![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/149703690/rectangle_large_type_2_f5f091ed293781bda4e33a4f80cf1499.jpeg?width=1200)
宇宙の本は途中で挫折していたから、最後まで面白く読める「挫折しない入門書」を作りたかった
2024年7月に『宇宙はなぜ面白いのか』(ポプラ新書)が発売になりました。数キログラムの超小型衛星やリサイクルできるロケットなど、目覚ましいスピードで進んでいる宇宙開発。そこに異業種から飛び込み、JAXA宇宙教育センター長を務めた北川智子さんが、宇宙について知っておくべき基本をわかりやすく綴った一冊です。
![](https://assets.st-note.com/img/1722841066010-2gwBak5C8S.png?width=1200)
北川さんと最初の打ち合わせをしたのは、今年1月。ちょうどJAXAのSLIM(スリム)が月面着陸に成功した直後でした。でも、北川さんの口から「SLIM」という言葉が出てきても、「スリムってなんだっけ?」というぐらい、わたしはなにも知りませんでした。
そんなわたしですが、これまでにも、宇宙の本を手にしたことはありました。ベストセラーになっていて、気になって手に取ったのですが、あっけなく途中で挫折。気が付くと、文字を目で追っているだけで、なにも理解していなかったのです。
そんな話を編集部の会議でしたところ、「わたしも!」という人が何人もいました。出版社の編集部という、とても限られた場所ではありますが、私だけではなかった!という嬉しさとともに、同じような経験をしている人がほかにもいるのではと思い始めました。
そこで、これまた狭いのですが、いちおう理系の夫にも聞いてみました。
「宇宙の本って読んだことある?」
「あるよ」
「理解できた?」
「うーん、雰囲気だよね」
雰囲気⁉ よくわからない答えでしたが、要するにきちんと理解はできなかったということだと解釈。
きっとほかにも同じように感じている人たちがいるだろうという仮説のもと、本のコンセプトが決まりました!
「挫折しない宇宙の入門書」です。
実際に、北川さんは、専門用語や物理の知識などをできるだけ使わずに、宇宙の成り立ちから惑星探査の最前線まで、ご自身の経験も織り交ぜながら、わかりやすく書いてくれました。
それでも、わたしにはわからないところがいろいろ出てくる! たとえば、ロケットのしくみ。イーロン・マスク氏のスペースXは、再利用できるロケットを開発しています。そのことさえ知らなかったわたしは、ロケットの機体を何度も使えるの⁉と驚きました。
そこで、リサイクルできるロケットの図を本に掲載しようと思うも、あれ、衛星はどこに載せるの? 宇宙飛行士が乗る場合は? などなど、わからないことが次々に出てくるのです。
そんなわたしの質問に、北川さんは、あ、そこからわからないのね、という感じで、丁寧に説明してくれました。
![](https://assets.st-note.com/img/1722841091071-8LdvF9bomH.png?width=1200)
今回は、幅広いトピックを扱う入門書だったため、ゲラ(校正刷り)の状態になったところで、各専門の研究者の方たちにも内容を確認してもらいました。
そうしたら、想像を超えるコメントの数々! 本当にありがたかったのですが、正直なところ、その内容がよくわからないこともあり、頭がくらくらしたことも……。
研究者の方たちのコメント通りに文章を変えると、専門用語が含まれていたりして、わたしみたいな人にはわからなくなってしまうところもありました。そういう場合は、北川さんがわかりやすい言葉で書き直し、それを研究者の方たちにあらためて確認いただくという流れで進みました。
ゲラは、初校、再校、三校、念校と進んでいくことが多いのですが、どの段階でも、これまでの本のなかで一番多い赤字(修正)を入れました……。今回は、図や写真もたくさん入れたのですが、図にもコメントが入り、何度も修正することも……赤字を修正してくれたDTPさんにも、図を作ってくれたデザイナーさんにも、たくさん迷惑をかけました……。
![](https://assets.st-note.com/img/1722841114529-ne1IxmrjF8.png?width=1200)
こうして、みなさんの力でできあがった『宇宙はなぜ面白いのか』。わたしが理解できるということは、どなたが読んでも、ひっかかるところなく面白く読んでいただける一冊になったと思います。
北川さんに声をかけてもらわなかったら、この本を編集していなかったら、宇宙に興味を持たないまま生きていたと思います。いまは宇宙を知ること自体、純粋に面白なあと思います。宇宙を知ることで、世界を見る視点がひとつ増えたようにも感じています。本書を通して、一人でも多くの方に同じように感じていただけたら、とてもうれしいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1722841133282-PCMccMNaGs.png?width=1200)
『宇宙はなぜ面白いのか』編集担当 近藤純