役として存在するために
俳優が、シーンで役を演じる時に、観客に伝えなければならないこと。
”その時、その役にどんな考えが湧き起こっているか”
これを表現するために、そして俳優自身に与えられた役割を全うするために
台本を読み解き、演技プランを作るという準備作業をします。
演技プランを作るための方法論はコチラをご覧ください。
演技プランを作る作業は、粘土を捏ねる作業に似ています。
脚本から、役作りに必要な情報という粘土を取り出して、こねてこねて、そのシーンに相応しい形を作っていく。
その形作りが演技プランを作る。という作業。
そうして出来上がった演技プランを使って芝居をするわけですが、芝居をする前に、役として存在するために是非やって欲しい仕上げの作業があります。
それは…
「忘れる」という作業です。
芝居をする際には、今まで準備してきた事を全て忘れて演じてください。
シーンで、役として存在するために、全て忘れるのです。
いかに俳優自身の思考をなくすか、がポイントです。
なぜ、せっかく作った演技プランを忘れて芝居をする必要があるのか?
忘れることによって、役に没頭する
今まで得た情報は、俳優が役を演じる為に必要な情報であって、この役自身はこの情報を必要としていない(だって自分のことなんだもん)
登場人物は脚本に書かれている段取りを追いかけない
芝居をする上で大事な事は、作った役を演じる事ではなく、役として相手の芝居をどう受け取るか、である
役としてフラットな状態で、相手を見て何かを感じる、思考が湧きおこる“ゆらぎ”を感じる。それが芝居に説得力を生み出す力になる
俳優としての思考を断ち切る
段取りとか、ここでこうしようとか、こう台詞を言おうとか、俳優目線の思考を断ち切って芝居をする。
これ、何も考えないで芝居をするというわけではありません。役の思考と感情はそこにあるわけですから。
最終的に作った演技プランを忘れて演じた時、役を演じるための準備をどれだけやったかという差がモロに出ます。
矛盾するようですが、役の思考と感情を明確に表現するためには、最終的に全て忘れるけど、入念な準備が必要です。
俳優としての思考は断ち切るんやけど、今まで準備してきたものは体が覚えてる。
だから役として反応ができる。この状態を目指してください。
最初が肝心
ほとんどの場合、芝居は最初の居方がとても大事です。
芝居が始まった時に、どれだけ役の時間と思考を自分の中に持っていられるか。最初の居方で全てが決まると言っても過言ではありません。
芝居は絶対に思い通りにはならない
たとえどんなに完璧な準備をしても、芝居は絶対に思い通りにはなりません。絶対に自分の作った演技プラン通りに進行しません。
なぜならそこには相手役がいるからです。他人の思考と感情はコントロールできません。
絶対に「思ってたのと違う」反応があるはずです。
自分の作ってきた演技プランと違う反応を相手役が示した時に、即座に自分の演技プランを捨てて、目の前で起きたことを優先できる。
そしてそれを役として受け止める、反応することができる。
これがとても大事で、これこそが役としてそこに存在するという事です。
役として、目の前で起きていることを最優先にするために、芝居をする時には、作った演技プランを「忘れる」という作業が必要なのです。
これを読んだあなたが、楽しく芝居ができるようになりますように。
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