かやく御飯 大黒 〜くいだおれの街・大阪の真髄〜
道頓堀は喧騒の渦。
そんな喧騒から一本通りを隔てただけで、静かな路地がある。
「かやく御飯 大黒」
古びた食堂の佇まいながら、一歩足を踏み出すのを躊躇したのは、池波正太郎はじめ多くの食通に愛された老舗ということを知っていたから。
内装も何の変哲もない古い食堂。
されど、一本筋が通った気配を感じた。それは思い込みや先入観ではない。古いが、磨き込まれた木の椅子やテーブルから感じたのだ。
名物のかやく御飯(中)、白味噌の味噌汁(玉子入り)、さわらの塩焼きを注文。
焼魚は注文を受けてから焼き上げるので、焼き上がるまで待つ。
効率度外視。手間を惜しまぬ昔のまんまの食堂である。
かやく御飯とさわらの塩焼き、少し遅れて味噌汁が供された。
かやく御飯の味わいの玄妙なこと。
わかりやすい旨さ、というよりは、一口食べ進めるごとに、心身にじわ〜っと染み込んでくるような旨さ。
といっても贅沢な材料を使っている訳ではない。状態がわからぬほど細かく刻まれたごぼう、こんにゃく、油揚げの三種のみ。
(最後に青のりをパラパラと)
出汁と薄味の味付けで炊かれたかやく御飯は、何かの味が突出することなく、すべての持ち味が渾然一体。柔らかくも重奏的な美味しさを醸し出している。
味噌汁のまろやかなこと。
さわらの焼き具合は、中はしっとり、皮目はパリッ。
一見何の変哲もないお惣菜のような三品。高級食材を使っている訳ではない。味付けも淡味。
されど、この平凡に見える三品には、くいだおれの街・大阪の真髄が詰まっていると言っても過言ではない。僕はそう感じた。
若い頃ではそう感じなかったかもしれない。しかし、この年齢になると、素朴ながら玄妙な美味しさが何よりも響く。
すっかり満ち足りた気分で店を後にした。
#道頓堀
#大黒
#かやく御飯大黒
#かやく御飯の大黒
#かやくご飯
サポートエリアは現在未設定です。サポートしたいお気持ちの方は、代わりにこの記事へのコメントを頂ければ嬉しいです。