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天神橋サンボア 〜酒場らしい酒場〜

「酒場らしい酒場へ行きたいと思った。酒場らしい酒場とは、静かで洋酒の種類が多くてバーテンダーの腕がいいといった意味である。それで全体に上品でなくてはいけない。また、私の好みで言えば適度に繁盛していないといけない。」(山口瞳「祇園サンボアと私」)

20歳の頃、山口瞳『行きつけの店』を読んで、サンボアというバーを知った。そして憧れを抱いた。
大人になって、サンボアに行きたい!
ここでいう「大人」とは、池波正太郎や山口瞳のような「酸いも甘いも噛み分けた」イメージの大人だ。
パークハイアット東京「ニューヨークグリル」や京都「瓢亭」「菊乃井」には行けても、サンボアに行くには自分の器量が追いついていない、と感じた。
一見さんお断りでなければ、高級店は逆に入りやすい。逆に老舗のパブリックなお店ほど、客の立居振舞いが試される。
(イタリアで高級リストランテより老舗のトラットリアの方が客層が良い場合があるようなもの)

僕はまだまだサンボアに似合う大人でない、と自己規制していた。今でも実際似合う大人である自信はない。

そんな僕でも、この度天神橋に構える一軒を訪問出来た。
格子戸。暖簾。犬矢来。
目立たないファザードが却って粋に感じた。

簡素だが上品な内装。
スタンディングのカウンター。
バックバーにはボトルの数々。
白いバーコートに身を包み、ボウタイを結び、なごやかだが無駄口のないバーテンダー。
山口瞳のいう「酒場らしい酒場」の雰囲気が、酒を飲まずして視覚、聴覚から伝わった。

サンボア名物の氷なしのハイボール。
シンプル・イズ・ベスト。伝統に育まれた完成度の高さを、僕はグラスを片手に、目を細めて思う存分味わった。

ビーフかつサンド。
あまりに旨そうで写真撮るのも忘れて頬張った。それほど旨いのである。

飾らず、朴訥で、上品。
僕もサンボアのような中年でありたい。そう思った。

#サンボア
#天神橋サンボア

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