ROCKな妹
私は巷ではシスコンと名高いのですが、最近になってようやくその自覚が芽生えてきました。世間一般で言うところの姉妹とは、その像がかけ離れすぎていると気づきました。
妹は私の3歳下で、幼少の頃からよく2人で遊んだものです。おままごと、バドミントン、なわとび、バレーボール、キャッチボール。運動が多すぎるな。私は運動嫌いなんですけど。
私が妹をこの上なく愛するようになったきっかけ、要因は様々ですが、1番はだれよりもロックだからです。ROCKの方のロックです。
私はゲーム、アニメ、漫画など多岐にわたる娯楽が趣味でした。学生の頃は専らそれらに傾倒していましたし、友達と夜遅くまで遊びに出歩くなんてことも多々ありました。
部活動も積極的に参加していたので、帰りが遅くなったりすることがありました。それこそ日付が廻った後とか。リビングのドアにはいつも灯りがついていたのです。
扉を開けるとそこには黙々と机に向かって教科書とノートを開きながらペンを走らせる妹の姿。学生時代はむしろこの姿のあの子しか記憶にないぐらい起きてから寝るまでずっと勉強をする子でした。
妹の趣味は?と聞かれると勉強と答えざるを得ない、そんな子でした。彼女は覚えていないかもしれませんが、ある時あの子に「勉強が好きなの?」と聞いてみたことがありました。
「好きじゃないよ、全然。でもかっこいいから。」と一言。後頭部をバットでぶん殴られたのかと思いました。それまでの私の溺愛っぷりも半端ではなかったかと思うのですが、それからはある種の敬愛のような感情を抱くようになりました。
彼女はまっすぐで阿呆な人なんです。流行りの音楽をカッコイイと聴き、勉強ができる様をカッコイイと自負し、なにより努力ができる自分をカッコイイと嘆くのです。
対して私は、流行りの音楽をダサいと閉ざし、勉強ができる様を勉強しか出来ないと吠え、努力より才能をカッコイイと説く、最強にダサい思考を持っていました。
そんなのずるいじゃん。最強にROCKだろ。と思ってしまったのです。
妹は、地頭がとてつもなく悪い子です。日常会話の際にそれが垣間見られるシーンをいくつも思い出せるほどです。そんな彼女は、県下トップの高校に進学し、高校の全国模試で1桁順位をたたき出し、現在は難関国公立大学に一般の試験で合格し、通っています。
これがどれほど凄いことか分かりますか?地頭がない子が、記憶力が本当にない子が、そんなことを成し遂げるのです。100%の努力で。かっこよすぎるな。
恥ずかしながら、3つも下の彼女に勉強を教えてもらったことがあります。私は理数が特に苦手で、高校2年生初期頃から全く授業についていけていなかったのです。
彼女に教えてもらった解析学(微分・積分)の単位は、高校の歴代の試験の中で一番の成績でした。それほど、彼女の教えが上手だったことが伺えます。何故か?彼女が阿呆だからなのです。
彼女は本当に阿呆なので、自分で問題を咀嚼して咀嚼して咀嚼して、やっと理解して、それをアウトプットしていたのです。体感では常人の4倍は咀嚼量が多かったように思います。彼女の教え方なら、小学1年生でも微分できるのではないかと震えました
そんな最強にROCKな妹。絶えず遊びに誘っていますが、最近までは本当に成果がありませんでした。しかし遂に、春休み、2人きりのタイ旅行を確約することに成功しました。
世界で1番かっこいい妹とタイ旅行なんて、と泣きそうになったことはここだけの秘密でお願いします。
世界で1番ロックで、なんでも話せる親友みたいで、でも家族で、たった一人の妹。愛してるぜ。
姉より。