駅ナカやお風呂、保育サービスまで。ますます便利になったコワーキングスペースの今
2012年頃に流行した「ノマドワーク」。オフィス以外のカフェなどを利用して仕事をする働き方のことであり、確かこの頃からスターバックスでMacBookを広げる人をよく見かけるようになった気がします。
当時は「意識高い系」の代名詞だった「スタバでMac」ですが、コロナ禍でリモートワークが一般化した今では、カフェだけでなく在宅勤務用に自宅の環境を整えた、という方も多いようです。
とはいえ、自宅ではリフレッシュが難しかったり、家族がいるので落ち着いて仕事ができなかったりといったお悩みを抱える方は意外と多いようですし、カフェでは周りの環境が気になるという声も。
そんな時に活用したいのが、今回解説する「コワーキングスペース」です。
コワーキングスペースとは?
コワーキングスペースとは、簡単に言えば共有オフィスのことです。
契約内容によって使えるオプションやスペースは異なりますが、料金を払うと施設内のデスクや椅子、無料Wi-Fiなどを自由に使うことができます。
コワーキングスペースが登場したと言われているのは2006年です。在宅ワーカーは基本的にひとり仕事で孤独になりがちでしたが、同じような環境に置かれているワーカーと仕事場を共有し人的交流を図る目的のもと、サンフランシスコにシチズン・スペースが誕生したのがその原点と考えられています。日本国内では2010年に誕生しました。
そもそもコワーキングとは?
コワーキングは「共に(Co)」「働く(Working)」という2つの言葉でできています。単にオフィスを共有するだけでなく、コミュニケーションを図りながら情報や知見を共有しあう環境のことを指しています。
またその結果、個人の生産性を高めて貢献しあうような働き方を目指すものとされています。
そしてコワーキングスペースで働く、つまりコワーキングをする人のことをコワーカー(co-worker)と呼びます。
コワーキングスペースは、場所に関わらず仕事をすることができるフリーランスや起業家にもっとも多く利用されているようです。
最近ではテレワークをしている会社員や、勉強場所として利用する学生も増えており、企業がコワーキングスペースと契約して社員がいつでも利用できるようにしている、というケースも。
シェアオフィスやレンタルオフィス…他のワーキングスペースとの違いは?
オフィス以外のワーキングスペースには、シェアオフィスやサテライトオフィス、レンタルオフィス、バーチャルオフィスといったスペースも。
コワーキングスペースとはどのような違いがあるのでしょうか。改めてそれぞれのスペースがどういった場所なのか、確認しておきましょう。
シェアオフィス
シェアオフィスとは、複数の企業が同じオフィスを共有することを言います。一つのフロアにいくつかのオフィスがあると言う貸しオフィスの形態の一つです。シェアードオフィスとも言いますが、日本ではシェアオフィスと呼ばれることが多いようです。
シェアオフィスは複数の企業が同じオフィスを共有することの総称であり、コワーキングスペースやレンタルオフィスもシェアオフィスに含まれます。
サテライトオフィス
サテライトオフィスは、企業の本社とは異なる場所に設置するオフィスのことです。「衛星」を意味する「satelite」が名前の由来です。本社を中心に衛星基地的な存在として機能するオフィス、という意味合いがあります。
サテライトオフィスは「働く場」という意味では支社や支店と似ていますが、そこに組織機能はなく、あくまで社員の多様な働き方を目的としている点に違いがあります。
サテライトオフィスのメリットは、なんといっても移動時間や通勤時間を削減できることです。最近では都心やその周辺に本社がある企業でも、比較的近い距離にサテライトオフィスを設置する企業もあります。
地方にサテライトオフィスを設置するのは、勤務地によらない働きやすさを拡大するためですが、東日本大震災以降意識されているのはBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策になるといった理由が大きいようです。また、都会でオフィスを借りるよりも賃料が安く済むという部分も、企業にとってのメリットです。
