井さんの空いろのタクシーは、不思議なお客さんをのせて過去、そして未来に向かって走ります。生きとし生けるものへの深い愛情がこめられたどのお話も、読む人の心によりそい、生きることを励ましてくれる、あたたかな力と優しさがあふれています。
このシリーズに初めて出会うお子さんにも、かつて読んだことのある大人のかたにも、ぜひ手にとっていただきたいと思います。
また、この新装版の各巻末には、あまんさんがすべての収録作にまつわる思い出を綴ったライナーノーツ「思い出すままに」が収録されています。作者をより一層、身近に感じられるとっておきのエピソードを、ぜひ味わってみてください。
(担当編集 松永緑・上野萌)
★同時刊行の『特装版 車のいろは空のいろ』についてはこちらの記事でもご紹介しています。(試し読みは終了しております)
★今回ご紹介した書籍はこちら。
(4巻セット)