ご近所暮らしが教えてくれたこと──ますだゆうこ(ケロポンズ)
ケロポンズは、子ども向けの音楽や振付の制作、年間100公演以上の親子コンサートやテレビ番組出演、代表作「エビカニクス」は動画再生回数8000万回超えと子どもたちに大人気のミュージック・ユニット。
ケロポンズのケロちゃんこと、ますだゆうこ(増田裕子)さんは絵本作家としても活躍されています。
2020年4月の緊急事態宣言からいまをふりかえって、ケロポンズの相方であるポンちゃん(平田明子さん)とふたりでやったこと、どんな思いで、どんな毎日を過ごされていたかをつづっていただきました。
■おうち時間に楽しさを届けたい!
去年の今ごろ(2019年晩秋)は、世界中がこんな大変なことになると、誰が想像できていたでしょうか? 先が見えない今、誰もが不安な日々を過ごしていることと思います。
音楽、お芝居など、エンターテイナーなお仕事をやっている人たちはみんな同じような状況だと思いますが、ケロポンズも日々の活動のほとんどが、コンサートでなりたっていたので、コロナ禍でその仕事がさっぱりなくなってしまい、ほんとうに途方に暮れてしまいました。
そんな中でも何かできることはないか、子どもたちがおうち時間を楽しく過ごせるようにしたいと考え、簡単にできる遊びの動画「ケロポンズのいつでもどこでもあそんじゃOH !」などを撮って、YouTubeに公開したりしました。
そうこうしているうちに、2020年4月7日、東京に緊急事態宣言が出され、自粛生活に。ポンちゃんと毎日LINE電話で相談。それぞれの家で見よう見まねで動画を撮り、ポンちゃんがそれをうまく編集してくれました。
大変だったけど好き勝手に作った「意味のない音楽会」や「えかきうた」などの動画をYouTubeにアップし、これはそれなりにおもしろく楽しい体験となりました。自分たちで撮影して編集するというのははじめての作業だったので、ふだん関わってくださっているプロの動画撮影や編集の方々のご苦労を身をもって知りました。
■新しいコンサートのかたち・コロナ禍だからこその歌
自粛期間が明けてからは、配信コンサートにもチャレンジしてみました。これも最初は、オフィスのスタッフたち、会場のスタッフさんやたくさんの人たちに助けてもらいながら手探り状態ではじめました。でも、オンラインだからこそ全国各地の人たちに見てもらうことができましたし、時差はあれどもチャットなどで交流したり、できたり、新しい時代だなあ……としみじみ実感しました。
でもやはり、生のライヴに勝るものはありません。子どもたちとやりとりしたり、お客様のあたたかな拍手がどんなにありがたいことか……。
そんなこんなで最近では 幼稚園コンサートによばれたり、感染対策万全な小規模コンサートも徐々に開かれるようになってきて、ほんとうにうれしいです。
それでもコンサート自体、例年にくらべてぐんと減り、時間に余裕もできたので、「ケロポンズ の新しいCDを作ろう!」と鼻息荒く思い立ち『こどもロック』というCDを今まさに制作中であります。
コロナ禍だからこそ生まれた歌たち。ふだんの遊び歌などが中心のCDではなく、今、自分たちが作りたい歌を作りました。制作するにあたっては、それこそいろんな方々にお世話になり、感謝しかありません。リリースが待ち遠しいです。(正式発売は2021年初頭予定)
ポンちゃんとのレコーディング風景
新作CD『こどもロック』。
音楽プロデュースやアレンジ、演奏を
若い人たちにお願いしました。
それぞれの個性があふれ、みんなの愛情が
いっぱいつまったCDです。
何曲かは動画も制作中! お楽しみに
■猫たちがいてくれたから…
2020年春から秋にかけて、仕事的にはざっとですがそんな感じの半年でありました。個人的にはどうだったかといいますと、ご多分に漏れず、とにかくこんなに長くうちの中にいるという、いまだかつてない日々を送っていました。
はじめは何をしたらいいのか不安でしたが、人間というのは不思議なものである程度時間が経つと、この生活にもしだいに慣れていきました。
なんといってもありがたかったのは猫がいてくれたことです。
うちには7歳になるアメ(♂)と2歳になるチリ(♀)の2匹がいます。どちらも保護猫です。
アメとチリがいるおかげで、ほんとうにどれだけ気持ちが救われたことか。ただそこにいてくれるだけで癒されるし、猫たちはそれこそほどよいディスタンスをとりながらじょうずに暮らしているのです。わたしにとって大切な家族です。
左の茶トラがアメ。
トラみたいに大きくどっしりして、
性格はおだやか。玄関のチャイムが鳴ると、
すぐにかくれる小心者。
右のキジトラがチリ。
アメにすぐちょっかいを出して怒られています。
肩乗りが大好き。玄関に宅配便の人が来ると、
すぐに寄っていくほど、ひとなつこい
■近くの場所で大きな発見!
