幼心のときめき
何度もきたことのある場所なのだけど、いつもはもっと手前のほうで引き返していた。
この日はいつもの散策とは少し違い、どこまででも進めるままに進みたい気分。
足の疲れを感じ始めるまで……と思いながら、ときどきに立ち止まり写真を撮りつつ歩く。
持参した水筒の水を飲みつつ歩く。
こんなに奥へ入るのは初めて…と感じ始めたところで、野鳥を観察している方に出会う。
「こんにちは」
挨拶をきっかけについ訊ねてしまう。
山の会話は不思議だ。
普段街で特段の用もないのに人に話しかけるなんてあり得ないが、ここには“つい”が存在する。
ひとしきりお話ししたあと、ふたりで道を戻り始めた。
穏やかなときめきを感じる表情で、その方は案内してくれた。
なんてかわいい。
つい通ってしまいそうだ。
つい近所にどんな石があるのか、石のなりたちはどんなか、調べてしまいそうだ。
これだから外へ出るのはやめられない。
しばし進んだ先で教えてくれた鳥の名を口にして、その方とは別れた。きっと近いうちに、また。