『屋上で一緒におべんとう。』
祥太郎と一緒に会社の屋上でお昼を食べるようになって、もう半年以上になる。
「どうしたんだよ?今日は何か元気ないな・・・」
「ん?・・・そんなコトないよ。ただね・・・」
と私が言いかけた時、携帯が鳴った。着信を見ると、彼氏からのものだった。私は鳴り続ける携帯をぼんやり眺めながら、それに出ることを拒んだ。
「でないの?電話・・・」
「うん・・・。今はいいや・・・」
「誰?彼氏とか?」
「うん・・・。そんなとこ・・・」
「喧嘩でもしたの?」 「ううん・・・。違うけど、今はあんまり話したい気分じゃないだけ・・・」
「ふ~ん・・・」
祥太郎がそう言った後に、電話は切れた。2人の間に、変な沈黙が訪れる・・・。
「もう何年付き合ってるんだっけ?」
先に沈黙を破ったのは祥太郎だった。
「んとね、高校の時からだから、もう6・7年にはなるのかな・・・」
「ふ~ん・・・結構長いね」
「だね・・・」
「じゃ、そろそろ結婚とか?」
「ん?そういう話はまだ全然・・・」
「そうなんだ・・・。見上はどうなの?結婚とかやっぱりしたい?」
「ん・・・今はよくわからない。長く付き合っているとしても、必ずしも結婚っていうのに行き着くわけじゃないでしょ?そりゃー彼のコトは好きだし、一緒にいたいな・・・とか思うけど、でもね、それが“ずっと”なのかどうなのかよくわからないの・・・」
「それって倦怠期とかっていうやつ?」
「どだろ?ただ最近は、私たちってこのままでいいのかな・・・とか思っちゃうんだよね」
「そうなんだ・・・。だったらさ、もう彼氏とはきっぱり別れちゃって、俺と付き合わない?」
「えっ!何を突然言い出だすのよ。冗談はやめてよね・・・」
「こんなコト冗談で言わないよ。俺は本気なんだけな・・・」
「なっ!だっ、だって、祥太郎って女の子には興味がないんでしょ?」
「そうだけど・・・。でも、お前には興味がある・・・」
祥太郎はそう言うと、いつになく真剣な眼差しで私を見つめた。私はただその言葉に驚き、その後何もコメントが出てこなかった。
すると祥太郎は、「まっ、前向きに考えてみてよ」と、私の頭に手を置くと立ち上がり、そのまま屋上から去っていった。
そんな祥太郎の後ろ姿をただ見つめていた私は、その時、はじめて彼の後姿に“オトコ”を感じている自分に気がついた・・・。
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