トカゲの尻尾

元彼の話になると決まって悪口が出る。
こんな女、可愛くない。

そして決まって
あぁまたやっちゃった…と、後悔する。
こんな女、どうしようもない。

元彼の話は私が饒舌になる数少ない話題。
いつもは口数が少ない私。
誰かの気持ちとか誰かの好きとか嫌いとか誰かの誇りとか自信とか曇らせたり蹴飛ばしたりしないように気が張ってて、言葉が頭の中をぐるぐるめぐる。
だけど元彼の話題になればすらすらと言葉が出てくる。言い切る語尾を使う。
こんなに熱を帯びるのは、大好きだった先生のことか、夢だった広告業界のことか、ドーナツの話題くらいだよ。

そうは言ってもいい歳になり結婚したもんだから、新しく知り合った人と元彼の話にはなかなかならないもので。
この饒舌を披露する機会はほとんどない。

チャンスが訪れた瞬間、溢れ出てしまう。

そして後悔する。

わかってるわかってる。

もうわかってる。

これまでの自分に自信がなくて…。

だけど、

これからの自分を信じてる。

これまでの自分を、

「あなたは私じゃないの」

と切り離してしまいたい。
だから元彼のことも悪く言う。

こんなうちは自分のことを好きになったりもできなければ、欲しくて欲しくてたまらない自信を手に入れたりはできないんだと思う。

ねぇ、元彼の、どこが好きだった？


本当に思い出せない私は、
もう昔の私を切り離してしまったのかな？

プツンと。
プッツンっと。

生えてこないよ？
探してみよう。
どこかで誰かに食べられてそのまま血液になって、それが亡くなってそこに雑草が生えて、小さな花が咲いてますように…
どうか残っていますように…