いま、能登半島地震に対して学生は何を思い、考えるか?
(前置き)
非常に長い文章になってしまいました。(約6400字)
興味のある部分のみ読んでいただければ幸いです。
建築文化週間 学生ワークショップ2024への参加
2024年10月19日(土)~21日(月)に開催された学生ワークショップ2024とは日本建築学会が主催する建築文化週間2024のプログラムの一つです。
私は学生実行委員として、学生WS2024に携わらせていただきました。
この記事では、学生WS2024を通して私が「思い、考えた」ことを記録として残そうと思います。
企画について
学生WS2024のテーマは、「いま、能登半島地震に対して学生は何を思い、考えるか?」。
2024年1月1日、多くの人が希望あふれる新たな一年を見据えていたであろう時、能登半島で最大震度7の大地震が発生しました。伝統文化が根強く残る能登の町に倒壊、津波、火災、液状化、隆起など、様々な形の災害が起きました。さらに、2024年9月、普及作業が進む能登で大豪雨が発生し、水害の被害に見舞われました。
ニュースやSNSで被害状況が報道される今、多くの学生が能登半島の現状を懸念しているでしょう。しかし、行動に移すのはハードルが高く、容易なことではありません。
今回の企画は、「能登半島に対し、何かしたいけどどうしたら良いかわからない学生」に対し、まずは能登半島に対する知識を深め、自分なりに「思い、考えること」を目指しています。
関連企画展示
「いま、能登半島地震に対して何を思い、考えられるか?」展では、学生実行委員による現地でのリサーチ活動と、復興に向けて行動している方々の様々な活動が展示されていました。
展示を通して印象に残ったことを抜粋。
1.自然の「魅力」と「恐怖」は表裏一体である。
会場に展示されている写真や瓦礫を見て、思ったこと。
能登半島には自然豊かで伝統的な家屋や文化に溢れた日本の原風景を残した素敵な町がたくさんある。しかし、たった一度の災害で、その風景はすべて崩れてしまうことにとても大きな恐怖を感じました。
日本は災害大国なのだと改めて強く実感。
2.能登に住む人々による学生に向けたメッセージ
学生実行委員による展示では、「内灘」「七尾」「門前」「輪島」「珠洲」の5地域を対象に調査した結果がまとめられていました。
私が特に目を惹かれたのは、実行委員がインタビューした人々の生の声。
現地の人々のエネルギーに溢れるその言葉は、私たちが能登に関わっていくにあたって、心に留めておくべきことだと思いました。
3.瓦礫の展示
学生実行委員が現地調査した際、許可を得て採集した瓦礫が展示されていました。
地震発生前は、「瓦礫」ではなく、人々に使われていたものが、現在は瓦礫として扱われていることにとてもショックを受けました。
(瓦礫と呼ぶこと自体、良くないかもしれない)
瓦礫の中には、瓦や陶器、着物の帯などがあり、捨ててしまうにはもったいないものが多く置かれていました。
今や瓦礫として扱われているこれらの物をどうすれば残すことができるのか、考えて行動に移す必要があると思います。
また、「捨てずに残す」ことは先程も記述した現地の人々の願いにもつながっているはずです。
4.ポストイット 「思いを言葉に、」
展示の最後に、来場者参加型のスペースが用意されていました。
提示された問↓
①展示を通して考えたこと、感じたこと
②能登のために自分にできること、もしくはやってみたいことはありますか?
