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新潟にタイトルを

2008年12月23日。
まだ皇后杯が全日本女子サッカー選手権と呼ばれていた頃。新潟Lはクラブ初のベスト4入りをかけてINAC神戸と対戦した。当時の新潟Lはなでしこ1部に昇格して2年目ということもあり、実力差が大きいリーグで1勝するだけでも大変だった。中堅の神戸相手には何とか勝てるかもしれない。そんな期待を抱いて神戸ユニバーに足を運んだが、試合は1-3で敗戦。新潟Lは上尾野辺のゴール、神戸は川澄奈穂美が1ゴール。試合の記憶はそれほどなく、神戸のゴール裏が地元開催にもかかわらず1人しか居なかったことが印象に残っている。まだ、なでしこフィーバーが起こる前の出来事である。
実はこの日、ダブルヘッダーでもう一試合が行われた。この2試合目こそが注目の試合であった。神戸をホームとし、親会社の経営難により、この大会を最後に解散することが決まっていた名門TASAKIペルーレの試合である。勝っても負けても最後の「ホーム」であった。試合は大石沙弥香のゴールで勝利するも、選手たち、そしてスタジアムに駆けつけたOGらは涙を流していた。
翌年、そのTASAKIから大石沙弥香と佐伯彩が新潟Lに移籍。また、同じくTASAKI組の阪口夢穂もアメリカ経由で2010年に加入。2011年、上尾野辺めぐみとともになでしこジャパンの一員としてW杯優勝を果たした。
新潟Lの成績は徐々に良化。安定してトップハーフに居られる存在になった。皇后杯でタイトルにチャレンジすること4回。しかし、いずれもINAC神戸にはね返された。
WEリーグ加入後の低迷期を乗り越えて、今回は5回目のタイトルチャレンジである。
ところで、ここまでに登場した選手は全員新潟所属経験のある人物である。偶然なのか運命なのか…。ただ、これはほんの一例に過ぎない。チーム創設21年目。北信越リーグを戦った選手、Lリーグ2部を戦った選手、なでしこ1部を戦った選手、WEリーグを戦った選手。それぞれにストーリーが存在し、その積み重ねがあって今の新潟Lがある。この点においては決勝を戦うS広島Rとは明確に違う点であり、強みである。
新潟に関わった選手たちの殆どはクラブから給料を貰っていたわけではない。それでも「アルビレックス」と「新潟」の名を背負っていつも戦ってくれた。このことはもっと多くの人に知られ、評価されるべきことだと常に思っている。
ここ数年、そんなレディースのひたむきな姿に魅了された私は、ほぼすべての試合を現地で観戦してきた。スタッフが少ないから試合準備や後片付けも選手が仕事の一翼を担う。これはプロリーグの今でも変わらない。ある日の試合ではリハビリ中の選手が病院から駆けつけ、脚を引きずりながら荷物運びを手伝っていた。この他にも、最後の一人まで丁寧にファンサする姿、裏方としての頑張るベンチ外の選手、チームを鼓舞し続けるベンチ組。古巣に勝って流した嬉し涙、終了間際に追いつかれて流した悔し涙、仲間を救えずに立ち上がれないほど悔しがった涙も見てきた。
そんな姿を見ているから報われてほしい。所属18年目のめぐはもちろん、これまでの歴史を紡いできたすべての選手、スタッフ、サポーターにタイトルを。
多くの関係者が応援に駆けつけるだろう。
今度こそ決めろ。新潟にタイトルを。

https://weleague.jp/cupfinal/2023-24/


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