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これからの人生にFIREという選択肢。その理由とは?

みなさんが働く理由はなんでしょうか?「生活のため」「キャリア形成のため」など、さまざまな理由があると思います。

「終身雇用」という概念が崩れ、「週5日フルタイム出勤」が当たり前でなくなりつつある今、これからの働き方を見直す人も増えてきました。

近年、急激に認知度がアップした「FIRE」という言葉をご存じでしょうか。早期リタイアを意味する言葉なので「働き方」とは少しずれますが、稼ぐ方法の一つとして捉えるのであれば、これもまた新しい時代のワークスタイルの一種と言えるのではないでしょうか。

今回は、FIREの基礎知識からメリット・デメリット、FIREを目指すとしたらどのような準備をすればよいのか、といった情報をお伝えしていきます。

「FIRE」とは?

「FIRE」とは、「Financial」「Independence」「Retire」「Early」の4つの単語の頭文字をとったものです。「Financial Independence, Retire Early」の意味は、「経済的自立と早期退職(早期リタイア)」であり、経済的に自立することと早期に退職することの2つの意味が含まれています。後述しますが、FIREは必ずしも完全に仕事を辞めるということは意味せず、経済的に自立し、自由な働き方を選ぶというスタイルを意味するようです。

FIREは、若い頃から資産運用を行うことで経済的に自立し、早期にリタイアすることを目指す考え方であり、もともとはリーマンショックなど、経済危機の影響を大きく受けたミレニアル世代(※)を中心に、アメリカで発祥した概念だとされています。

※ミレニアル世代:ミレニアム以降に社会に進出した世代のことで、1980年代~1990年代半ば生まれと定義されることが多い。ジェネレーションYや、Y世代という呼び方も。

なぜ注目されているのか?

社会的背景

厳しい経済危機に置かれている現状は、アメリカと日本でさほど違いはありません。賃金が伸び悩む一方で老後の不安が懸念されています。そのため、「長く同じ職場で働き続ける」という安定志向から、「職場に依存せず自分に合った働き方を求める」という傾向が強くなってきているようです。

ミレニアル世代は、2025年には全世界の75%を占める割合になると予測されています。この世代は幼少期から青年期にかけてIT革命を経験したため、従来の世代と比べてITリテラシーが非常に高いと言われています。

この世代は幼少期から多くの情報に触れて育ったため、多様性を柔軟に受け入れる傾向があるようです。中には、ミレニアル世代のことを「安定よりも自由や成長を追い求め、自分の信念と異なるのであれば、環境を変えることもいとわない世代である」と表現している媒体もあります。

日本でミレニアル世代を中心に「FIRE」という概念が注目されるようになってきたのは、自然な流れかもしれませんね。

FIREのイメージ

「社会に縛られず早期リタイアしたい」という概念は、「遊びたいだけなのでは?」という誤解を受けやすいこともあります。実際、そう思っている方の意見がSNSなどで散見されます。

では、実際にFIREを目指す人たちの動機や、成功した人たちの考え方はどのようなものなのでしょうか?次の項で解説します。

FIRE成功者の考え方とは

ソーシャルレンディング事業を行うLENDEXがFIRE成功者を対象としたアンケートによると、FIREを目指した理由として、「自由な生活への憧れ」「社会や会社のあり方に疑問を感じた」「会社あるいは会社中心の働き方に未来を感じない」というものが挙げられており、会社に縛られない自由な生活を求めてFIREを実現した方が多いようです。

FIREのために準備を始めたタイミングとしては「30歳前後」が最も多く、次いで「24歳~27歳」となっています。FIRE達成のために財産を作った手段は「株式投資」が最も多い回答となりました。

また、FIRE達成後も労働で収入を得ているFIRE成功者は7割を超えており、FIREを達成したからと言って遊んで暮らすというライフスタイルを選択するとは限らないようです。

収入によって会社に縛り付けられるのではなく、経済的に自立することで自由を得ることを目的にFIREを目指す方が多いところを見ると、決して遊び目的ではないことがわかりますね。

目指すために必要なこと

FIREは、単純にたくさん働いてたくさんお金を貯めればよい、というものではありません。達成するにあたって「効率よく暮らす」ための工夫が必要になってきます。早期リタイアを考えるならじゅうぶんな生活費を貯めることが必要ですし、節約も重要なポイントです。

この項では、FIREを達成させるために必要な情報を学んでみましょう。

「早期退職」と「FIRE」の違い

冒頭でも少し触れましたが、「FIRE」は「早期退職」とは違います。会社で定められた定年を待たずに退職する点は共通していますが、その後の生活の仕方が大きく異なるのです。

FIRE

FIREで早期リタイアした多くの人々は、不労所得を主な収入源としながらその後の生活を送ります。自由な時間とゆとりのある生活を維持しながら、さらに蓄えを減らすことなく生活していくのがFIREの目指すところです。

早期退職

早期退職をした場合は、それまで働いてきた分の蓄えと退職金や年金といったものを使ってその後の生活を送ります。

早期退職を考える場合は老後も暮らしていけるだけのじゅうぶんな資金を事前に準備する必要があり、退職した後はその蓄えを切り崩していくこととなるでしょう。

「FIRE」のための基本理解

FIREを目指すなら「節約」と「資産運用」を上手く組み合わせることも重要です。実際にどのように管理していけばよいのか、いくつかのポイントを見ていきましょう。

生活費の見直し

まず、FIREでリタイアした後にどれくらい生活費がかかるか計算するところから始めましょう。必要な生活費の見通しを立てるためには、現在自分が何にどれだけお金を使っているか理解する必要があります。固定費を見なおして余分な支出がないか確認することで、より具体的にFIRE後の生活費をイメージしやすくなります。