企業主体で設置されているためセキュリティなどの心配もありません。一方、本社で業務することに比べ、コミュニケーション機会の減少といったデメリットがあります。
レンタルオフィス
レンタルオフィスはシェアオフィスの一種であり、サービスオフィスとも言われています。すでに作られた個室を借りるという形態で、事務所を自社で借りる際に必要な手続きが不要となるのがメリットです。
オフィスとして機能するための設備は基本的に整っていますので、入居したらすぐに仕事を開始することができますし、セキュリティも確保されているのが大きなメリットです。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、「仮想」の名のとおり、物理的な場所を持たないオフィスのことを指しています。事業上の住所を利用することを目的としているため、作業するための場所は提供されません。
バーチャルオフィスの一般的な機能は、郵便物の受付・転送、電話やFAX番号の利用、法人登記のための住所利用などです。都心の一等地の住所を安価で利用できる場合もあるため、ブランディングのために利用される方もいらっしゃいます。
個人事業主やフリーランスの方の中には、自宅の住所を公開したくない場合もあるでしょう。そのような場合にも便利です。
料金システム
コワーキングスペースには「定額制」と「ドロップイン制」の2種類の料金システムがあります。ご自身の利用シーンを想定しながら、どちらがより安価に利用できるか比較してみるのも良いかもしれません。
なお、コワーキングスペースの中には完全キャッシュレス制の場合もあります。また定額制しかないスペースもありますので、利用を検討する際には公式ホームページを必ず確認しましょう。
定額制
定額制では月額費用を支払ってワークスペースを利用します。オフィス代わりに利用したいフリーランスの方や頻繁にコワーキングスペースを利用する方には、定額制がおすすめです。利用回数が多ければ多いほど定額制がお得になります。
利用時間や曜日、ワークスペースのタイプやオプションに応じて、複数のプランが設けられています。店舗ごとに、利用者のニーズに沿ったさまざまなプランが用意されています。
プランによっては自分専用の固定席を確保できることも。他にもパソコン利用・カフェ利用など、気分や仕事内容によって場所を選ぶことができるプランもあります。フリーアドレスの席が混雑しているときでも、固定席があれば混雑具合を気にすることなく快適に仕事ができますね。
また、法人登記や郵便受取といった法人向けのサービスを利用できるプランは定額制が基本となっています。
ドロップイン制
ドロップイン制は時間や1日単位で料金が発生するシステムであり、利用する度に支払いが生じます。ドロップインで使える席は基本的にフリーアドレスの席のみで、施設内のWi-Fiやフリードリンクなどは、定額制の利用者と同じように使えます。
定額制は利用するにあたって審査が必要な場合があり、手続きに時間がかかることもありますが、ドロップイン制ならすぐに利用できます。
移動の多い方や使う頻度が少ない方、お試しで利用してみたい方におすすめです。
コワーキングスペースのメリット
コワーキングスペースがどのようなものかおわかりいただけたでしょうか。
この項ではコワーキングスペースのメリットについて解説します。
基本的な設備がそろっている
仕事に必要な設備を一から準備するとなると、場所はもちろん、手間とコストがかかりますよね。コワーキングスペースであれば最低限仕事に必要な設備がそろっています。自宅よりも快適に、オフィスよりも気楽に、低コストで快適な仕事場が実現できます。
コワーキングスペースでは、デスクやイスだけではなく無料Wi-Fiや電源(コンセント)、プリンター、フリードリンクなどが自由に利用できるのが一般的です。カフェとしての機能を備えたスペースや、キッチンを備えたスペースもあるようです。
作業に集中できる
自宅で作業する時に、物理的にも気持ちの上でも、プライベートと仕事のメリハリをつけることが難しいと思ったことはありませんか?