シンポジウム
ワークショップ1日目にシンポジウムが行われ、能登の復興に向き合う講師、学生、実行委員(代表・副代表)による対談を拝聴しました。
私の心に残った言葉をいくつか記します。
登壇者
小野田泰明 先生 東北大学大学院教授
小津誠一 先生 有限会社E.N.N代表
窪田亜矢 先生 東北大学大学院教授
東北大学の学生3名 窪田亜矢研究室所属
半田洋久 さん 学生実行委員代表/芝浦工業大学
花岡桃可 さん 学生実行委員副代表/東京大学大学院
(司会)松田達 先生 静岡文化芸術大学准教授
1.「思い、考える」ことから始める
今回のワークショップには、能登半島地震の現状を知り、何か力になりたいと思う学生がワークショップに参加していました。
という、学生実行委員代表の挨拶の言葉に会場にいる学生全員が勇気づけられたのではないかと思います。もちろん私もそのひとり。
2.「合意形成」の仕方について
復興に関する提案を自治体や政府が認めるのでは意味がない。
小さい集団(まち)が希望して、自主的に自治体や政府に働きかけることが実装に向けてとても大切である。
現実的には、町のコミュニティの中で意思決定をしているのは、70、80代であることが大半。変化を好まない方も多く、いかに時間をかけ、慎重に対話し向き合っていくかどうかが、復興への鍵を握る。
3.ボールは「投げられるもの?拾いに行くもの?」
能登半島で震災が起きた今、私たち建築学生は現地からボールが届くまで待機していていいのだろうか?
そうではない。
「建築、都市」についての知識を身につけようと努力している今、私たちはその専門性を生かして、自ら行動する必要がある。「震災はデリケートだ」と決めつける必要は決してない。現場で失敗することもあるだろう。それでも、私たちは彼らに何ができるのか、それを考え続ける姿勢と行動が大切なのである。
4.建築を専門とする私たちが災害前にできることは?
シンポジウム終盤、来場している学生が登壇者に向けて質問できる機会があり、私の率直な今の気持ちを登壇者にぶつけてみました。
平時から、災害を想定し、災害後のまちの未来を想定することが大切である。まちの現状に満足せず、まちを更新しつづけることが、現状が崩れたときのパニックを減らすことに繋がる。
まちのビジョンをみつめること
これしか、目に見えない恐怖を乗り越える方法はないのではないだろうか。また、どれだけ災害を想定しても、
災害は予測を大きく超える
これを心に留めておかなければいかない。
(WS終了後、窪田先生とお話してもう少し深堀しました。詳細は「これから、やりたいこと」で述べます、、)
ワークショップ
ワークショップは二日間にわたり行われました。
私はファシリテーター(アドバイザー)として参加させていただきました。
ワークショップの課題は、
「私たち学生は、能登半島地震とどのような関われるのか?」というコンセプトのもとに、学生プロジェクトの提案をすること。
グループセッションは次のような流れで進められました。
ファシリテーターを務めていて、気づいたことを2点記します。
1.学生間で行われていたこと
展示を見て、「思い、考えた」後、
疑問提示→各自で思考→各自の思いを共有
というサイクルを繰り返しながら、ワークショップの課題を解いていく参加者の姿がありました。
2.今回のワークショップの特徴
今回のWSは学生向けに行われているビジネスコンテストとは違う面白さがありました。
では、何が違うのか。
それは、建築・都市を勉強している学生が集っていることだと思います。
アイデアを出すので終わらせず、建築学生の特徴である「ものをつくる」点が、成果物の実現度の高さを生み出していたと思います。
「ものを生みだせる、表現できる」というのはすごく魅力的なことだなぁと。
最終講評
最終講評会では、WSの成果物を学生が発表し、講師の方々に講評していただきました。
講師の方々
小野田泰明 先生 東北大学大学院教授
窪田亜矢 先生 東北大学大学院教授
竹内申一 先生 金沢工業大学教授
山岸綾 先生 中部大学教授/サイクルアーキテクツ
岡田翔太郎 先生 岡田翔太郎建築デザイン事務所
(司会) 松田達 先生 静岡文化芸術大学准教授
最終プレゼン内容の概要↓
講師の方それぞれからアワードが表彰されました。
【Award】とは、ただ単に賞(Prise)を意味するのでは無い。競うのではなく、全員が能登半島について考え続けることが大切だという意味が込められています。
講師の方から厳しい言葉が発されることもありました。それに対し、下を向くのではなく、めげずに考え続けることに意味があるのだと思います。
賞の授与関係なく、これからも能登半島について考え続け、行動に変えていくことが大切。私も実践していきたいです。