将来の必要額を算出

FIREを達成するためには、おおよそ年間支出の25倍(25年分)の貯蓄が必要と言われています。総務庁の調査によると、2020年の消費支出平均は月額約23万円という結果が出ていますので、単純計算で年間では約276万円の支出となります。そうなると、FIRE後に最低限必要な資産は年間支出を25倍した約6900万円ということになりますね。

資産運用を活用

「資産を年利4%以内で運用すると、不労所得だけで生活ができる」という理論もあります。これはアメリカの株式市場の成長率からインフレ率を引いた数値から示されたものです。投資自体は日本からもできますし、もし日本の株式市場でチャレンジしたいということであれば、5%以内(年間支出の20倍前後の資金で可能)で運用することも可能と言われています。

達成のために必要な本質

FIREを達成するためには「なぜFIREを目指したいのか?」という問いへの明確な答えが必要です。

自由な生活には誰もが憧れるものですし、FIREを目指したきっかけが「働きづめになりたくない」「満員電車が苦痛」「人間関係に悩んでいる」というような理由だったとしましょう。苦痛から逃れたい気持ちから生まれる意欲はマイナスのモチベーションとなるので、あまり続かない可能性があります。なぜなら、達成までの道のりは簡単なものではないので、そこから逃れたいという気持ちも生まれやすくなるからです。

そこで、FIRE後の「なりたい自分」を考えてみることをおすすめします。「なりたい自分」の姿は具体的であれば具体的であるほどいいでしょう。その状態になることをイメージしてみて、その姿がそのためなら頑張れる、というものであればベストです。

FIREのメリット・デメリット

リタイア後の資金を貯めて若いうちから社会に縛られずに暮らすライフスタイルは、悠々自適で誰もが憧れる環境ですよね。そんな夢のような環境は本当に実現するのでしょうか?FIREを目指すにあたってのメリット・デメリットも詳しく見ていきましょう。

メリット

生活の選択肢が増える

時間やお金の制約がなく、生活全般を自分の好きなようにカスタマイズできることが何よりのメリットでしょう。会社に出勤する必要もなければ、都会に住む必要もありません。新しいことにチャレンジしたり趣味などに没頭したり、すべて自分の好きなように決めることができるのは魅力ですね。

金銭管理能力が身につく

金銭を管理する能力はFIREを達成する上で必要な能力であるため、もしあなたがFIREを達成したときには、同時に節約と貯蓄についての知識と管理能力が身についていることでしょう。

本当に必要なもの、価値のあるものにお金を使うことができ、無駄な支出を増やすことなく、満足した生活を送っているはずです。

デメリット

不確定要素によって損失が生まれることも

FIREはあくまで、現在の情勢や生活が続くと仮定したうえでの計算で成り立っています。経済面(金利の変動や税の増額)、健康面(病気・怪我・介護)といった不確定要素によって予想していなかった支出や損失が生まれることも考えられます。そのような場合に備えて、生活費3年程度の余剰金があったほうが良いという意見もあるようです。

キャリア形成の難しさ

FIREによって完全に仕事から離れることを選ぶ場合は特に注意が必要です。万が一うまくいかなくなった場合に再就職しようと思っても、無職からの復職でブランクが長いとなると、なかなか再就職が難しいのが現実です。また、一般的に、年代が上がるほど再就職へのハードルは上がります。

退職後もキャリアアップできるようなスキルを身につけておくと良いかもしれませんね。

自分に合った「FIRE」を選ぼう

ここまでFIREについて定義やメリット・デメリットを解説してきました。FIREは必ずしも完全退職を意味しないということも前述したとおりですが、「FIRE」の形はひとつではありません。FIREの種類は下記の4つに分けられます。

・Fat FIRE:生活水準を落とさずに贅沢もしたい人
・Lean FIRE:最低限の生活費を資産運用し倹約する人
・Barista FIRE:頻度は減らしながらも働いて生活費を得る人
・Coast FIRE:既に十分な資産はあるが働きたい人

いずれも不労所得などの資産運用を生活費に充てているスタイルは共通していますが、働き方や希望する生活の仕方によって分類が変わるようです。

Barista FIREやCoast FIREなどの、働くことをやめないスタイルのFIREは「サイドFIRE」や「ゆるFIRE」と呼ばれることもあるようです。

こちらもすでに述べたとおり、「FIRE達成後も労働で収入を得ている」FIRE成功者は全体の76%にのぼり、時間や資金に余裕ができた後も「会社員」として働いている人は意外と多いという調査結果もあります。

会社員といっても不労所得などを上手く活用しているので、「正社員でフル出勤」という従来の形にとらわれることはありません。いわゆる個人事業やフリーランスとして自由に働く感覚に近いかもしれませんね。

まとめ

FIREを達成するために、今までの生活をすべて手放す必要はありません。なぜなら、FIREは単純に仕事を辞めてしまうことではなく、「自分らしい生き方を目指す」ためのひとつの手段だからです。

「あるべき形に縛られず、精神的・時間的な余裕が欲しい」という思いからFIREを目指している多くの人たちは、人とのつながりやキャリア形成のためなど理由はさまざまですが、社会とのつながりを保ちつつ生活しています。

また、FIREを達成して「会社員時代のちょっとしたことが実は気分転換のひとつになっていた」と気づく人も。

資産形成をしながら働き方を選択し調整していくことは、それがFIREという選択肢ではなくても今後の人生に役立つでしょう。メリット・デメリットをよく検討したうえで、自分に合った人生設計をしていけると良いですね。

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