街場詩人Hideoの書斎

放浪する街場詩人

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最近の記事

木村充揮withアロージャズオーケストラ@ビルボードライブ大阪

9年ぶりのビルボードライブ大阪。 前回は2015年。アフタースクールハングアウトというユニットのライブ以来。 この時は高橋幸宏を生で聴いた最後の機会だったので、感慨深い場所でもある。 今回は「木村充揮withアロージャズオーケストラ」 憂歌団やソロ活動で、日本のブルースシンガーの第一人者として知られる木村さん。 京都に住んでいた学生時代、深夜のローカル番組などで木村さんの姿や曲を視聴する機会が多かったので、馴染み深い存在。憂歌団のアルバムも何枚か持っていた。 関西の老舗ビッ

    • 宇多田ヒカル「花束を君に」

      NHK朝ドラ「とと姉ちゃん」の主題歌として、ご存知の方も多いかも。 個人的に、日本のポップスの詩では最高の部類の一つだと思うし、実際、聴くとしばしば涙が出ます。 有り余る技術を抑制した歌唱も、イギリスの一流ミュージシャンによるシンプルな演奏も、この曲に合っています。 歌詞はそれぞれ聴き手が解釈するものであり、歌詞の解説は控えますが、MVを観ていると、宇多田ヒカルが、母親(歌手の藤圭子)とダブって見える時があります。 宇多田ヒカルにとって、母親とはどのような存在だったの

      • 広島「レストランOZAWA」〜あっさりしたフランス料理〜

        久しぶりのに、オリエンタルホテル広島一階の「レストランOZAWA」へ。 小沢貴彦シェフがプロデュースするレストランは他にもあるが、白金台の本店の閉店後「レストランOZAWA」を冠する店舗は、こちらだけ。 空間デザインは、今は亡き巨匠・内田繁。小沢シェフとも親交があるという。 そういえば、白金台の本店の空間デザインは、(浅草のアサヒビールの独特な建物で知られる!)フィリップ・スタルクだった。小沢シェフのレストラン空間へのこだわりは、なまなかではないようだ。 1980年代に開店

        • 銀座「ファロ」〜イノベーティブなイタリア料理〜

          これはイタリア料理か?日本料理か? ヴィーガンか?精進料理か? イタリアで腕を磨き、新時代のイノベーティブなイタリア料理を追求する料理人、ゴエミヨで今年のベストパティシエに選出されたシェフパティシエ。 資生堂という正統派のステージで、才能あふれる料理人とパティシエが作る、イノベーティブなイタリア料理を一度味わってみたかった。 今回はヴィーガンランチを。 月山筍、いたどり、トンビ舞茸など、出羽三山の食材をふんだんに用い、味噌、ふきのとう、山うど、笹の香、ポルチーニ、トマト

        木村充揮withアロージャズオーケストラ@ビルボードライブ大阪

          加藤和彦の愛聴盤〜『あの頃、マリー・ローランサン』そして『ヴェネツィア』

          加藤和彦『あの頃、マリー・ローランサン』(1983) 十数年前、飽きることなく毎夜毎晩擦り切れるほど聴いた一枚。 トノバン(加藤和彦)の声が賛否両論だろうけど、安井かずみの詩、トノバンの曲、そして坂本龍一、高橋幸宏、高中正義、矢野顕子、清水信之、ウィリー・ウィークスなど錚々たる顔ぶれのミュージシャン。 「ニューヨーク・コンフィデンシャル」は矢野顕子が、「テレビの海をクルージング」は映画監督の岩井俊二(ヘクとパスカル)が、そして「タクシーと指輪とレストラン」はゴスペラーズの

          加藤和彦の愛聴盤〜『あの頃、マリー・ローランサン』そして『ヴェネツィア』

          ロバータ・フラック「やさしく歌って」

          Roberta Flack “Killing me softly with his song” (ロバータ・フラック「やさしく歌って」) ”Strumming my pain with his fingers Singing my life with his words Killing me softly with his song Killing me softly with his song Telling my whole life with his word

          ロバータ・フラック「やさしく歌って」

          『北斗の拳』を読みなおす

          子どもの頃、喜んで観ていた『北斗の拳』 成長した後、残虐描写のエンタメと思い、すっかり遠ざかっていた。 しかし、この年齢になって再見すると、心をつかまれた。 『北斗の拳』は個人的物語というよりも、社会の縮図でないか、と。 「芸術というものは、すべて基本的にはホメオパシーです。ギリシャ悲劇でも、シェークスピア劇でも、舞台上では世にもおそろしいことが行われますよね。あるいはひどく犯罪的なことが。でも、それは実際の犯罪、実際のおそろしいことの直接的行為ではありません。それは、芸術

          『北斗の拳』を読みなおす

          映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』

          映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』を鑑賞。 (相原裕美監督作品) 加藤和彦をテーマに映画を撮るきっかけになったのは、盟友・高橋幸宏のコメントがきっかけとなったという。 「トノバン(加藤和彦の愛称)って、もう少し評価されても良いのじゃないかな?今だったら、僕も話すことが出来るけど」 本作では高橋幸宏をはじめ、きたやまおさむ、松山猛、朝妻一郎、つのだ⭐︎ひろ、高中正義、小原礼、今井裕、新田和長、クリス・トーマス、牧村憲一など、加藤和彦と縁の深い人物たちがインタビュ

          映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』

          大阪中之島美術館「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」

          大阪中之島美術館 「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」 2022年に開催された美術展のレポートである。 「わずか10年の内にこの世に送り出された宝物のようなロートレック作全ポスター作品31点を一堂に紹介」というなんとも贅沢な企画展だった。 ロートレックはまさに天才。 障がいを抱え、放蕩に明け暮れた短い人生を疾走したロートレック。 ロートレックの絵画には、彼自身の個性が横溢し、見る者を離さない魅力がある。 対するミュシャは秀才。 アール・ヌーヴォーの代名詞ともい

