くろべえ

ある田舎町に、くろべえという猫がおりました。
その町は黒猫を不吉な存在とし、黒猫だけはいじめていいというしきたりがありました。

今日もくろべえは町の子供たちから石を投げられていました。

今回の石は当たりどころが悪く、頭がくらくらしてその場に倒れました。

薄れいく景色の中、くろべえはぼんやりと思いました。

「ああ、なぜおれは、いじめられているんだろう?猫は猫でも、家猫のシロくんは可愛がられているし、雄のミケ猫のミケくんは、珍しいからといって遠くの街に売られていった。俺はなぜみんなに嫌われるんだろう?」

ピューっと風が吹いてくろべえの身体を撫でました。

そんなくろべえに平等に接してくれるのは風や木々の木漏れ日や草っ原の雑草だけでした。

ズキズキと傷が痛み出しました。
それでも足を引きずるように物陰に隠れて目を閉じました。

優しい風がふわりと身体を包みます。
温かな日のさすそんな昼下がりに、
くろべえは息絶えました。
「今度生まれる時はもっと優しい世界になればいいな」

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