講評会を受けて
今回のWSは、参加者が行ったことのない場所に対して、思い、考えることからスタートしました。
けれど、最終的には「私たちが今、できること」に到達することができていたのではないかと思います。
私はこの様子を見ていて、まずは考えるという原点を見つめなおし、ハードルの低いところから思考を始めることの大切さを実感しました。
さらにこの結果を生んだのは、当日の参加者の努力だけではありません。
30名を超える実行委員が最も今回の課題に向き合って考え続けてきたこと。それがワークショップの土台を作り上げていたのだと思います。
本当にお疲れ様でした。
学業や他プロジェクトも同時進行で進めていて、実行委員として100%の力で関わることはできませんでしたが、運営側の視点も持ちつつ、同時に参加者側の視点で学ぶことも多い期間でした。関わってくれた全ての方々、ありがとうございました。
(ちょこっと)
講師の竹内さんが所属しているGAPPA notoについて↓
私が思い、考えたこと
思い、考えたこと
今回のWSを通して、印象に残り、考えたことを抜粋してまとめました。
1.自分の現場だと思えるか。
シンポジウムで窪田先生がおっしゃっていた一言。
どこでどんな人と出会うのか。これはご縁でしかない。
そのご縁を繋いでいくかは自分次第。
そんな意味の込められた「自分の現場だと思えるか。」というフレーズは、自分のやりたいこと、やるべきことを取捨選択するときにとても大事なことなのではないかとこの言葉を聞いた瞬間に思った。
大学入学後、色んなことに手を広げて、刺激的すぎる毎日。
これからは取捨選択しないといけない場面も増えてくると思うので、この観点をもって、ひとつひとつに向き合っていこうと思う。
2.災害は予測を大きく超える。
これは、シンポジウムで私が質問(シンポジウム欄参照)したときに、小野田先生が教えてくださったこと。
どれだけ予測しても対策しても、災害は人間の予測をはるかに超える。
なぜなら、自然は人間のことなど気にもしてくれないから。
私たち人間が自然に歩み寄るしかないのだと改めて気づかされました。
「考える」「現場で失敗する」「成功しても妬まない」「アーカイブする」
このサイクルを繰り返すしかない。
3.被災した風景をどのように残していけば良いのか。
私がファシリテーターをしていたグループの最終講評で講師の方々からなげかけられた問い。
被災前の姿、被災の経験、被災後の姿、未来の姿。
全てが人々の心の中で繋がっている中で、私たちは復興していかなければならない。
この問いについては、これからも考え続けたい。
これから、やりたいこと
「コミュニティ」(小さな共同体)に焦点をあててみたい。
コミュニティは単に人々が集まっているだけではない。
その土地の人々、文化、風土、歴史、想いなどすべてを含んで成り立っている。コミュニティを無視して建築物、まちは成立しない。
WS終了後、窪田先生に「街づくりの在り方」について質問をした。
窪田先生からは、
まだそれだけでは足りない
と伝えられた。
街のビジョンを考えた時、都市を計画することだけが必ずしも正解ではない。ひとつひとつの地区に焦点を当てた時、住民の想いと都市計画の間に齟齬が生じていることは現在の街づくりにおいてよくみられることである。
企業や行政などさまざまな立場の人が「街づくり」という言葉を使うようになった今こそ、もう一度その土地の人々の声に耳を傾け、街づくりに対する自分の関わり方を考えなおす必要がある。
主体は誰なのか、人々が望むものは何なのか、自分はどこまで関与すべきなのか、ひとつひとつをじっくり考えながら、街づくりを進めていかないといけない。
今の私にはまだまだ消化できていないことが多い。これから、ゆっくり考え、自分なりの「街づくりの在り方」を考えていきたい。
さいごに
街は生活に欠かせない存在であり、そんな街をデザインすることに魅力を感じ、学び始めた建築(Architecture)。
大学でプロジェクトを進行しているSDGs。
上記2点を軸として
「街づくり」「コミュニティ」をKWに
怖がりで平和が好きな私だからこそできる何かを
これからも考え続けて、自分自身で表現できるようになりたい。
P.S.
これからアーカイブ冊子作成が本格始動します。
多くの人が関わり、開催することのできた今回のWSの軌跡をこれからも多くの人の心に残り続けられるよう、最後まで頑張っていきたいです。(勉学としっかり両立)
まとまっていない部分も多くありましたが、記憶に新しいうちに書き留めておきます。
最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございました!