切迫早産リスクの時、早産はいつから大丈夫? 〜妊娠週数ごとの赤ちゃんの影響〜
妊娠すると、妊婦さんも、医療者も目指すゴールは「母子ともに健康な出産」ですよね。
そのためには、正期産を目指すことになります。
正期産は、妊娠37週0日〜41週6日までに赤ちゃんが産まれることです。
なぜ正期産を目指すかと言うと、37週を超えると赤ちゃんの身体機能や臓器が十分に発育し、外の世界に出ても自分で生きていく準備が整っているからです。
もちろん個人差はありますが、37週まで1日でも長くお腹の中で育てることが、赤ちゃんの出生直後の合併症や感染症リスクを下げることにつながり、結果として生存率アップにつながります。
そうなってくると、できれば避けたいのが早産です。
早産は、妊娠22週0日〜37週未満のことを言い、22週未満は「流産」となります。
ひとまとめに早産と言われても産まれる時期によって、赤ちゃんの状態は全くことなります。
それでは、妊婦さんと赤ちゃんが乗り越えていく妊娠期間を確認してみましょう。
妊娠22週:一般的に「22週の壁」といわれるもので、母体保護法という法律に基づき、命の線引きライン「生きることが難しい:生育限界」とされています。そのため、21週6日までに産まれた赤ちゃんは救命処置をされず、流産としてそのまま看取りとなります。
まずは、このラインを突破することが第一目標です。
妊娠25週:赤ちゃんの出生時体重が700gを超えてくると、現代医療では、90%以上の生存率が見込めるとされています。ただし、長期間NICU等の管理が必須となります。
「なーんだ!90%以上で助かるなら25週までいけば!」と思う方もいるかもしれませんが、あくまで生存確率です。出産が早いほど後に重篤な障害を抱えるリスクは高いです。
妊娠28週:赤ちゃんの体重も増え、身体や臓器、神経系等、お腹の外で生きていくための成熟が進みます。28週未満に産まれた赤ちゃんは、眼の機能が特に未発達で「新生児網膜症」という失明リスクの確率が高いので、できればこのラインも超えていきたいところです。
妊娠34週:医療者が一番越えたいラインです!34週を超えてくると、早産とはいえ肺の発育が進み、赤ちゃんが自力で呼吸できるラインになります。これより前に産まれる赤ちゃんは基本的に肺が未熟なので、NICUで人工呼吸器管理のが必要となります。
「ここを超えればもう大丈夫ね!」と安心するかもしれませんが、あくまで呼吸の基準です。呼吸障害や出生時仮死がなければ、施設によっては、NICUサポートもなく普通病棟に戻れる可能性はあります。
ただし、37週以降の正期産に比べて低血糖・黄疸・低体温・呼吸障害・哺乳障害が起きるリスクが高いので、酸素のモニター管理となることが多いです。
また、正期産の場合、母親からの移行抗体のおかげで、6ヶ月までは風邪をひきにくいのですが、37週未満の場合、この感染防御が不十分で、6ヶ月以内も感染症にかかりやすくなります。特に乳幼児に毎年流行するRSウイルス(呼吸器の感染症)は、37週未満で産まれた赤ちゃんの重症リスクは、正期産の3.6倍高いことが報告されているため、流行時予防薬投与が推奨され、退院時必ず説明されます。
妊娠37週:晴れて名実ともにいつ産まれてもOKです。
以上のことから、早産リスクあり(切迫早産・中等度以上)と判断された妊婦さんは基本的に高次医療施設(NICU等がある高度専門機関の病院)に紹介・転院・入院管理となる可能性が高いです。
こうやって見ると、赤ちゃんを授かって、元気に産まれるというのは本当に奇跡ですよね。赤ちゃんが健康に産まれるため、1日でも長くお腹で育てることができるよう、無理をせず、不安なことや「何か変」と異常を感じたら妊婦健診以外でも、産婦人科受診しましょう。