岡本よりたかさんのメッセージ その2
「種のキャンドル」
あまりにも暗い話が多いので、灯りを灯そうかと思ってね(笑)。
今回の函館でのワークショップや講演の主催を買って出てくれた和泉 詩織さんの710candleで、オリジナルキャンドルを作らせてもらった。
それが、これ、種のキャンドル。
710candleは、地域の植物や自家栽培のドライフラワーを使い、素材にこだわった、北海道函館のキャンドル屋さん。
主宰の詩織さんの写真の撮り方が巧すぎて、実物よりもカッコよく写ってしまったけど、でもコンセプトは伝わるかも。
僕は農業で本気で食えなかった頃、現金がどんどん無くなっていく恐怖に苛まれていたんだけど、手元に種があることに気付いて、心にポッと灯がついた気分になったことがある。
お金は使えば減るが、種は使えば増える。
種があれば、少なくとも食べ物は手に入る。僕は農薬も肥料も買わないのだから、あとは種さえあれば生きていけると、本気で思ったんだよね。
よく考えたら、電気、ガス、水道、税金とか、色々お金がないと暮らしていけないわけなんだけど、でも命まで取られることはない。
インフラと税金分の現金だけ稼げればいいわけだから、それだったらギリギリ作物を売ったお金で賄える。贅沢をせず、お金の必要のない娯楽があればいい。
畑に行って、自分で作ったお米と野菜でご飯を食べ、疲れたら畑に寝転び、そして図書館で借りた本を読みながら、微生物や虫のことを調べる。
嫌な事はせず、嫌な人には会わず、眠くなったら眠り、お腹が空いたら畑の野菜を食べるという暮らし。
もしかして、これこそ贅沢な娯楽ではないだろうかとね。そこにお金は必要ないんだよね、結局。
みんな忘れているのかも。いい車に乗り、素敵な服を着て、いいレストランで舌鼓を打つのが幸福な暮らし方だと勘違いしていて。
それはそれで幸せなのかもしれないけど、何も無いこと、何も持たない幸福感というのもあるんだということを知った。
所有はしがらみと同意だからね。気付いていないかもしれないけど。所有することでの安心感があるのは否定しないけど、その瞬間から束縛感にも苛まれるんだよ。
周りを見てみると、自分の物などほとんどない。所有しているつもりになっているかもしれないけど、貴方が大きな失敗をしたときには、全てが奪われていくから。
種が照らす灯り、種のキャンドル。素敵だね。
※お世話になったのは710candle