でも四六時中、猫とまったりしているわけにもいかないし、かなりの運動不足にもなってしまうので、自粛期間中は少し早起きして、毎朝、近所の公園を1時間ほど歩きました。大股でワシワシと歩くのです。
この朝の散歩がことのほか身体によかったように思います。以前は駅まで20分くらい歩くのが億劫ですぐにバスに乗っていましたが、今では駅まで歩くのが全然苦ではなくなりました。
それに加え、大きな発見もありました。
近所を歩いてまず気づいたのは、野菜の直売所があちこちにたくさんあるということでした。直売所といっても無人ロッカー! 中をのぞくと、その日に採れたトマト、にんじん、きゅうり、なすなどがひとつずつ入っていて100円玉を入れて買うのです。こんな近所に新鮮でおいしい地元野菜が、しかも安く手に入る! と知り、目からウロコ。長く住んでいるのにもっと早く気づくべきでした。
それから、近所の個人商店。花を買ったらバラを1本おまけしてくれる優しい花屋さん、お団子のおいしい和菓子屋さん、ふわふわのパン屋さんなど、いいお店がいっぱいあるじゃないか! まさに灯台下暗し。
スーパーで買うばかりでなく、こういう個人商店も応援していかなきゃ、これからも持続してもらえるように買い物をしようと思いました。
どんどん歩いていくと、ついつい遠いところまで行きたくなり、緑を求めて当て所もなく歩いたりもしました。すると都内にも緑豊かな公園がたくさんあるのだなあと再認識。自粛期間中は平日でも、公園に人がいっぱいいて都会の人の多さに少し辟易するところはありましたが、きっと誰もが外の空気を吸い、自然に癒されたいのだなと思いました。
青空の下では心が晴れる。
新しい歌のイメージも広がる
■自分にとっての今、そしてこれから
3.11の東日本大震災の時にも思いましたが、人間は自然にはかなわない。つぎつぎとやってくる自然災害や新型ウイルス、それらと闘うのではなく、うまく共存して生きていける方法が見つかるといいなと思います。
まずは自分自身、免疫をしっかりつけて健康でいることがいちばんですね。あたりまえの日常の大切さ、生きているだけで幸せということを、自然がわたしたち人間に教えてくれているのかもしれません。
コロナで大変な思いもしたけれど、コロナのおかげで気づけたこともいっぱいありました。
自分にとって今、何が大切で、どう生きたいのか?
そのことを常に考えていきたいです。今までと同じようにやっていけないもどかしさを抱えながらも、日々の暮らしを工夫して自分らしく楽しく生きていけたらいいなと思っています。
そして、はやくもとの日常にもどって、友人たちとわいわいおしゃべりしながら、ごはんを食べたり、笑顔で会える日がくることを祈っています。
☆追記
コロナ禍のまっただ中、ポプラ社からケロポンズが文章を書いた2冊の本が出版されました。
『はっけよーい』(作 ケロポンズ/絵 いぬんこ)
『おにのこ にこちゃん かって かって ポン!』(絵 原あいみ/文 ケロポンズ)
どちらも楽しい絵本なので、ぜひおうちや園などで読んでくださいね。