          大阪中之島美術館「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」

          京都「美濃吉本店 竹茂楼」 〜王道の京料理を学ぶ〜

          コロナ禍中の先年、祇園祭の時期に、弾丸ツアーで京都へ。 感染対策もあり、贅沢だけど料亭「美濃吉本店 竹茂楼」の個室をリザーブ。 鱧寿司、丸仕立の椀物、鱧落し・・・と、季節感に溢れた王道の京料理を堪能した。 京都に行くとついつい目新しい料理を求めがちだけど、今回は王道の京料理を再発見。 ガツ〜ンというより、しみじみとおいしい。 旨さと目新しさばかりの追求は、中年になって楽しくなくなった。 不易流行。伝統の重みのなかに、イノベーションを感じるようなスタンダードが好き。料理も、生き

          京都「美濃吉本店 竹茂楼」 〜王道の京料理を学ぶ〜

          尾道 naïf (ナイーフ)ふたたび 〜魔法にかけられた夜〜

          尾道の路地に佇む隠れ家のようなレストラン。 伺う度に、料理の奥深さ、素晴らしさ、本質を、シェフから教えて頂くような気持ちになる。 今回も、驚きと新たな発見に満ちた一夜だった。 見目麗しきアミューズブーシュと泡を頂きながら、期待感が徐々に高まっていく。 オマール海老とホワイトアスパラガスの料理。 オマール海老もフランス産ホワイトアスパラガスも高級食材だが、シェフはこれみよがしに提供しない。 素材の持ち味に寄り添い、さりげなく本質を提供。 シンプルなヴィネグレットソースで頂

          尾道 naïf (ナイーフ)ふたたび 〜魔法にかけられた夜〜

          傍観者でなく、当事者になること。 〜蓮は泥より出てて泥に染まらず〜

          NHKの関連会社・NHKエデュケーショナル前社長の熊埜御堂朋子(くまのみどう・ともこ)さん。 NHK教育テレビ(Eテレ)のディレクターやプロデューサー、編成責任者などを歴任。多くの教養番組や福祉番組を手掛けてきた。 僕は氏のことを詳しく知っている訳ではないが、以前ドナ・ウィリアムズについての番組を、NHKで取り上げたことは知っていた。ドナは「自閉症者自身が世界で初めて自らの精神世界に踏み込んだ本」と言われる『自閉症だったわたしへ』の著者である。 熊埜御堂さんは、その番組の制

          傍観者でなく、当事者になること。 〜蓮は泥より出てて泥に染まらず〜

          青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』読書会に参加

          大阪の北摂地域に行ったのはいつぶりだろう? 「北摂」って、旧国制の摂津国北部のこと。だから、豊中市、吹田市、箕面市、川西市、池田市などなど。兵庫県でいえば宝塚市なども入る。 以前行ったのは、箕面に紅葉を見に行った20歳の頃。かなり昔である。紅葉の天ぷらを食べたことは記憶しているのだが、当時の光景をほとんど覚えていない。 まあ、そんなものだろう。 人生の折り返し点を過ぎると、過去の思い出が朧気にしか感じられなくなることもある。 新しいことを覚えるのが苦行に感じられる時もある。

          青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』読書会に参加

          賛否両論 〜北大路魯山人の陶芸について〜

          北大路魯山人の陶芸作品を初めて鑑賞したのは、今から35年くらい前ではなかったか。 場所は、広大な日本庭園と横山大観の絵のコレクションで有名な、山陰の美術館で。 魯山人が得意とする志野・織部を中心にした、華やかな器を鑑賞することができた。 不思議なことに、この美術館は魯山人の展示室の上階に、同じく陶芸家の河井寛次郎の展示室を設けていた。 魯山人が嫌っていた河井寛次郎と魯山人を併置するというのは、僕には到底考え付かない発想だが、比較して鑑賞することはとても有益だった。

          賛否両論 〜北大路魯山人の陶芸について〜

          自称「グルメ」批判 〜湯木貞一・辻静雄『吉兆料理花伝』を読む〜

          湯木貞一・辻静雄『吉兆料理花伝』(新潮社) 本著は現在、残念ながら版元で品切になっているが、日本料理人のみならず、飲食業に携わる者なら、いや、料理を愛する者なら、ぜひとも入手し、熟読玩味して欲しい名著である。 『吉兆料理花伝』は、1983年に新潮社より刊行された。 本著は、「吉兆」の創業者・湯木貞一による日本料理についての話を、「辻調理師専門学校」理事長・辻静雄がインタビューするという構成である。 また、写真家・入江泰吉による「吉兆」の四季の料理写真が掲載されていて、「吉兆

          自称「グルメ」批判 〜湯木貞一・辻静雄『吉兆料理花伝』を読む〜

          日本映画屈指の名作「人情紙風船」

          山中貞雄監督作品『人情紙風船』を観る機会があった。初めて見たのは今から約四半世紀前、既になき東京・千石の三百人劇場だった。 『人情紙風船』は日本映画史上屈指の名作。 僕も約20年ぶりに再見した。(前回は映画館でのリバイバル上映) 『人情紙風船』は、河竹黙阿弥作の歌舞伎「梅雨小袖昔八丈」(通称「髪結新三」)をモチーフにしたものだ。 「髪結新三」は、主人公の新三が豪商・白子屋の一人娘お熊を誘拐し、白子屋から大金を得ようとするストーリー。 悪人の新三が、胸のすくような啖呵

          日本映画屈指の名作「人情紙風船」