宮島口「AKAI」再訪 〜言葉にならない感覚に身をゆだねる〜
宮島口“AKAI”を訪問。
”AKAI”は2017年に日本最大級の料理人コンペティション“RED U-35”でグランプリ”RED EGG”を受賞した赤井顕治シェフのレストラン。
素材への愛情、和・洋などジャンルにとらわれないイノベーティブな料理を供することで知られる。
以前、僕は”AKAI”を訪問しこんな文章を書いた。
「“AKAI”の料理を頂き、心の片隅に名状しがたい不思議な思いが、しばらくあった。
何かに、何かに似ている・・・。
気付いたのは翌日のこと。
エリック・サティに似ている・・・。
サティは既存の枠組みに捉われない作風の音楽家である。
サティの音楽は、中世音楽のようでも、現代音楽のようでも、イージーリスニングのようでもある。
しかしサティの音楽はそんな人為的な区分をすり抜ける。サティの音楽はあくまでも「サティの音楽」なのだ。
同様に「AKAI」の料理は、フランス料理のようでも、日本料理のようでも、和風フレンチのようでもある。
しかし「AKAI」の料理を、フランス料理といったり、日本料理といったり、和風フレンチといったりするのを、僕は躊躇する。
どれでもあるようだが、どれでもないと思うからだ。そんな定義付けで収まりが付く料理とは、到底思えない。」
今回も驚きの連続。
山菜と煮えばなは、和の趣向だが和食とは異なる独自の世界観。
白甘鯛のお椀。見た目は100%和食だが、白甘鯛の火加減は和食のロジックと異なるもの。例えるならミキュイ。
今回最も唸ったのはクエの炭火焼き。
炭火台に付きっきりで丁寧に焼かれたクエの火加減の何とも言えないこと。
そこにエスニックを想起させる甘酸っぱいハーブたっぷりのソースが添えられると、ここは宮島口なのか?東南アジアなのか?
自分の今いる場所がわからなくなりそうになる。
僕は数年前、“AKAI”の料理を「エリック・サティに似ている」と例えたが、今はそんな例えさえも軽薄に感じる。
言葉にならない感覚を、無理に言葉にしなくても良いのではないか?
ただ浸る。
カテゴライズも評価もせず、名状しがたい感覚に身を委ねること。
言葉にならない感覚をジャッジせず、無心で浸る大切さ。
それを赤井シェフから教わった気がする。
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