一人で作業していると作業に集中できないという方や、長時間作業をしている割には成果があがらない、という方にはコワーキングスペースがおすすめです。コワーキングスペースには大体オープンスペースが設けられていますから、他の人が仕事をしている場所で作業にあたることが良い刺激となり、励みとなる効果が見込めます。
カフェやファミリーレストランは勉強や仕事での長時間利用について注意喚起が掲示されていることも多いため、混雑時や長時間の作業はお店に迷惑になってしまう可能性も。
コワーキングスペースは基本的に利用した分の料金を払えば使い放題です。仕事のためのスペースですから、デスクや椅子なども仕事に適したものが揃っており、カフェなどよりも効率的に仕事ができるという方も多いようです。
カフェスペースで適度な休憩を挟みながら作業に集中できますし、同じような目的で利用されている方が多いため、周囲の目が気になることもありません。
コストが抑えられる
スタートアップの起業家にとっては、事業を始めるための初期費用や、事業を継続するためのランニングコストはできるだけ抑えたいのが本音ですよね。
コワーキングスペースは仕事に必要な設備がそろっており、それらを低コストで利用できます。
コワーキングスペースのデメリット
コワーキングスペースはオープンスペースを活用していることもあり、メリットだけでなくデメリットもあります。
周囲の雑音が耳に入る、オープンスペースの場合は特にセキュリティリスクがある、作業スペースの狭さなどがデメリットとして挙げられます。
ただし、個室利用などを活用すればこれらのデメリットは解消できるので、そういったプランを探してみるのもおすすめです。
進化型シェアオフィス・コワーキングスペースをご紹介
近年はスーパー銭湯や、流行のサウナを併設したコワーキングスペースも増えており、コワーキングスペースはかつての形から大きく変化しています。ここではその中でも特におすすめの5つのコワーキングスペースをご紹介します。
ママにもパパにも優しいシェアオフィス
マフィス
「マフィス」は保育サービス付きのシェアオフィスです。都内や都内近郊に複数のシェアオフィスを運営しており、保育スタッフが常駐しているのが大きな特徴です。
サービス開始当初はフリーランスの女性の利用が多かったそうですが、今は男性の利用者も増えているのだそう。働くパパにもママにも嬉しいシェアオフィスです。
ものづくりに特化したコワーキングスペース
MONO
入居者なら24時間365日利用可能な「MONO」はゆりかもめ「テレコムセンター」駅直結のコワーキングスペースです。ものづくりに特化したスペースであり、3Dプリンター、レーザーカッター、3Dスキャナー、カッティングマシーンなどを備えた工作室があります。
デスクワークが多くを占めるコワーキングスペースの中ではかなり異色であると言えますね。ドロップインの場合は2時間または平日10:00から18:00の1日単位で利用ができます。
ものづくりのためのさまざまな道具の中には、自分で購入することが難しいものも多いでしょう。気軽に最新の機材を使ってみたい方におすすめです。
リラックスもできるコワーキングスペース
スパラクーア
東京ドームのすぐ隣にある「スパラクーア」はお風呂や休憩スペースを楽しめる温浴施設ですが、実はコワーキングスペースも用意されています。
館内のリビングエリアには、東京ドームをのぞめる窓際の席やソファ席、2人で作業できるテーブル席などがあり、電源・Wi-Fiを自由に利用することができます。
館内レストランにも半個室のスペースがありますが、フード1品以上注文が必要です。
図書館のように使えるコワーキングスペース
academyhills
六本木ヒルズとアークヒルズ内にある会員制ライブラリー。ドロップインでの利用はなさそうですが、メンバーになるとイベントに参加できたり、10%オフで蔵書を購入できたりと、さまざまな特典があるようです。
ハーマンミラー社製のチェアなど、高級感あふれるワークスペースは贅沢な気分で仕事ができそうですね。
六本木ヒルズのライブラリーは隈研吾氏のデザインなのだとか。
駅ナカで便利なコワーキングスペース
STATION BOOTH/DESK
「STATION BOOTH/DESK(ステーションブース/デスク)」は移動ロスが最も少ない「駅ナカ」を中心に、高セキュリティで快適な空間を提供しているコワーキングスペースです。
個室ブース型のシェアオフィス「STATION BOOTH」とワークスタイルに合わせて多様な席タイプを選べるシェアオフィス空間「STATION DESK」の二つの形態があり、「STATION DESK」は拠点によって個性がある空間となっているのだとか。仕事に必要な最低限の環境がコンパクトに整備されており、小規模ながら空調も完備しているので、短時間や移動時間の合間に集中して作業したい方にお勧めです。
駅ナカだけでなく、ホテルをシェアオフィスとして使えるサービスもあり、まさに移動ロスを極限まで減らした効率型コワーキングスペース・シェアオフィスと言えるでしょう。
まとめ
働くスタイルが変わりつつある現代で、コワーキングスペースもどんどん進化しています。デスクワークだけではなく、ものづくり特化型やリラックス重視型など、さまざまな形態のコワーキングスペースが生まれており、仕事をするのがさらに楽しくなりそうですね。
コワーキングスペースが日本に初めて誕生したのは2010年ですが、10年以上経った今、これだけの変化を遂げているのを見ると、「働く場」という大きな既存の環境は、もっと柔軟に流動的な形へ変化していくのだろうと感じます。
今後もさまざまなコワーキングスペースが増えていくのが楽しみですね。