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木村充揮withアロージャズオーケストラ@ビルボードライブ大阪

9年ぶりのビルボードライブ大阪。
前回は2015年。アフタースクールハングアウトというユニットのライブ以来。
この時は高橋幸宏を生で聴いた最後の機会だったので、感慨深い場所でもある。

今回は「木村充揮withアロージャズオーケストラ」
憂歌団やソロ活動で、日本のブルースシンガーの第一人者として知られる木村さん。
京都に住んでいた学生時代、深夜のローカル番組などで木村さんの姿や曲を視聴する機会が多かったので、馴染み深い存在。憂歌団のアルバムも何枚か持っていた。
関西の老舗ビッグバンドである、アロージャズオーケストラとの共演も楽しみなところ。

なんと、アロージャズオーケストラには司会がいた!
司会がいるライブってあまり聴く機会がないのでビックリ。
冒頭の2曲はアロージャズオーケストラのみの演奏。やはりビッグバンドの演奏って楽しい。
そして、木村さんの登場。ご機嫌な様子である。
マイクの傍には、ミネラルウォーターとは思えない水割りグラスがセット(笑)
司会の方とのかけ合い漫才のようなトークが抱腹絶倒の面白さなのだが、ひと声歌声を聴いた瞬間、思わず涙腺が緩んだ。

「天使のダミ声」
木村さんの歌声を例える有名な言葉だが、ライブに初めて行ってその意味がわかった。
木村さんはどう見ても飲んだくれの大阪のおっちゃんだが、その歌声には清濁を併せ呑むような独特の魅力があった。
それは木村さん独自の魅力でもあるし、木村さんが育った土地柄や出自も関係しているのかもしれない。
美しいものは、ただ美しく綺麗なだけでなく、人間の本来持つ影の部分も包括してはじめて、腹の底から人の心を打つことはできないのではないか。
木村さんの歌声を聴き、僕は芸術の根源について、少しだが思いを致すことができた。

アロージャズオーケストラのゴージャスな演奏が、木村さんのスタンダード志向という一面を見事に照らし出していた。
憂歌団時代から「嘘は罪」「all of me」などスタンダードナンバーを自家薬籠中の物としていた木村さん。
ライブで聴くと本当に良かった。

「君といつまでも」も憂歌団時代からの人気曲だが、臆面もなく純愛を歌い上げた岩谷時子の詩を木村さんが歌うと、なぜか琴線に触れるのである。
思わず瞼に涙が溢れ、こぼれ落ちた。
岩谷時子の詩は、オリジナルの加山雄三よりも、木村さんの歌唱の方がなぜか胸に迫るのだ。

水割りグラスをお代わりし、ほろ酔いで司会と漫才トークを繰り広げたかと思うと、胸を打つ歌唱を見せつける木村さん。
これぞ大阪の人情笑い泣き。
美も醜も、善も悪も、全て混沌の坩堝のような「天使のダミ声」万歳!

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