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解離性同一性障害を発症した時のはなし②

週一くらいで更新する予定が、先延ばし癖で月が変わってしまった。

この記事は、

解離性同一性障害を発症した時のはなし①|ぽんず@解離性同一性障害

の続きです。

1人目の別人格との出会い

小栗康平医師の著書「人格解離」を読んでいる最中から、確信をもって感じていたことがあった。

「天使(良心)と悪魔(欲望)だけじゃない。
もう1人いる。

何をもって確信していたのかはわからない。ただ、もう1人が既に存在してしまっていること、そして気づいてしまった以上、もうなかったことにはできないのだろうとはわかっていた。
その「もう1人」はずっと前から存在していたのだと後々知ることになるが、また別の機会に。

「もう1人って誰?何なんだ?」

1人でパニック状態の私の頭の中に、突如ある光景が鮮明に浮かんだ。

先に断っておくが、私に霊感はなく、スピリチュアルや占いは基本的にはあまり好まない方だ。
したがって下記は、解離性同一性障害の数多ある「症状」の一つと解釈している。

私は、見渡す限りの焼け野原にいた。
暗闇の中、遠くから大勢の兵達の鬨の声と、剣を交え、弓矢を射る音が聞こえてきた。
中世の戦場のような場所だった。あちこちで火がくすぶり、闇夜を照らしていた。

私の前に、背の高い軍人が後ろ向きで立っていた。ただ立っているのではなく、軍人は私を背中に庇っていた。
顔は見えないが、男性ではないことはわかった。男装の女性のようだった。

軍人は振り返り、私に何かを尋ねた。
生温い風が吹いた気がした。
軍人の顔は傷だらけで汚れていた。いや、顔だけではない。満身創痍だった。


「何だ今のは?」

子供の頃から、他の子より空想癖はある方だった。
しかし、焼け野原の戦場や男装の軍人なんて今まで空想したことはない。
なぜ突然頭に浮かんできたのかがさっぱりわからず、恐怖感を覚えた。

突然のことに動揺しているうちに、さっきの女軍人が私に話しかけてきた。詳細は朧げだが、やっとこちらの存在に気づいたな、みたいなことを言われたと思う。

話しかけてきたといっても、音声として聞こえたわけではない。自分の心の声の一つがいきなり自我を持ったかのように喋りかけてきたというのがわかりやすいだろうか。
「あなたの意識に直接語りかけています…」というやつだ。
動転していたが、私の頭の中にしか聞こえない声であることは理解していた。

天使と悪魔も、私に話しかけてきたことは一度もなかった(この時はまだ、に過ぎないのだが)。

女軍人はこちらの動揺などお構いなしに話しかけてくる。
荒っぽい言葉遣いながらも友好的な態度で「おい、聞こえてるなら返事しろよ」と。



私はどうしようか迷った挙句、女軍人を無視することにした。


何故なら、怖かったからだ。もし呼びかけに応えたら、別人格の存在をいよいよ認めてしまうことになる気がして、懲りずに話しかけてくる女軍人を何日もずっと無視していた。

話は戻るが、「人格解離」には、多重人格の治療、すなわち人格統合について書かれていた。
人格統合とは、分かれてしまった複数の人格を、最終的に健康な人と同じ、1人に1つの人格の状態にする治療を指す。
当然、人格統合は専門家によって行わなければいけない。

本を一冊を読んだだけで、まだまだ解離の知識も浅いこの時の私は、別人格は何が何でも統合されなければならないと思っていた。
そのため、女軍人をさっさと統合してもらい、消してしまうことが最善であると思っていたのだ。

困り果てた私は、数日後の認知行動療法カウンセリングの際、担当カウンセラーに上記のことを全て話した。
専門が違うので統合はできないが、解離性同一性障害のクライアントを受け持った経験があり、知識は豊富な人だ。

カウンセラーは「人格が話しかけてくるなら、向き合って話した方が良いからその軍人さんと話してください」と私に諭した。

正直、自分の脳内に話しかけてくる声の主と話すなんて、いよいよ来るところまで来てしまった、もう終わりかな…という感想しかなく、全く気は進まなかった。
しかし、これをクリアしないとどうにもならないことは明白だった。

そして帰宅後、私は自室でひとり、女軍人と話してみることにした…。

③へ続く。

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